2章-7-4<セクション6~⑤いかに在庫コストを正しく把握するか>
・在庫が悪いというときの定量的計算
たとえば、こんな会社があったとしましょう。
- 銀行からの借入:1億円
- 銀行への支払利息:500万円
- 株主資本:1億円
- 株主への配当:500万円
この企業の場合、1億円を借りると、5%ずつの支払利息や配当をしていることがわかります。つまり、これは、自社会社がお金を集めるときのコスト“率”にほかなりません。会社は1億円を借りたり、株主から集めたりすると、そのお金を元手に増やして、翌年には利息・配当をお返ししなければいけません。1億円だったら500万円、100万円だったら5万円、元手を使ってビジネスをまわして利益を生む必要があるのです。
ここで在庫を考えてみましょう。在庫は、何も生みません。在庫はそこにあるだけに見えて、会社のお金をムダづかいしているのに等しいのです。だって、在庫が何の利益を生まなくても、会社は5%のコストを支払う必要がありますからね。
自社の在庫コストを把握する際に、データの入手方法は次のとおりです。
- 銀行からの借入:長期負債は貸借対照表から拾う
- 銀行への支払利息:損益計算書の営業外費用から拾う
- 株主資本:貸借対照表から拾う
- 株主への配当:キャッシュフロー計算書(または株主資本等変動計算書)から拾う
さて、さきほどはあまりにも簡単な数字でしたから、少し変化させましょう。
- 銀行からの借入:1億円
- 銀行への支払利息:500万円
- 株主資本:2億円
- 株主への配当:2000万円
この場合はどうでしょうか。まず、全体を計算しようとすると、銀行からの借入と株主への配当を、それぞれ加重平均する必要がありますから、
(500万円÷1億円)×{1億円÷(1億円+2億円)}+(2000万円÷2億円)×{2億円÷(1億円+2億円)}=8.33%
と計算式は、こうなります。計算の結果、資本コスト率が8.33%ということだから、もし100万円ぶんの在庫をムダに放置していたとすれば、100万円×8.33%=8万3300円が「在庫を持つことによってかかる(失った)コスト」です。そしてこれこそが在庫コスト“率”にほかなりません。