調達原論3【29回目一納期管理と出荷】
29「納期管理と出荷」
自社生産工程のほとんどはサプライヤーからの納品によって成り立っている
ある者は眠れなくなり、ある者は精神を荒廃させ、ある者はこれゆえにバイヤー業務を辞めたいという。それが、納期管理・納期調整です。
発注をする。指定納期日までに製品が納入されないとサプライヤーから連絡がある。毎日電話してフォローする。そのうち、社内の生産管理部門から驚懼する電話がかかってくる。上司を使ってサプライヤーの上層部に話をしてもらい、七転八倒を続ける。
そのほとんどが、社内の無理な受注・生産計画を発端としたものであるにもかかわらず、バイヤーはそれを粛々とサポートしていかねばなりません。生産計画としてではなく、調達・購買部門に属するバイヤーとして必要な納期管理方法を述べていきます。
納期管理を単純化する方法としてこれまで喧伝されたことを単純化すれば、挙げられるのは二つです。
- 在庫を抱えておくこと
- 十分なリードタイムで発注すること
1.は実際に未来永劫使えないくらいの量を確保しておくバイヤーがいます。理論的には、これにより納期遅延はゼロとなります。しかし、在庫管理費用もかかり現金の有効活用の意味からも、無用になるかもしれない在庫を抱えておくのは無理があります。
2.も、それができれば苦労はしていないわけで、常に突発事項と闘っている企業としては、理想的でしかありません。また、バイヤーが「十分なリードタイムを確保せずに生産計画を立てた生産管理部門のみが悪いのだ」と批判してしまうのは、あまりに協力精神が感じられないため、私は与しません。
納期管理をうまくやるために実践的に必要だと思うのは、次のようなものです。
- 発注のタイミングで、一件ごとサプライヤーから納期回答を募り、それを社内にフィードバックする
- 週毎に未納入品リストをサプライヤーに提示し、意識を喚起する
- 納期順守率をデータ化しておき、サプライヤーに提示、あるいはワーストケースを貼り出す
このように地道で、かつ細かな作業を必要とするものばかりです。しかし、これらの積み重ねをもってせねば、納期の改善はできません。
- 自社近くの倉庫を利用するなどして物流短縮化を図る
- 委託在庫等を検討し自社の在庫負担を軽減する
- 生産管理部門と協力しフォーキャストで構わないので、3か月前・1か月前・2週間前、と発注予想リストをサプライヤーに提示しておく
また、多くのバイヤーが経験的に知っていることですが、納期が遅延してしまう製品はトレンドがあるものです。その場合は、過去の発注実績から、次回の発注周期を予想できれば、生産管理部門と事前の打ち合わせにより、少なからぬ遅延を防止することができます。トラブルを100%回避することはできません。ただ、少なくすることはできるのです。