調達原論3【23回目一ベンチマークと他業界情報収集】

23「ベンチマークと他業界情報収集」

他社の情報収集から、自社の調達・購買が見えてくる 

 

自社が100円で調達しているものを、隣の企業は10円で調達している。交渉した結果やっと50円になったかと思えば、違う企業は9円で調達するという。

この資本主義社会においては、売買の自由が認められています。100円のものを200円で販売しても良いし、1億円で販売しても良い。逆に、200円でしか販売してくれないところから買い続けるのも自由、101円のところを見つけて買うのも自由。これは善悪の尺度を超えたところにある、単なる事実なのです。

どこかに「絶対的な価格」というものが存在する、ということはありません。「高い」も「安い」もすべて相対的なもので、かつ固定的なものでもなく、常に移り行くものです。

ご存知のとおり、数量が増減すれば固定費の割賦も変わり、市況が推移すれば変動費も変わり、かつ営業戦略が刷新されれば、製品に加算する利益も変わります。それほど相対的なものだからこそ、他社情報が必要なのです。

①他社がどれくらいの価格レベルで調達しているかという価格レベル

②調達条件や発注形態

③調達部門発のV.A.アイディアやコスト低減実績

通常、ベンチマークというと、製品の競合他社比較を指します。もちろん、その意味でのベンチマークは必要であるものの、調達・購買部門としては、競合他社の調達・購買部門の優れたところの調査も失念してはいけません。

ここで問題となるのは、では「どうやって調査すべきか」ということでしょう。

これは簡単で、訊けば良いのです。業界によっては、調達・購買部門の横のつながりによって、定期的に会合を開いています。また、これほど個人間のネットワークがwebによって容易に構築できる時代にあっては、同業者との情報交換もラクになりました。実際、私は同業種のバイヤーたちとサプライヤーの情報交換を行っています。もちろん、価格情報は機密のため、口外することはできません。ただし、雰囲気はわかります。

加えて面白いのは②です。昨今は、サプライヤーに部品単位ではなく、モジュール単位で発注する例が多くなってきました。開発効率化の向上と、コスト管理の容易化を狙ったものです。自社が一つひとつの部品を組み立てている場合と、モジュール発注の優劣をさまざまな観点から評価してみることで、最適点を思惟することができるはずです。③も、他社の情報を収集することで、発想が沸きます。製品カテゴリごとの調達元地域を調べてみましょう。競合他社は、海外調達により安価を実現している場合もあります。

私の実例は、某社が資源を商社経由ではなく、アフリカから直接調達している例を知り、自社の調達構造の見直しをかけたことです。レアメタルの希少性が喧伝されるはるか前のことであり、某社の先見の明には感心しました。製品使用は日々進化しています。調達・購買のやり方も、日々「深」化すべきものなのです。

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