調達原論3【11回目一バイヤーの倫理のありかた】

11「バイヤーの倫理のありかた」

 倫理と礼儀は形式からはじまる

 

そんなに他の会社のカネで飲みに行って、愉しいのでしょうか。

愉しい、と答えるバイヤーがいます。そういう人たちはサプライヤーの営業マンとともに、今日も美酒を求めて誘蛾灯のような夜のネオンに吸い込まれていくのでしょう。

バイヤーは、まずは各企業が定めている行動規範に沿うことが求められます。ただ、仕事は規範一覧に載っていることばかりではありません。出張時にサプライヤーと呑みに行かない、ということは禁止規定されているはずです。しかし、お土産をもらうのは大丈夫か。あるいは、サプライヤーに最寄り駅まで迎えに来てもらうのは良いのか。などと考えてみると、まずはバイヤーの一人ひとりが高い倫理を持つことが求められています。

さて、ここで極めて形式主義的なことを申し上げておきます。バイヤーの倫理を語る際に、いつも私が気になるのは、バイヤーたちのある種の「蒙昧さ」です。一人のビジネスマンとして、正しい言葉遣いができていない、正しい文章が書けない。これは、倫理以前の問題でもありながら、礼儀の問題にもつながることです。

正しい言葉遣い・文章の書き方を知っていれば、それをあえて崩すこともできます。しかし、正しさを知らなければ崩すこともできず、単に無礼さを放散させていくだけです。知らぬ間にソンをしているバイヤーがたくさんいるので、これはもったいない。

・正しい敬語ハンドブック指南書類を一冊でも読んでおく

・正しい書類・メールの書き方指南書類一冊でも読んでおく

・マナー・しきたりに関わる本を一冊読んでおく

いまでは、相手から何も言われていないのに、いきなり上座に腰を下ろすバイヤーがいて、私を驚愕させるに十分です。また、タクシーの乗り方や、名刺の渡し方など、年輩者でも理解していない人がいるほどです。

かつて、「坂口孝則殿 はじめまして、お仕事ご苦労様です。私は~」と書かれたメールが届いたことがあり、「まずあなたは、常識と礼儀を学んだほうがよいのではないですか」と返信したい衝動を抑えきれませんでした(抑えましたが)。

よくマナーを身につけても、サプライヤーもわかっていないのではないか、という人がいます。相手がわからないから、こちらも無知で良い、というのはどこか甘えた態度のように私には感じられます。そうではなく、わかる人がいるので、その人たちに失礼のないように備えることにこそ、高い倫理と礼儀を身につける理由があるのです。

仕事で負けるなら、悔しくはない。だけど、仕事を始める前に、礼儀や常識の欠如で相手にすらされなかったら悔しいじゃないですか。変なプライドは持たない方がいい。ただ、その程度の矜持は持っておきたいのです。

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