調達原論【33回目】絶望調達を超えて

連載の最終回になった。私は毎日のように調達・購買業務の重要性と改善手法を講演したり、コンサルティングを行ったりしている。これまで多くの調達・購買部門は無数の成果を語り、そして、調達・購買改革を喧伝してきた。

実態はどうか。鉱物性燃料輸入額をGDPと比較し、鉱物性燃料の値上がり値下がりと近似させた。図では製造業の売上高比製造原価率を重ねた。絶望的な事実が明らかだ。製造原価率は、鉱物性燃料の上昇・下落に左右されている。上がれば製造原価が悪化し、下がれば製造原価は改善する。付加価値経営と叫ばれながら、現実は、市況に翻弄されるのが現実なのである。だから経営者や部門長は、材料等の価格推移が支配的ではないか、冷静に確認したほうがいい。

企業の戦略を一言でいうと、「値上げ」だろうと私は思う。とすれば、調達・購買部門は、サプライヤからは適切に調達しつつ、自社製品には原材料市況を転嫁できうる魅力をつけさせねばならない。市況、原価、製造、販売、マーケティング……、おそるべきことに調達・購買部門は、それらの知識をまんべんなく持つ必要があるが、その重要性に気づいている企業は少ない。

私は赤鉛筆バイヤーと黒鉛筆バイヤーといっている。前者はサプライヤの見積書を赤ペンで批判することは達者だが、白紙を出されたら、なんら自身の意見をいえない。後者は、おのれの信念を書き上げる。そして、そのためには、これからの調達・購買担当者は世界中を飛び回り、そのなかから自社に寄与するアイディアを全力で募らねばならない。その意味で、最適購買という言葉はもはや古い。これから必要なのは感動購買とでもいうべき業務のありようだ。

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