2章-2 モチベーションゼロの仕事術

先日、テレビ番組に出演していたとき、視聴者からの質問を受けた。「大学生で超ヒマなんで、いまのうちに勉強しておいた資格はありますか」。私も、もう一人のコメンテーターも「資格だけで食おうという発想が良くない」と答えた。

現状からの脱却を願うとき、少なからぬひとが資格試験への勉強へと走る。目の前の仕事よりも、夢見る将来のほうに「やる気」が出るのか、なかには仕事中に資格試験勉強に勤しむひとすらいる。

その資格なるものは、はたして食えるものだろうか。

独立行政法人統計センターが発表しているデータによって人気資格と年収を表にしてみた(賃金構造基本統計調査の平成22年賃金構造基本統計調査によった)。企業規模が10人以上のところを拾った。これは、「きまって支給する現金給与額」を12倍し、「年間賞与その他特別給与額」を加算した簡易的なものだ。手取り額ではなく、税込額だし、家族手当・時間外勤務給与も含まれている。ただ、統計の厳密さが趣旨ではないので、ここではご容赦願いたい。

さて、このデータによると、さすがに弁護士は高いものの、その他の職種は想像ほどではない。難関の資格試験を通過すれば、年収1000万円ほどを夢見るひとたちも多い。ただ、現実は騅逝かない。

ここで月給の中位数が公開されている。これも統計の教科書ではないので、直観的な説明になるものの、集団の中間あたりにある統計値だと思ってほしい。要するに、特定の少数者だけが平均値を押し上げている場合には、平均値にあまり意味がないために、この中位数を調べることがある。

上記が、同じく賃金構造基本統計調査の平成22年賃金構造基本統計調査によるデータだ。この分布については、所定内給与額になっている。これも、たしかに弁護士は多額といってもよいが、それ以外の給与は、同じく想像よりも低いのではないだろうか。とくに、人気の高い社会保険労務士の低さには驚いた。公認会計士であっても、50万円であればそこらのサラリーマンでも同額程度をもらっているひとたちは無数にいる。

ちなみに、私は社会保険労務士の集まりで少し講演をしたことがある。まったく無資格の私が難関資格保有者に語る姿は微笑ましいものだったが、その際の聴講者の最大の関心事は「どうやってお客を確保するか」だった。質問者は「資格合格後の3年は無収入を覚悟していますが、それ以降は食えるのでしょうか」と訊いてきた。「あなたしだいでしょう」と私は答えた。

資格試験ではお客の捕まえかたは教えてくれない。しかし、それが一番の必要事項だと知るのは、資格をとってからのことだ。

また、弁護士は、独占業務を持つ職業であるため、給与が一般サラリーマン並に下がるとは思えない。ただ、弁護士はこれから有資格者が増えることで熾烈な競争が予想される。それこそ、個人名で指名されるレベルになるよう、自分の得意分野を磨き続け、仕事をたんたんとこなし続けねばならないだろう。

資格試験のキーワードは「希望」「承認」「報酬」だ。資格を勉強することで、将来に希望が持て、自分の存在を世間から承認され、そして年収もあがるという夢がつねにつきまとう。

ただ、資格だけを有すれば「食える」明るい未来は、もうどこにもありはしない。

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