1章-6 モチベーションゼロの仕事術
いっぽうで商品を販売しようとするひとたちは、毎日のようにダイレクトeメールをお客候補に送付し、なんとか商品を販売しようと試みている。「新入荷のオススメ商品です」「これで新たなライフスタイルを!」「さあ、いまから生まれ変わりましょう!」……。それは受け手にとって嗚咽をもよおすものだ。どこからメールアドレスを収集したのか、いまでは無数の「売り込み」メールが届く。身の回りのあらゆるところに商品広告があふれ、ポストはチラシで満杯になっている。
消費者は「ほしいもの」などない。いまの消費はまるで、「買え、買え」という言葉に強制された、まるで「労働」のようだ。そう、私たちの消費はすでに労働になってしまった。
そして、この構造はどこに行き着くのだろうか。
お客は小売店に。小売店はメーカーに。メーカーは下のメーカーに。これらが行き着くところは、その商品・製品の材料と労働者だ。材料は原油や金、レアメタルなどを例にとるまでもなく、企業が引き下げることは難しい。となると、労働者がそのしわ寄せを受ける。
労働者は日本経済全体の不景気に影響を受け企業成績が悪化するだけではなく、必然的に労働単価の引き下げを経験することになる。これまでであれば、30万円の報酬がもらえる仕事でも、40万円分の仕事をせねばその報酬は難しい。同じ30万円の仕事であれば、報酬は下がっていく。これをオーバーアチーブと呼ぶ。労働者はこれまでの働き以上を課され、それを満たすことを求められる。もちろん、労働の基本はオーバーアチーブだ。どんな雇用者でも、20万円分の働きしかしない労働者に30万円の報酬を与えるひとはいない。
しかし、そのオーバーアチーブの比率が高まっていることと、本来の価値以下の報酬しか得ることができない事実を指摘しておきたい。お金の流れが逆さになる、この「逆転経済」下においては、「正社員と同じ働きをするのに、給料は低い派遣労働者の問題」や「正社員であっても給料が下がり続ける状況」は必定のことだった。そもそも労働者を雇用するかは、設備等の導入と天秤にかけて決められる。ただ、長期雇用を前提とする日本企業においては、「雇い続けている社員は給料を下げ」「新規雇用はできるだけ抑え、コストの安い派遣労働者へ」の流れが生じた。