3-5.サプライヤ評価 ~あなたのサプライヤになりたい 「新しい購買のサプライヤ選定革命」~
相手先の企業の中で、自社への取り組みがどれほどまでか。相手がこちらにかける熱意はどれほどまでか。相手の中での自社企業のポジショニングだ。相手の中のP が高ければ、相手も長期的戦略に立って「名刺コスト」として異常に安いコストは出してこないだろうし、将来的な仕事につながらない無茶な請求もしてこないだろう。
実は、このP 軸が最も重要ではないか、とすら私は思い始めている。ときにそれは「好き嫌い」と表現され、「やる気」と表現され、「相性」と表現されてきた。サプライヤ企業の、自社へかける情熱とモチベーションを考慮せずには、正しいサプライヤ評価などできるものか、とすら言ってしまおう。
これまでのサプライヤ評価は、最も重要な何かを欠如しているという点で使えない、とすら挑発的にあえて言っておこう。そしてこれは、自社の都合だけを考えるのではなく、真にサプライヤ企業と自社のマッチングを考える上で、うわべの言葉だけでなく「サプライヤと平等な取引関係」を開始する試みでもある。
このPを考慮し、全社の購買戦略が構築され、皆に認知されたとき、何かが変わる。そして、近視眼的な観点でなく、設計者を巻き込んだり、生産管理を巻き込んだりして、広い視点でサプライヤを見ていくことが、当たり前のように必要なのだ。加えて、サプライヤと会話の上で、相手側のP 軸を社内にフィードバックする必要があるのだ。
「バイヤーはQCDDP でサプライヤを評価せねばならない」そう思った私は早速、新たなサプライヤ評価制度の提案を部長に持ちかけた。
「今回は、新たなサプライヤ評価制度を導入したいというご提案です」
「サプライヤ評価?そんなのいつでも設計と話しながらやってるだろ?」
「確かにやっています。だけど、ときにコストだけに目をとられ、長続きしないサプライヤに発注をするミスを犯しています」
「いや、それは色んな観点で見ているだろ」
「観点はたくさんあります。だけど、今までそのサプライヤが、ウチをどれだけ真剣に思ってくれているかという、一番大事な観点が抜けていました」
「そんなの・・・お前。」
「長期的に付き合うか、短期的に付き合うか。その視点だけでも、サプライヤが投資を回収するスパンが異なってきます。営業マンの費用だってそうです。短期的な利益だけを狙うサプライヤと、長期的な利益を狙うサプライヤと。後者を選ぶべきは自明でしょう」
「そんなのサプライヤの意向なんてわからないだろ」
「営業マンと話していて現場のバイヤーは分かってますよ。態度やレスポンスで分かります。付き合っている、しがらみの多いサプライヤは実績があるという理由だけで取引を続けているところがある。最初は主観であってもいいと思います。P 軸で評価する。相手の中でのウチのポジション。まだ取引がないところでも、こちらに好意的に売り込みをかけてくれるところもある。あるいは、こちらの戦略にピッタリのサプライヤもこの世にはいるかもしれない」
「P 軸か・・・」
「P 軸という観点が加われば、新たなパラダイムが始まります。新たな言語が加わります。これからは、サプライヤ評価に関して、みんなで『P 軸』ということをディスカッションするかもしれない。」
私は、無理やり部長の合意を取って、購買変革の次の草案を書き出した。
「今まで我々は、服(=サプライヤ)に合わせて体(=自社)を縮めてきました。しかし、これからは正しく体に合わせて服を着るべきではないでしょうか?そして、その体に合う服を積極的に調査・評価すべきではないでしょうか?」
「あなたのサプライヤになりたい!」と言わせてやれ。