8-9    リスクに対処する戦略的在庫活用方法とBCPの策定

近年、大震災や洪水といった自然災害によってサプライチェーンが断絶し、その影響は日本やアジアでだけでなく、全世界に広がっています。供給ストップのリスクに対応する在庫活用の実現ステップを学びます。

☆想定するリスクの特定

調達購買部門が想定すべきリスクはサプライヤーから供給が止まる事態です。いくつかの要因が想定されます。しかしすべてのリスクへの対処を在庫管理ではできません。倒産リスクの対処は在庫管理ではなく、日常的なサプライヤー管理で実践すべき課題です。したがって次の想定される供給停止リスクから、在庫確保によって顕在化したリスクを乗り切る方法を検討します。

(1)    過去にサプライヤーから納入が止まったケースの洗い出し

(2)    抽出されたケースのそれぞれに対応方針を、できる内容は、サプライヤーと共同して明確にする。

①           自然災害(大震災、火山噴火や洪水)

②           倒産による事業停止

③           工場移転による一時的な供給ストップ

④           その他

☆在庫化の費用対効果判断

想定したすべてのケースで、費用と効果を数値で算出します。自然災害発生時の費用算出は困難です。サプライヤー管理の観点では、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)がない場合、評価を下げる方針を掲げる企業も増加しています。BCPを整備しなければ、売上を失う可能性も高まっています。

一方企業経営の健全性や効率性の観点から在庫は増やせません。必要な在庫量を見極めるため、発生する費用は必ず掌握します。その上で必要かどうか、社内でコンセンサスを確立します。

☆サプライヤーのリスク対応状況確認

購入品リスクは、サプライヤーと共同したヘッジ策を検討します。現在中小企業に対しBCP策定が行政の指導の下で進められています。リソースが十分ではない中小企業のBCP策定は困難な取り組みです。しかし調達購買部門は、BCP整備を購入条件に盛り込み、サプライヤーに早期策定をうながします。BCP策定によってバイヤー企業で想定在庫量を減らすメリットが生まれます。

BCPは自社だけで完了する計画ではありません。調達購買部門はリスクの顕在化しても供給を維持する体制をサプライヤーとともに確保する必要があるのです。

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