1-9 事業のグローバル化に適応する調達購買部門
かつてのグローバル化は、日本から海外へ進出が前提でした。しかし、入国管理法(出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律)によって国内の職場で外国人と働く機会が増加してゆくでしょう。日本人が海外に行って発生した業務環境が、国内で誰の元でも起こる時代になったのです。
☆不足する労働力をどのように確保するか
人口減少により、多くの企業や職種で人手不足による影響が大きくなっています。企業や事業の成長は、効率化によって従業員一人当たりのアウトプットを拡大する、あるいは人員を増強する2つの選択肢があります。
人口減少する中、特に中小企業は事業に必要な十分な従業員の採用ができないケースが多発しています。こういった事態の改善を目指し、2019年4月に施行された新たな入国管理法によって来日する外国人の増加が期待されています。国内の事務所や事業所であっても、外国人と一緒に働く可能性が高まっているのです。
☆外国人の同僚と協力する方法
国内でも「ダイバーシティ経営」に取り組む企業が増えています。労働力確保を目指し、女性採用の拡大、管理職登用の推進、若年者や高齢者の活躍推進といった具体的なテーマに各企業が取り組んでいるのです。そういった男女差や世代差といった軸に加えて、外国人労働者に対し同じような取り組みが必要でしょう。元々「ダイバーシティ」とは語彙の「多様性」から派生し、1990年代以降アメリカ企業で人種や性別、年齢や宗教の差を越えて、企業が優秀な人材を登用する取り組みでした。「ダイバーシティ」の本来の主旨に立ち返って、多様性ある社員全員が働きやすい労働環境の構築を目指します。
☆環境整備(多言語化に対応)
グローバル化の進展により日本企業が苦労するのは「言語」の問題です。海外拠点やサプライヤーと業務を進めるだけでなく、隣席の外国人と十分にコミュニケーションを重ねて効率的に仕事を進める時代です。海外拠点、海外サプライヤー、そして外国人労働者と相乗効果を生み出すためにも、言語の壁を乗り越えなければなりません。
コミュニケーションを通じた相互理解には双方の歩み寄りが必要です。日本で働いているのだから、日本語でコミュニケーションするのも1つの考え方です。しかし文化的な背景が異なり、生活様式や考え方の部分の違いがあるのはやむを得ません。外国人に「言わなくてもわかるだろう」「それは常識だろう」といった考え方は一切通用しません。外国人を受け入れる日本人に必要なのは、違った行動の「理由」を聞いてみる行動です。そういった積み重ねが従来のルールや考え方を見直すきっかけにもなるでしょう。一緒に働く同僚ですから、まず孤立を防ぐために僅かなコミュニケーションの積み重ねを心がけます。
外国人とのコミュニケーションでは、グローバル言語である英語のスキルは重要です。日常業務で、話す、聞く、書くだけではなく、業務プロセスを説明する文書を、英文化する、英語圏以外なら現地言語も含め翻訳し、相互理解しやすい環境整備が必要です。
多くの日本企業は国内で、日本人だけで業務を進めてきました。海外進出しても、現地駐在員が数人いるだけで、国内業務には何ら変化が起こっていないケースも多いでしょう。今後、現地駐在員に起こっていた問題が、国内でも多頻度で発生するでしょう。国内で発生する「内なるグローバル化」の実現が、企業の将来を左右する時代になっていると認識します。内なるグローバル化は、全社的に取り組んで初めて成功するものなのです。