1-10 新たな調達購買機能の模索と確立

人口減少により縮小を余儀なくされる国内市場から成長可能性のある海外市場へ展開したり、従来の主力製品が新たな技術の登場によって需要が減少したり、経営環境の大きな変化に直面している企業は、調達購買機能も従来機能に加えた新たな対処を強いられます。文字どおり「強いられ」て後追いするのか、それとも到来する未来を読んで積極的に準備を進めるか。同じ取り組みでもタイミングの違いによって成果が大きく異なってくるでしょう。

☆ソーシング機能強化

調達購買部門の基本的な機能に、社内から出された購入要求に合致する最適なサプライヤーを選んで発注する「ソーシング」があります。今、多くの企業で「ソーシング」機能の弱体化がクローズアップされています。

休廃業企業の増加によるサプライヤー能力の減少は、調達購買業務の軸を「最適条件による購入」から「物量の確保」「要求納期の確保」へシフトさせています。日々生産するために購入品を予定どおりに納入させるため、バイヤーが奮闘しているのです。ソーシングよりもパーチェシング業務が今、企業内で求められているのです。

現在の需要が今後も継続する前提だと、パーチェシング重視の調達購買部門でも何ら問題ありません。しかし新たな技術や新たな顧客といった事業環境の大きな変化が予見される場合、「現在購入しているサプライヤーからだけ購入し続けて良いのか」といった調達購買部門の根源的な問題にも対処が必要です。

社内の技術や企画部門では、将来事業へのロードマップを作成しているはずです。ロードマップの実現に必要なサプライヤーはどんな企業なのか、現在取引しているサプライヤーで事足りるのか、と調達購買部門は常に問い続け、何らかの不足の懸念があるときは、ちゅうちょせずに将来必要となるサプライヤーを確保する「ソーシング」活動を開始します。

☆グローバル展開する中で調達購買部門の位置付け確立

高い人件費や販売市場を求めて、新たな工場や拠点を海外に設置した場合、国内の調達購買部門に求められる機能は変化しています。量産機能が海外へ移転する「変化」は、社内関連部門全体に機能の見直しが必要です。

全ての部門に共通するのは、海外進出先と国内の「役割分担」の重要性です。メーカーの場合、開発機能や維持設計(改善)機能を海外進出先へもたせるのかどうか。現地調達はどの程度可能なのか。進出先の調達購買部門には、どこまでの機能をもたせ権限を委譲するのか。国内と海外進出先の現状を正しく理解した上で、調達購買のあるべき役割分担を実現しなければなりません。国内から一方的に指示命令するのではなく、すべて海外進出先に委ねるのでもなく、適切な役割分担の姿を求め、国内と海外双方の現状の位置づけを明確にして、相乗効果の創出を目指します。

☆改めて上流部門からの関与に取り組む

調達購買では「開発購買」といわれる購入内容決定プロセスの上流から関与する取り組みがあります。適切な購入仕様や要求内容を実現する取り組みです。

最近では、購入仕様や要求内容だけではなく、購買予算設定プロセスに調達購買部門が関与し、適正な予算設定を試みる例が増えてきました。量産品を生産するメーカーであれば、原価企画といった取り組みで適正予算設定に取り組んでいます。

しかし予算設定の都度購入品の仕様を設定する場合(毎回購入内容が異なる場合等)、策定された予算の精度が調達購買部門業績の信ぴょう性を左右します。予算対比で購入価格低減を引き出したとしても、そもそも設定された予算が購入価格に対して高めに設定されていれば、業績として評価を得るのは難しいでしょう。また予算設定プロセスへの関与は、一方的に安価な予算設定を抑止する効果も期待できます。上流工程への関与は、仕様や要求内容だけではなく、購入可能かつ業績に貢献する適正予算レベルの算定といった形で模索が進んでいるのです。

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