8-6 積極的な在庫活用方法 ~在庫を財庫で活用し罪庫にしない考え方
IT活用によって在庫をもたないメリットばかりが強調されています。あえて在庫のもつメリットに目を向け可能性を探ります。
☆在庫ゼロはメリットか
必要な量だけ必要な時期に行う購入は、バイヤー企業の在庫が減少します。一方でデメリットもあります。在庫ゼロ化は、産業構造の上位に位置する大手企業で実現しているだけです。サプライチェーン全体では流通段階や、サプライヤーレベルで在庫しています。調達購買部門は自社に納入されるまでのサプライチェーン全体を想定した在庫量を考えるべきです。自社だけ在庫ゼロを目指すより、実態を踏まえた在庫を適正活用する選択肢をもつべきです。
☆在庫を納期短縮へ活用する
実際に発生するリードタイムと、顧客の納期短縮ニーズとの間に存在するギャップは、納期短縮活動を懸命に行っても埋まりません。サプライチェーンのどこかに、形を変え場所を変えて在庫は存在し、納期的ニーズと実態のギャップを埋める役割を担っています。
在庫ゼロを標榜し、実際には存在する在庫を見て見ぬ振りをするよりも、在庫の存在を顕在化させ、適切な管理と活用を検討します。在庫は納期短縮に積極的に活用し、自社の優位性創出の源として在庫管理を利用しましょう。
☆在庫を災害発生リスクに活用する
2011年の震災発生後にサプライチェーンが寸断され、影響は全世界におよびました。その後被災地に所在するサプライヤーを除き、約2か月後に供給再開されています。震災から得た教訓は、2か月間をどう乗り切るかです。自然災害発生リスクに備え、在庫活用も検討します。
適切に在庫管理を行っていた企業は、震災後の生産再開を早期に実現しています。実現の困難な生産場所の分散を声高に叫ぶより、倉庫の耐震、耐火性を考慮した、在庫管理の厳格化をサプライヤーへ申し入れます。(牧野直哉)