8-7    物流クライシス対処法

人手不足による大手宅配会社の貨物引き取り量制限に端を発し、従来の物流システムを見なおす動きが広がっています。生産効率を損なうことなく、在庫量を最小限にとどめるための納入条件の改善をサプライヤーと協力して進めます。

☆サプライヤーの納入方法を理解しよう

サプライヤーに課している納入条件は、自社に持ち込む条件になっているはずです。全サプライヤーに共通して適用する納入条件は、バイヤーの日常業務ではごく当たり前であり、サプライヤーとも話題になることはありませんでした。特別な理由がない限り、バイヤーが納入方法を考える機会もなかったでしょう。結果的に納入条件、その背後にある物流事情について、バイヤーの関心が低くなってしまうのです。

人手不足の影響は、物流会社のみならず全産業に波及しています。Just In Timeで生産ラインの稼働に合わせ時間指定し、1日複数回の納入は、物流網に大きな負担を強いています。コンビニエンスストアに代表される多頻度配送システムは、人力に頼っている限り、人手不足による見直しを余儀なくされているのです。

人手不足による物流環境の変化に対応するため、まず発注内容に対応したサプライヤーの納入方法を確認します。自社便なのか、配送を物流会社に委託しているのか。納入頻度はどの程度なのか。取引条件に全うする納入が実際どのように行われているのか、まず掌握します。

☆本当に必要な納入タイミングの設定に取り組もう

多くの企業でJust In Time方式の時間指定納入でなくても、毎日納入をサプライヤーとの取引条件にしています。生産に応じて納入日を指定し、できるだけ在庫量の最小化が目的です。しかし多くの企業で、生産ラインの脇のスペースに納入品置き場を設定しています。実質的に数日分の購入品は在庫しているのです。

建前では在庫ゼロを目指し、その実践をサプライヤーに要請する。しかし実質的には生産管理による生産スケジュールの設定が甘かったり、サプライヤーから納入されないために生産ラインが止まる事態を回避したり、実質的に在庫を保有する理由はさまざまでしょう。しかし物流クライシスの影響を最小限にして円滑な生産を実現するには、本当に必要なタイミングにだけ納入を指示するルールと仕組みが必要です。

多頻度の納入は、今後人手不足の影響が拡大し、物流費が上昇をもたらし購入価格に反映されてくるでしょう。すでに多くの調達購買部門で、物流費のアップによってサプライヤーから値上げ要請を受ける事例が多く報告されています。サプライヤーと物流費交渉するのも、値上げの影響度を回避する、あるいは最小化する取り組みです。しかし自社に必要な納入頻度を見極め、従来よりも納入回数を減少させ、物流効率をアップさせれば、自社とサプライヤー双方にメリットをもたらし値上げ影響は最小限に食い止められるでしょう。週5回の稼働日すべてに納入させるのではなく、週3回、週2回へ納入頻度削減を検討しましょう。

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