7-4目標を設定する ~「逆算する」コスト

今や発生コストに管理費や利益を加え設定した売価で顧客へ販売できる時代ではありません。価格競争激化への対処は、コスト確定してからコスト削減を行うのでなく、市場価格に見合うコストを実現する取り組みが効果的です。

☆「逆算するコスト」の定義

売価から逆算して、適正利益や管理を除いた後に残った部分が逆算するコストです。目標売価を設定した後、目標コストを決定します。調達購買部門は目標となるコスト内に購入部品費用を収めるため、構成部品や必要材料に目標単価を割りつけます。購入品の目標単価は、類似品の購入割合と実績価格から算出します。6章で解説したコストテーブルを活用します。

☆あるべきコストの見極め

市場価格から逆算した目標コストの設定によって、購入品価格はどうしても低く抑えられる傾向があります。調達購買部門にとって厳しい取り組みと理解し、設定された目標を達成するため次の点に注意します。

(1)  安易な目標売価設定をさせない

営業部門にとってコストが低いと売りやすくなります。しかし従来の発生コストをまったく無視した目標売価を設定し、そこから逆算した目標コストは、数字遊びであり実現性が低くなってしまいます。目標売価設定は数値根拠に厳格性を求め、販売数量も合わせて設定します。

(2)実現性の見極めと社内の理解と協力

目標売価設定は、類似品実績やコストテーブルを参考に現状との差を調達購買部門から提示します。現状と目標の差が大きく実現性に乏しい場合、実現性の議論を尽くします。大きな差の解消に挑戦する場合、社内へ協力を要請します。営業部門にだけ都合の良い目標単価の設定は、妥当性のある反論を行い、実現性のある目標単価を調達購買部門から主張します。

☆将来的なアクションを見つける

「逆算するコスト」の実践によりコストを改善しなければならない製品や機種が特定されます。調達購買部門は、この機会を活用しコストダウン活動のボトルネックを排除に取り組みます。販売単位あたりのコスト割合の高い購入品に集中的なコスト削減活動を行ったり、新規メーカーの採用や複数社購買の実践によって、よりバイヤー企業から購入価格の管理をしやすい調達環境設定に取り組んだりします。目標から逆算するコストの実現は厳しい対応を迫られる反面、対応すべきポイントの明確化や全社活動化によって、関連部門から協力を得やすくなるメリットも存在します。利用できるメリットは活用してコストダウンを進めます。(牧野直哉)

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