できる方法を探す尊さ
新たなサービスは、まず無料で提供される時代です。かつて有料だったサービスも、無料化している例が多く見られます。人工知能(AI)やRPA(Robot Process Automation)といった、業務改善し効率化をうながす最新技術も、無料で提供されているコンテンツ(AIの場合、プログラミング言語やアルゴリズム)を活用すれば、仕組みの理解や有効性が確認可能です。
しかし無料のコンテンツには、使用者側、特に企業における活用に大きなハードルがあります。インターネットから入手できる様々なコンテンツにまつわる情報セキュリティの問題です。AI(人工知能)を調達購買業務に生かす取り組みを紹介したセミナーで、必要なツールは全てインターネットから無料で入手できると紹介。しかし企業で設定されたセキュリティ基準により、出席者の過半数以上がダウンロードできないと回答していました。最新技術を簡単に試せるはずのせっかくの機会が奪われているのです。
こういった判断は、近年の情報セキュリティにまつわるリスクを考え合わせれば、やむを得ない判断です。闇雲に誰もが勝手にソフトをダウンロードすれば、セキュリティ管理がどんどん煩雑になります。しかし、こういった環境での対応が、企業成長を大きく左右すると考えています。
セキュリティにまつわるルールがあるから、やむを得ず何もしないのか。それとも社内の情報システムの担当者に活用可否の検討を依頼するか、あるいは企業ネットワークには接続しないパソコンで試行錯誤を試みるか。興味をもって新たなツールの存在を知った後、どのように対応するかで、その後が大きく異なると考えているのです。
社内の情報セキュリティ管理にまつわるルールの順守は、社内業務の安全確保には欠かせない従業員の責務です。だからといって、あらたな情報、可能性の芽を、そのままにする理由にはなりません。自宅にあるパソコンでも試行できます。会社が設定したルールは大事ですが、ルールを守って発生するマイナスの影響は、ルールを設定する管理者ではなくルールを守る使用者でなければ身を以て感じられない貴重な意見です。ルールを守った結果で、会社の仕組みが競合対比で大きく遅れる可能もあるのです。
対応しないとリスクも発生しません。それは飽くまでも短期的にであって、中長期的な視野では、大きなチャンスを逃すかもしれないのです。リスクの高さ、新しいからこそ仕組みやルールが未熟であるあかしです。だから触らないのではなく、リスクを回避しつつ触ってみる、試してみないと、近視眼的なリスク回避が、中長期のリスク顕在化の可能性を高めてしまいます。何とかできないか、が今とても重要なのです。(牧野直哉)