1-7 調達購買のあるべき組織論

近年、調達購買部門の機能は増加しています。一方で、人手不足により機能拡大に見合った増員の実現は難しい状況です。従来業務の効率化を進め、創出した時間を増加した機能に優先順位を設定して割り当て実行が必要です。変化の大きな現代、業務内容に合わせて組織を変化する柔軟性が求められています。

☆調達購買業務の効率化

時代に即した組織を考える前に、前後工程含めた調達購買プロセスのムダを省き効率化が欠かせません。業務効率化には、2つの方向性があります。

1つ目は、仕組み改善です。最近一部の定型業務をRPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)化し、より付加価値の高い業務に集中する試みに多くの企業で取り組んでいます。RPAを導入する際は、本当に定型化されているのか。事前にムダな業務や重複作業をそぎ落とし、シンプルな定型業務を対象にして一刻も早い導入と効率化を進めます。RPAを導入しない場合も、従来業務でムダや重複がないかどうかを確認し、効率的な業務プロセス構築に取り組みましょう。

2つ目は、バイヤーの意識改革です。業績へ貢献度の高いサプライヤーとは綿密なコミュニケーションを実現するために、貢献度の低いサプライヤーとはコミュニケーション方法や頻度、時間を減らすサプライヤーの「区別」した対応が欠かせません。コミュニケーションの質を向上させ、時間や頻度を削減してもサプライヤーとの関係性を維持する工夫も必要です。サプライヤー来訪時の面談、電話でのコミュニケーションに加え、電話会議やチャットといったサービスによる新たな仕組みを活用したコミュニケーションで関係性向上を目指します。

☆ソーシング機能を強化する

調達購買業務は、ソーシング(発注するサプライヤを選定する機能)と、パーチェシング(発注機能、企業によって納期管理機能も含む)の2つに大別されます。経営環境の変化が少なく、安定的に需要が推移する場合、パーチェシング重視の組織が適しています。しかし変化の大きな現在、ソーシングの重要性が高まっています。

人手不足による企業数の減少、電気自動車に象徴される新たな技術の登場による需要構造の変化は、調達購買部門は今、「発注しているサプライヤーへ将来的に発注を続けられるのか」が問われています。サプライヤーが質・量の両面で変化している今、最適なサプライヤーが変わる可能性は、どんな業種でも高まっています。

将来的な事業の方向性を的確に理解し、事業運営に必要なリソースで社外に求めるリソースは何か?を明確にします。続いて、該当するリソースは、現在取引をしているサプライヤーから供給を受けられるのかどうかを確認します。できる、と言い切れなければリスクが存在します。未来に必要になるサプライヤー開拓を今から始めましょう。

☆調達購買部門の従来機能と新しい機能のリンキング

新しい機能が必要になったら、まずこれまでの業務内容の延長線上の取り組みとして検討します。従来業務との関連性を捉えできるだけ新たな作業を削減するのです。
「持続可能な調達」では従来のサプライヤー管理と関連付け、サプライヤー評価基準の変更からスタートします。もしサプライヤー評価基準そのものが未整備なら、基準設定検討を開始します。評価基準は、サプライヤーの労働関連法制の順守や、情報セキュリティ管理の状況も含めます。

海外進出先の支援なら、まず国内の仕組みの効率化します。その上で仕組みやバイヤー教育体系の構築を支援します。効率化が進んでいない場合、ムリ・ムダの排除から着手します。国内の調達購買部門が指導的な責任を全うするために、まず自らの体制や仕組みは最低限構築しましょう。(牧野直哉)

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