オールビジネスニッポン書き起こし「ビックデータは役にたたない」

*FMラジオ番組「坂口孝則と牧野直哉のオールビジネスニッポン」書き起こしです。よかったら、PODCASTをご登録お願いします! ここからどうぞ

坂口:今日のテーマは、ビックデータは役にたたない。

牧野:街を歩く人を測定するなど、ビックデータって目にしない日はないじゃないかと思うんですけど。

坂口:ビックデータっていうのは、そもそもスモールデータの対義語と呼ばれるものです。スモールデータというのは、ちょこちょこっとしたような情報なんですが、ビックデータは何万、何十万、何千万あるいは何億といったデータを、見える化したりだとか、あるいは収集することによって、これまでわかんなかったことがわかるだろと。

今、牧野さんが言われたみたいに、新型コロナウイルスで、行動自粛をした際に、どの都市では何人減ってるかといった定量的な分析が出たりしましたよね。

牧野:はい。

坂口:最近ね、僕が面白いなと思ったのは、スーパーの駐車場に何台止まってるかだとか、あるいはスーパーに何人来てるかってビックデータを取った件です。かつては一番スーパーの人手が多かったのは、25日だったんですね。

牧野:給料日ですよね。

坂口:お父さんがなんかね、給料貰ってきたらなんか高いの買おうか、ということになってきた訳ですけど、今は15日らしいですね。この15日っていうのは年金支給日だって言われているんですね。これ年金支給日は二か月に一回しか支給されないにも関わらず、おそらく、シニアの方の行動ってなかなか変わらないので、毎月15日はいいものを買おうかなと。

その次は、一日なんですね。これはより謎なんですけど、一説によると失業保険の給付日じゃないかと言われるんですね。だから臨時収入みたいなものが来た時には、お金使うかなというような。だから、ビックデータの成功例っていうのはいくつかあります。ただし、最近、僕が思っているのは、ビックデータ、ビックデータって言いすぎじゃないかとそんな気がしています。

牧野:おー。

坂口:ちょっと前に面白い小説を読んだんですけど、ある男性と婚約をしている女性の物語なんですよ。その婚約者の男性がちょっとあまりにも情ないっていうか、ちょっと頼りないので結婚相談所に行くっていう話なんですね。

牧野:それは別の人を探すっていう……??

坂口:もちろん。結婚相談所には、ビックデータとスーパーコンピューターがあって、その人の歴史から、あるいは住んでる場所とか、年収から最適な人を見つけるっていう。それで、コンピューターが推薦した男が、今の婚約者にそっくりってオチなんですよんでね。

牧野:ハッハッハッハッ。

坂口:これ示唆的で、ビックデータで指し示すのって、けっこう直感的に思っていたこととを指し示すというケースが多い。直感的じゃないのも、もちろんありますよ、人混みの分析だとか、さっきのスーパーマーケットの分析ってあるんですけど、「え?ここまでお金かけてこういうことしかわかんないの?」っていうのが結構ある。さらに数か月前の話なんですが、あるSNSの有名な企業に呼ばれてビックデータを使用したマーケティングっていう講座を受けてきたんですね。

牧野:ほーー。

坂口:これね、もう驚愕しましたよ。講座は二時間ぐらいあったのかな、資料もね100ページぐらいあったんですけど、簡単に言うと牛乳をスーパーマーケットで買う人は、牛乳について呟いているっていう話なんですね。これはもう驚愕して、いやそんなこと俺の直感でもわかるよみたいな話なんです。

牧野:ハッハッハッハッ。

坂口:あとテレビを買う人は、SNSにテレビに関する投稿をしているとか、どういう意味があるだろうなと思って。ビックデータとか、あるいはAIと呼ばれるものの、信頼性が薄れてくるんじゃないかと思ってるんですね。何でかって言うと、2019年ぐらいまでって、何でもテクノロジー、テクノロジー、テクノロジーで、テクノロジーさえあれば、人間社会の何でもこう問題が解決されると思われていた節がありますよね。ある人は、ビックデータとスーパーコンピューターとAIさえあれば、感染症っていうのは人間から無くなるとまで書いた人がいた訳ですよ。だけど、実際ふたを開けてみると、酷いことに……新型コロナウィルスね。疫病とかウイルスから人類は逃れてないじゃないかということが分かった訳だし、かつビックデータを活用してとかなんだかんだ言ってますけど、振り返ってみるに、ビックデータで夫婦ゲンカすら解決できていないことですから。

牧野:なるほど、なるほど。

坂口:これはちょっと僕からすると、これあんまりこうビックデータ、ビックデータでばっかり言うのもどうかな?っていう風な気がしてるんですね。

牧野:あの、リオデジャネイロオリンピックの、男子柔道が全階級でメダルを取りましたけれども、あれっていうのは敵の選手の組み方とかそういう攻め口っていうのをビックデータ分析したっていう風に言われてたじゃないですか。

坂口:はい。

牧野:多分ね、次のオリンピック、来年にある東京オリンピックで、おんなじ取り組みをしても、何か日本って負けそうな気が勝手な想像をしてるんですよね。

坂口:なるほど。ビックデータをこう活用するのは間違いというよりも、そこに恐らく人間の手が入って、人間の頭が入って、より改善していくでしょうから、なんでもかんでもデータをまぜこぜにして結論が出るということではないと思うんですよね。

牧野:そうだと思うんですよね。そういった成功例があるんだったら、今度、敵もやってくるじゃないですか。だから次はやっぱりそのじゃあビックデータと何を組み合わせするかとかね。そういったことが必要なんじゃないかと思いますけどね。

坂口:なんか最近、某有名な漫画家、お亡くなりになった某マンガ家の最新作を、AIが描いたっていうのありましたけど、あれ中身見たらもうほとんど人間が手を入れ過ぎていて、最初から弟子の人たちが書いた方が早いんじゃないかと思ったんですけどね。

牧野:ハッハッハッハッ。

坂口:ただし、もしかしたら、数年後には、こんな会話してた我々二人が、笑ってしまうかもしれないぐらいAIが進んでくるかもしれませんね。

牧野:確かに確かに。

坂口:だけど現時点では、こうあまりにもビックデータ、ビックデータとか言いすぎて、結局あんまりみんな何に役立つかわかんないまま、なんか進んでいるのが現状じゃないかな、って思いますよね。だから、これから重要になってくるのは、評論家。評論家というのは、これまで過去に組み合わせがないものっていうのを、組み合わせて新しい論も作り上げるやつじゃないですか。

牧野:なるほど、なるほど。

坂口:あとはね、お笑い芸人。何でかっていうと、お笑い芸人っていうのは、落差を付けることによって、笑いを導いてきたじゃないですか。だから、評論家とお笑いっていうのが重要になってくるんじゃないかな、なんて思っているんですね。

あとはあれじゃないですか、芸術家じゃないかな、と思ってますね。これまでにない新さとか「美」。今はライブハウスが大変ですけど、ミュージシャンとか、お笑い芸人、そして評論家という、いかにも今メディアで活躍してる人たちってのいうは、必然だったような気がするんですよ。

牧野:なるほどね。

坂口:僕が思うには、アーティスト、ビックデータに頼らずに、過去のデータに頼らずに、新しい付加価値っていうか、価値というものを作り上げていく人が、これ以降の凄く注目される人じゃないかな、と思いまして。いいですか、牧野さん、僕が大好きな曲をかけて?

牧野:はい、ぜひお願いします。

坂口:サザンオールスターズで、『おいしいね~傑作物語』。このサザンオールスターズの『おいしいね』っていうのを選んだ理由がありまして、これこそね、桑田佳祐さんの本当に芸術性がすごいという、もう過去のデータに縛られた曲づくりではない。電波ですので、ズバリ言うことができないですけど、英語圏の若者が、怒った時に馬鹿野郎みたいな意味で使う四文字言葉ありますよね。

牧野:はい、ありますね。

坂口:Fから始まる、あれね。言いませんよ。桑田さんはこの曲でFから始まる四文字の言葉をどうしても使いたかったらしいんですよ。だけどね、ソレは使うことができないということで、桑田さんが発明したのは、論語で孔子が四十歳のことを「不惑」と言いましたよね。「不惑」ってずっと歌ってるんです。すごいでしょ。

牧野:ハッハッハッハッ。

坂口:ラジオでは、このまま流れると思います。でも「不惑」なんてスゲーな、こんな方法のやり方があったのか、これは絶対、機械では発想できないですよ。繰り返します。創造性というのは、過去のデータにはなく、新しく作り出そうという力に支えられているだ、ということでサザンオールスターズで『おいしいね~傑作物語』です。

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