オールビジネスニッポン書き起こし「講演という仕事」

*FMラジオ番組「坂口孝則と牧野直哉のオールビジネスニッポン」書き起こしです。よかったら、PODCASTをご登録お願いします! ここからどうぞ

坂口:今日のテーマは「講演という仕事」です。講演っていうのは、改めて言うまでもありませんが、人前で話して一時間とか90分とか2時間とか話すという仕事でありまして、僕も牧野さんもそうですけど、十年ぐらい前からですかね。

牧野:そうですね。

坂口:誰かから呼ばれて話すっていうことをやってきたんですけど、ちょっと今はね、慣れたんですが……。僕ね、十年前に初めて僕を呼んでくれた人がいた時に、もう信じられなかったですもんね。なんでこんな男の話を聞きたいんだと。

牧野:ハッハッハッ(笑)

坂口:誰からも反応してもらえず、一方的に話す仕事じゃないですか。もう酔狂な仕事ですよ。

牧野:確かに。

坂口:常人の仕事じゃないですよね。さてそんな講演という仕事ということなんですが、ちょっと講演でせっかくお呼びいただいたにも関わらず、ちょっと困るようなことが幾つかありまして、挙げてみたいですけど。

一つ目。主催者の人が講演の直前まで控室にいる。

牧野:ハッハッハッハッハッハッ(笑)

坂口:僕もそんな天才じゃないから、この60分何話そうかとか、考えるじゃないですか。

牧野:気遣っているんでしょうけどね。相手もね。

坂口:もしね、なんか研修会でも、あるいはどっかの企業でも、お呼びになる方がいらっしゃったら、ちょっとその直前までいるはやめた方がいいんじゃないかなというのは一つね。

牧野:確かにそう思います。

坂口:花束問題というのがありまして……。

牧野:花束問題?

坂口:花束問題ってのは講演が終わった後に、司会の女性の人が花束を僕にくれるっていうケースがあるんですね。この花束がもう正直言いますよ。もう無駄で無駄で仕方がない。

牧野:ハッハッハッ(笑)

坂口:これ持って電車乗るのとか、これ持ったまま飛行機に乗るのとかねえ。でね、優れたところは、控室に持っていったら、「あの大丈夫ですよ、こちら側で処理しておきますから」っていう形なんですけど。

牧野:あー、なるほど。

坂口:持ち帰らせるとこがあるんですよね。言うのは失礼なんだけど、このデカすぎる花束どうすればいいの、みたいな。いやタクシーだったらまだしも、在来線に乗ってここから二時間これどうするんだみたいなね。途中で捨てるわけにいかないでしょ。

牧野:なるほど、なるほど。

坂口:私ねこの経験があるもんですからね、僕の子供がバイオリンやってるんですけどね、よくお世話になっている先生がいらっしゃって、その先生の初めてのCDデビューのコンサートがありまして、みんながね大きな花束ばっかり持ってくるんですよね。僕は逆の立場の経験がありましたから、一番ちっちゃなね、本当にミニサイズの花束を持っていたんですね。そしたらうちの息子が怒りましてね。

牧野:ハッハッハッ(笑)

坂口:みんなが花束を渡している中で、うちの花束が一番ちっちゃくて恥ずかしかったと言ってたんですけど。本当に8歳児というのはまだ社会のことを知らないなと思ってね。

牧野:ハッハッハッ(笑)

坂口:貰う側からしたら、小っちゃいほど嬉しいと。かつ僕は、ちゃんと楽屋に取りに行きましたからね。もし不要だったら持ってきますよと。

牧野:あー、なるほど。

坂口:いやね、それはいいとして三つ目。一番困るのが、どういう人が聞いてくれるか、観客の特徴を間違って伝える主催者が一番困るのですね。この前のことなんですけど、ある田舎のですね、都道府県に行ったところ、四十代のビジネスマンが聞きますからと言われて、実際行ったんですね。僕もちょっと小心者なもんですから、どんなお客さんが集まってるのかなって楽屋から覗いたところ、あきらかにほとんどの人が杖ついてるですよ。

牧野:ハッハッハッ(笑)

坂口:僕ねもう四十代の人が話聞くということでしたで、ビジネス論を語ってくれと言われたんですね。でね、もうこれがもう明らかに七十代、八十代で、仕事を引退なさった方だった訳ですね。僕の一つ前で講演した人は、もう全く受けてないですよ、全く。もうこれはいけないなと思いまして、もう用意した資料をすべて使うのをやめようと思って、演題に立ちまして、僕は一言目、これちょっと勇気を持っていってしまうと思いまして、「今からビジネスの話をしますけど、皆さんはもう十年後死んでるだろから、ビジネスなんて関心ないですよね」っていうふうに断言したんですね。

牧野:ハッハッハッ(笑)

坂口:そしたらこれは大爆笑が起きまして、「えーではもうビジネスの話なんてやめてもう全部、今から漫談で話しましょう」ということで、三十分、何とか乗り切りまして……。そしたら、私にサインを求めるご婦人たちが集まっちゃって。でも、一番困ったのが講演会とか、来たことのないお父さんお母さんたちばっかりだったので、サインをしてもらうにも僕にね、あのサイン色紙とか持ってないですよ。

牧野:あーなるほど。

坂口:僕はあのーなんか手帳とか持ってませんか?っていう話をしたら、年金手帳が出てきたんですよね。

牧野:ハッハッハッハッハッハッ(笑)

坂口:年金手帳はまずいだろう、って話して、で、じゃこれでどうぞってなんかTシャツ出されて、なんか着てるTシャツなんですよ、そのおばあさんがね。いやこれはあのお父さんの形見なんだけど、これにちょっと油性ペンでサインしてくれないかって。さすがそれ無理だからって、本買ってくれたら、その本にサインしますよ、って言ったら、もう老眼が進みすぎて文字読めないって……。

牧野:ハッハッハッ(笑)

坂口:本当にあれは稀有な経験だったんですけれど。是非ですね、新型コロナウィルスが収束して、何かできたらいいなということをちょっと期待も兼ねまして、講演というテーマでお話をさせていただきました。

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