今どきのサプライヤー訪問を考える(牧野直哉)

前回に引き続き、サプライヤー訪問時、特に工場訪問時に注意すべき内容についてお伝えします。

③保管
just in timeによるサプライヤーからの納入が実施されている工場であったとしても、原材料や部品の在庫がゼロや、仕掛品や半完成品の在庫が0である工場はありません。したがって訪問するサプライヤーがこれからバイヤー企業に納入する品物をどのように扱っているか。実際に運搬し何らかの作業を加える工程ではなく、工場内に保持している状態を確認するのが保管状態のチェックです。

例えば多くの企業で、顧客からのより短縮化したリードタイムに応えるために在庫を積極的に持ったり、材料や部品メーカーからの最小販売数(MOQ:Minimum Order Quantity)の影響で使用しなかった数量が残ったりしています。どんな企業でも保管状況は確認が必要です。

ここで見るべきポイントは、3つです

(1)保管期間が平均的にどの程度か
これは、在庫に伝票が添付されていれば判断可能です。しかしすべての在庫の伝票を確認するわけにはいきません。したがって訪問先の担当者へ質問して確認します。

また一般的に「在庫回転率」から類推可能です。例えば私が過去に勤務していた業界では、顧客からの短納期要求に対応するために、競合企業を含め平均的に3カ月分の材料や半完成品の在庫を持っていました。この場合、1年間に約4回在庫が回転する計算です。業種や業界によって、計算期間に違いがあるので注意します。

一般論では、できるだけ保管期間は短い方が良いでしょう。しかし短納期要求に対応するために戦略的に在庫を保持しているケースもあります。どの程度の期間なのか、その期間に違和感を覚えたら、その理由を確認して妥当性を判断します。

(2)在庫品の数量管理が行われているか
在庫があるなら、おこなわれているはずです。この点は「どのように」おこなわれているかを確認します。例えば、在庫の有無は誰がどのように確認するのかです。実際に何かサンプルで確認してみるのも良いですね。管理方法が決まり、着実に実行している企業では、まさにあっという間に確認方法が提示され、かつ実行されます。ちょっとあやふやな場合「ちょっとやってみてください」の後に、少し手間取るはずです。そういった部分で、数量面での在庫管理レベルを、在庫数が信用できるか、できないかで掌握します。

(3)品質が担保される保管状態か
この判断には、まず在庫品の品質保持にはどのような環境が必要かを理解しなければなりません。原材料の場合は、雨露がしのげれば良いレベルから、部品レベルの在庫の場合は、空調(温度)と湿度の管理が必要な場合もあります。こういった内容は、まずバイヤー企業に在庫管理に関する環境設定の有無が基準です。

近年では「IoT:Internet of Things」によって、あらゆるものがインターネットにつながる傾向があります。従来、原材料や部品だろうと、完成品だろうと、温度や湿度管理を全くおこなっていなかった企業もあるでしょう。そういった企業でもIoTを実現させるためにプリント基板や電子部品を、部品レベルや製品レベルで在庫しているケースがあるはずです。こういった従来と異なる特性の製品を取り扱いはじめた場合、注意が必要です。

バイヤーがサプライヤーを見るとき、すべてのサプライヤーの製品や原材料について、十分な予備知識はありません。その場合は、自分にとってこの環境は過ごしやすいかどうかでもある程度の判断は可能です。人として過ごしやすい環境であれば、原材料や部品に与える影響も少ないものも多いのです。今の時期、気温が低く、外ではなかなか快適に過ごせませんね。こういった人にとって好ましくない環境をキーにして、在庫品にどのような影響を与えるかを確認するのです。

④品質保証システム
この内容は、まず文書でシステムの説明を受けます。その上で、説明された内容が、現場で実践されているかどうかを確認します。現場での確認内容は、前回お伝えした、現場での作業内容の確認です。現場での作業内容がどのように指示されて、指示された内容がどのように規定されて、正しく作業されたかどうかをどのように確認するかをセットにして考えます。

ここで注意すべき点は、作業内容の確認でもお伝えした通り、文書の説明内容と、現場での実践内容が同じかどうかです。傾向として、日本企業では現場の管理者が、文書作成や維持管理をおこなっていますので、文書と現場の実行内容に乖離は生まれにくいでしょう。しかし海外サプライヤーの場合、現場管理と品質マネジメントに代表される文書管理が異なる担当者でおこなわれている場合は、注意が必要です。

これは、偏見と思わずにお読みください。私がサプライヤーを訪問し、品質マネジメントの説明を受ける場合、説明者の服装で、ある仮説をもって確認します。説明者が作業着を着ている場合、現場と書類の乖離がない、違いはあっても少ない場合が多く感じました。一方説明者がスーツを着ている場合、現場と文書の乖離が多くなっている傾向がありました。これは、作業着であれば現場へ行きやすいし、実際によく足を運んでいる担当者が多い傾向。スーツの場合は現場への意識が薄く、足も運ばないケースが多かった経験則です。ただ来訪者に敬意を表してスーツを着ているケースもあるので、そこは「いつもスーツなのですか?」と確認して判断します。

(つづく)

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