ビッグデータとビジネスの明日(坂口孝則)

私はコンサルタントをやっています。そうすると、企業の戦略を一緒になって考える機会があります。この戦略を一言でいうとなんでしょうか。調達は調達価格の引き下げ、営業は販売価格の値上げ、だと私は思います。メーカーだとすれば、商品に使用する部材は、価格比較しやすく安いものにする。そして、それらを使って、他商品と比べにくい完成品を高く売る。これが鉄則です。

先日より、白物家電の好調が報じられています。エアコンや洗濯機、冷蔵庫などは、かつて斜陽商品でした。しかし、テレビ、オーディオなどの黒物家電が海外勢に後塵を拝すなか、白物家電は高価格商品を全面に打ち出し復活を遂げてきました。黒物家電は、機能が増えすぎ意味不明になっているなか、白物家電は生活者のニーズをうまく取り込んできました。洗剤の自動投入は便利ですし、ロボット掃除機は黎明期とくらべると性能が格段にあがりました。調理家電も、一昔前では考えられないレベルになりました。白物家電は2兆円を超えるレベルで推移しています。しかし、少子高齢化のなか安穏とできません。

ところで、私が考える白物家電の飛躍は、私の知人でもある美崎栄一郎さんが本誌で連載しているようにIoTの徹底化にあります。たとえば、冷蔵庫がアマゾンとつながれば、足りなくなった食材を自動補充してくれればいい。センサーとカメラがあれば、家族の誰が何を食したかがわかるはずです。食材補充のマージンが家電メーカーに入れば、冷蔵庫はタダで配られる可能性があるでしょう。またその冷蔵庫と、ヘルスメーター、調理家電がつながれば、最適なメニューを提案してほしいところです。

いまスマホで食物を撮影すると、概算でカロリーを表示する実験が続けられています。台所にカメラを設置し、皿に盛るたびにカロリーを表示してくれたら、きっと日本人のメタボ比率は下がるでしょう。なんなら、スマートスピーカーから、「あと何キロ痩せたら、ワンサイズ下の衣類を着られます」と教えてほしい。怒った使用者が叩き割るかもしれませんが、ふたたびスマートスピーカーを購入すれば売上増加に寄与するでしょう。「叩き割った人は、これを買っています」とストレス軽減グッズを勧めてくれたら最高ですね。いや、洗濯機もせっかくわれわれのTシャツを洗ってくれているんですから、発汗の成分分析をして病気の有無を調べてほしい。そこから、病院の予約サイトに直リンすれば、私などは絶対に予約します。

掃除機も、われわれの皮膚片を吸っているのですから、それを分析しカウンセリング機会を見失うのはもったいない。なんか脂肪分が増えましたね、とか、あるいはガンの可能性なども教えてくれたら助かります。鏡も、なぜ私たちへのビジネスチャンスを逸しているのでしょう。「シワが増えましたね。美容化粧水を使いましょう」などとアナウンスしてくれたらいいのに。「日焼けのしすぎは皮膚ガン発生の可能性を高めます。ところで、あなたの黒さからいうと発ガン確率は……」などと教えてくれたら恐怖ですね。実際にガンになったひとが、それ以前にどんな言葉で検索をしていたか研究なされています。それは検索後から傾向を読み解く分析ですが、見た目データも蓄積されれば有益です。

白物家電が行き着く先は、キワモノ家電かもしれません。。

<了>

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