未来調達研究所株式会社クレド10か条(坂口孝則)

以前から私は、作家・森博嗣さんのファンで、すべての作品を愛読しています。森さんは、めちゃくちゃすごい作家で、異常な名言を残しています。

《デビューした年に、大学の給料の倍の額の印税をもらった。次の2年で、大学にあと30年間勤務してもらえる給料の総額くらいを稼いだ。さらに次の2年で、一生かかっても使い切れない額を得たと思う。だから、この時点(5年まえ)に既に仕事をする必要はなくなったのだが、その後も仕事を続け、収入は増え続けた。何のために働き続けているのだろうか?》(『MORILOG ACADEMY2』2006年3月31日「何故続けているのか」)

森さんは名古屋大学の助教授でしたが、作家となったあと、数年後に辞めます。森さんは学生の採点をする際に、基準をもたねばならなかったといいます。理数系であれば当然、と思われるかもしれません。しかし、日本語の作文などを採点するときも、曖昧さを残さないために、自分の中での明確な基準で採点していたそうです。

森さんは、人生の判断基準も有していて、それがゆえに発言や行動がブレません。森さんをなぜ引用したかというと、行動する際の基準をもつ重要性です。

私は、以前、調達・購買部門のコンサルティングをする際に、「なぜマネージャーが忙しいのか」と問いを立てました。部下がいつも会議に呼んだり、相談するために並んだりするのです。部下の人に訊いてみました。「マネージャーに毎回のように相談していますが自分で決めたらどうですか」と。しかし、やはりマネージャーが同判断するかを知りたいというのです。

なるほど……。

いろいろな施策を試しましたが、マネージャーの仕事がラクになることはありませんでした。

そこで、私がたどり着いたのが。そのマネージャーに「調達・購買課」あるいは「調達・購買部」(もちろん「調達・購買グループ」でもよいのですが)のクレドを書いてもらうこと。そして、それを部下に配布することでした。クレドは仕事に対する信条です。そうすれば、部下は「考えたんですが。このクレドに照らして考えると、この場合は、こうしたほうがいいと思います」と提案できます。

そこで、クレドを作成してみてください--、といきなり提案してもわからないでしょうから、弊社・未来調達研究所のクレドを挙げておきます。ためしに10か条、作ってみてください。

未来調達研究所株式会社クレド10か条

1. 私たちはクレドに基づき判断・行動します。

2. 私たちは調達・購買業務サポートを通じて、クライアントの業績向上を果たします。その過程で調達・購買部門の地位向上を目指します。前向きで、積極的なクライアントには、想像を絶するサポートを行います。

3. 私たちは、クライアントを尊敬すると同時に、こちらも尊敬してくれるクライアントを優先します。不遜なクライアントと付き合うことは、私たちの業務品質を落とします。したがって、無礼な客からは逃げられるよう、私たちはお互いを助けます。

4. 私たちは、目の前の失敗から何かを学びます。学ばなかったら、同じことが繰り返されます。私たちは解決策を共有し、お互いを助けます。失敗を減らすことに喜びを感じます。

5. 私たちは、お互いと話すときは「ありがとう」と必ず声をかけあい、少しでも困っている様子を見たら「何か手伝いましょうか」と訊きます。「大丈夫ですか」は「大丈夫です」としか答えられないので、そのようには訊きません。

6. 私たちは、素直に謝ります。そのひとがいないところで、誰かの悪口はいいません。

7. 私たちは、お互いに単なる質問をしません。「私はこう考えますが、どうでしょうか」と自分の考えを必ず添えるようにします。また、問題が起きたときに「問題があります」とはいわず、「仕事があります」というようにします。仕事には接するべきだからです。

8. 必ず数字で判断するようにします。また誰かに質問するときも、数字を添えるようにします。それは相手への優しさであり、それが能力向上につながります。

9. 判断に迷ったときは、この判断に照らして考えます。「クライアントのためになるか」+「私たちの向上につながるか」+「社会のためになるか」。この三つが実現するかを考え、最善の選択肢を決めます。

10. 「どうしましょうか」ではなく、できるだけ「こうしましょう」と言うように努めます。それが他者を勇気づけ、そして物事を前進させると信じるからです。

これらを配ると、さっそく前進します。そのうち、また部下が相談しにくるかもしれません。そうしたら、それは、新たにクレドへ追加すべき内容でしょう。クレドは進化します。1年も経つと、クレドを通じて、働き方改革が達成できるはずです。

信条とは、理念とは、タテマエなのだとばっかり私は思っていました。しかし、信条とか、理念とかは、実利的なものだったのです。

<了>

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