メディア・リテラシーを高める①(坂口孝則)
テレビに出はじめて7年がすぎました。私の特徴上、バラエティとかよりも、情報番組とか報道番組なんですが、情報の扱い方について「?」というケースがあります。そこで、あやうげな情報を見極めるため、いくつかの問題を出します。
そこで、私の答えを読む前に、いったんご自身で考えてみてください。
<問題1>次の報道内容を読み、問題点を答えろ
XX新聞社のアンケートでは、全国の小売業二百社を対象とし、八十社から回答を得た。その結果によると、為替差益の還元をすでに行っているのは、小売業の五〇%にのぼり、計画中は二〇%となった。とくにスーパーの八〇%、百貨店は七五%がすでに実施している。
また、価格回答のあった企業十三社を合計すると、約八百品目にわたり、十五%以上の値下げをすでに実施していることがわかった。
*以前の円高時の記事。これは、円高だから消費者にメリットが有る、という結論ありきの記事では。
<坂口の回答>
・200社で実態がわかるはずがない。有効回答が100社以下であれば率にするな
・そもそも、PRにもなるのだから、為替差益を還元している企業が積極的に回答したはず。ということは、120社は還元しておらず、実態は逆では?
・そもそも一品目でも還元というのか。GMSでは何万点もの商品が並ぶ、そのうち80点ていどで還元と呼べるのか
<問題2>次の報道内容を読み、問題点を答えろ
市民団体が独自に行った調査によれば、全国八千人うち七千五百人の女性から回答を得、職場で性的な被害を経験した人は六二%だった。
具体的にはその中で、 「愛人になれ」「ホテルに行こう」など言葉での被害は、四九・九%。「いやらしい目つきで体を見られた」「スカートをめくられた」などの痴漢的行為が九八%。「下着に手を入れられた」など、より悪質な例は一二%あった。
<坂口の回答>
・そもそも市民団体とはどんな団体か。思想に共鳴するひとが回答した可能性があるのではないか(回答率が高すぎる)。被害者は積極的に回答する
・“など”と書かれた前の事例は極端な例か、あるいは一般的な例か不明
・「いやらしい目つきで体を見られた」「スカートをめくられた」と、まったくレベルの違うものを一緒にして比率を高めるのは典型的水増し手法
*もちろん一例でも性的な被害は許されるものではない。ただ、数字の操作とは別問題だと私は思う。
<問題3>次の報道内容を読み、問題点を答えろ
XX新聞社は、東京の税理士を対象にした調査で、税金問題の結果をまとめた。次回の総選挙で焦点となる消費税10%への引き上げ問題では、引き上げることへの「賛成」は37.7%だったのに対し、「反対」「一時凍結」を合わせると60.3%に達し、税の専門家も引き上げに強い抵抗感を示していると明らかになった。
一方で、高齢化が進む中、社会保障持続のために、今後の引き上げを予想する人が40%に上り、消費税への見方が揺れていることがうかがえる。
<坂口の回答>
・そもそも税理士は企業会計の専門家であって、財政の専門家ではない
・むしろ消費者の立場から回答したと考えられる
・「反対」「一時凍結」は一緒ではなく、むしろ後者は賛成なのではないか
・今後の引き上げを予想する人が40%というのであれば、必要性は認めているということになるのではないか
*専門家っぽい人から意見を訊くのは、メディアの常套句ではないか(反省を込めて)。
<つづく>