連載「2019年から2038年まで何が起きるか」(坂口孝則)

*2019年から2038年まで日本で起きることを予想し、みなさまのビジネスに応用いただく連載です。

<2024年①>

「2024年アフリカで富裕層が急増」
人口増によるビジネスが勃興

P・Politics(政治):アフリカ開発会議などで日本が大幅な経済援助を約束。
E・Economy(経済):富裕層の数の伸び、またGDPの伸びはアフリカ全体で堅調。
S・Society(社会):人口は世界の20%弱をしめるが、2100年には40%に拡大する見込み。
T・Technology(技術):ICT(情報通信技術)を活用したビジネスが増加。

人口増が続くアフリカでは、GDP等の経済指標も堅調に推移している。そこで企業は人口増に伴い、市場としてアフリカを見るようになった。またICTの応用により新たなビジネスも生まれている。ただし、アフリカ経済は原油の市況に大きく影響され、また農業生産性も悪いままだ。リスクを抱えながら、日本はアフリカ市場をいかに戦略的に攻略するかが課題になっている。

・遥かなりアフリカ

高校生時代、鬼才の文化人類学者・西江雅之さんの著作を私は愛読していた。氏といえば講義が面白く大学の名物講義となり、かつ歩くのが速すぎ人間ではないと思われ、さらに十カ国以上を操り、私のいわばヒーローだった。

私のアフリカなるもののイメージは、氏の著作を通じて作り上げられてきた。西江さんは驚くほど美しい文体で、しかし淡々とアフリカの日常を記述していった。次のものはケニアの首都ナイロビでの出来事を切り取った記述だ。

<食堂には、隣国のタンザニアから来た少年二人が、ルイヤ族の青年が二人、ボーイをしており、その他には、緑の制服を着たルイヤ族の女が五、六人ほど、ウエイトレスとして働いている。十七、八歳から二十四、五歳位までの女たちで、午前の十時頃から夜の十一時頃までの時間、仕事をしながらビールを飲み、ビールを飲みながら仕事をする。絶え間なく、ジュークボックスに硬貨を入れては、巨大な音でアフリカの流行歌を次々に流し、歌い、踊り、笑い、怒鳴りあう。わたしはその女たちが泣くのを一度も見たことがない。その女たちが人前で嘆くのも一度も見たことがない。

夜中に店を閉めると、女たちは近くの安ホテルへと、その晩に店で行き会った男と共に消え去るか、または、ひとまず自分一人の安ホテルへと向かい、改めて男を探しに街に出る。彼女たちには帰って寝る自分の部屋がないのである。(西江雅之『花のある遠景』)>

西江さんの紡ぐアフリカには、女性たちの売春があり、暴力と犯罪があり、しかしそのなかで、しなやかに強く生き、ただただ衝動に動かされて踊るアフリカ人たちがいた。悲惨な状況にもかかわらず、なぜか読後感は陰惨なものではなく、むしろ清々しささえある。それは氏のアフリカに、躍動と鼓動と、原始的な生命感の歓喜を感じずにはいられないからだろう。

音楽家ブライアンイーノはワイアードの編集長だったケヴィン・ケリーとの対談で、「問題はコンピュータにアフリカが足りないことだ」(”The problem with computers is that there is not enough Africa in them.”)と述べている(米WIRED1995年5月号、ならびに日WIRED2017年VOL3)。イーノは、クラシック音楽が古典的な階層構造、序列化、統御を象徴しており、そのカウンターとしてアフリカを持ち出している。イーノにとって、アフリカとは予測不能で統御の観念もないものだった。

果てしなきリズム、そして原始欲求としてのダンス。

その鼓動とともにアフリカは世界においてラスト・フロンティアを超え、世界の中心に座しようとしている。

・各国とアフリカ

アフリカは地球上で二番面に大きな大陸だ。3000万km2の面積をもち、低い平地が少なく高原大陸と呼ばれるように海抜300m以上の高原となっている。アフリカと日本の地理的にも心理的にも距離は近いとはいえず、日本人の多くはアフリカ出身のひとと話したことすらない。

アフリカというと内戦やテロなどぶっそうなイメージをもちがちだ。ただ、アフリカといえばあらゆる資源が眠っていることは知られている。莫大な石油が眠っており、またダイヤモンドも世界一の量がアフリカに眠る。ウランなどの資源も同様だ。この資源を先進国としては見逃すわけにはいかない。

2016年8月にはケニア首都ナイロビで第6回アフリカ開発会議が開催された。日本も参加し、安倍首相は3年で1000万人を教育し、3兆円のインフラ整備等、アフリカの未来へ投資すると宣言した。

そしてもう一国、忘れてはいけないのは中国だ。

中国はかつて石油の輸出国だったが、1994年からは輸入国に転じた。それから年度7%の高成長を見せている。あらたな石油源を見つけ、国民に供給せねばならない。

中国はアフリカの植民地からの解放運動を支援してきた。国家主席だった胡錦濤は2003年から頻繁にアフリカを訪れ関係強化に動いた。習近平もおなじく頻繁にアフリカに訪問し続けている。中国のアフリカ援助は過激ともいえるほどだ。

2006年のFOCAC(中国アフリカフォーラム)北京サミットにおいては、アフリカの重債務国と低所得国には債務が免除されるとすらしたほどだ。私はアフリカ知人の二人に聞いたことがあるが、いろいろな感想はあれど、全体として中国を悪くはいわなかった。なお、アフリカ3カ国にきいた好感度調査によると、英>中>南ア>独>日>仏>印>米だという(「社会人のための現代アフリカ講義」東大塾)。

中国としてはアフリカを開発し資源を確保し、さらに自国商品を販売したいと考えるのは普通だろう。

そこで、まずはアフリカの人口や経済がどれくらい拡大しようとしているのか見ることにしよう。

・アフリカにおける富裕層の拡大

日本の人口が1億2千万人を切ると考えられている2024年に、アフリカでは富裕層が爆増すると考えられている。The Wealth Report2015によれば、2024年までのアフリカ富裕層の数は二桁の成長率で増えていく。( http://content.knightfrank.com/research/83/documents/en/wealth-report-2015-2716.pdf )。そのなかでも、UHNWIの推移を見てみよう。このUHNWIとは、聞きなれない言葉だが、ultra-high-net-worth individualの頭文字をとったもので、超富裕層とでも訳せるだろう。定義では、3000万USドル以上を有する。つまり、33億円以上をもっている数だ。アフリカ各国ともに増加するのがわかる。アフリカ全体では、この期間に59%伸びる。

もっとも、アフリカだけで見てもわからないので他の地域とくらべておくと、UHNWIは同期間で、全世界平均が34%、アジアの伸びが48%、ヨーロッパ/米国ともに25%となっており、アフリカはアジア以上に伸びているのがわかるだろう。

また、象徴的なUHNWIから比較したが、通常の富裕層と定義されるミリオネア(資産100万ドル=1億1000万円位上)の数も、同時期にアフリカは53%も増加する。この伸びは、おなじく世界のどの地域の伸び率と比べてももっとも高い比率であることは追記しておく。

・人口やGDPの伸び

富裕層だけではなく、人口全体も見てみよう。国際連合World Population Prospectsによれば、今後アジアは老い、人口カーブは減少に向かう。いっぽうで、アフリカは急上昇していく。

細かな数字は覚える必要はないとして、人口の中心がアフリカになっていくことは理解できる。推計では現在(2015年国際連合調査)、世界人口74億人のうちアフリカは12億人を占める。これは比率でいえば16%となる。これが、今節の2024年には18%に上昇し、2050年には26%、2100年にはなんと40%になっていく。

さらに2050年には世界における人口トップ20のうち、7国がアフリカになると予想される(ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、エジプト、ケニア、ウガンダ)。とくにナイジェリアは3億8900万人を有し、世界4位になる。

人口が増えるので当然かもしれないが、GDPの伸びも継続していく。アフリカ開発銀行によれば(https://www.afdb.org/fileadmin/uploads/afdb/Documents/Publications/Africa%20in%2050%20Years%20Time.pdf)、今後50年にわたって成長が見込まれる。

さて、この成長いちじるしいアフリカとのビジネスを考えていきたい。ところで、全体としてはざっと説明したが、それでもアフリカ個々の国についてどれだけ知っているだろうか。

以前、こういうことがあった。私のこどもが保育室に通っていたとき、アフリカ出身のお父さんが二人いた。共通点は日本語をほぼ話せず、さほど雄弁ではないということだった。うち一人は自動車の輸出業を営み、アフリカで販売しているという。

「どうやって仕入れるのですか」
「定期的に日本で中古売却オークションがあります」
「えっとアフリカは右ハンドルでしたっけ?」
「国によって異なります」
「左ハンドルの国には?」
「改造してもっていきます。車種にもよりますが一台、30万円から50万円で左ハンドルにできます」
「どのメーカーが人気ですか」
「国によります」
「まあ、そうですよね。じゃあナイジェリアとか」
「トヨタ車ですね」
「儲かりますか」
「国とマーケットの状況によります」。

このお父さんが私と話したくなかった可能性をあえて無視すれば――だが、会話で「国による」と聞いて、たしかにそう思った。私に「アジアってどうですか」と訊かれても、たしかに答えようがない。アジアといっても多くの文化圏や事情がある。しかし、私たちがアフリカというとき、個別の差は消え去り、道なる大陸として巨大なかたまりとしてしか考えられなくなる。あたりまえだが、国を個別に考える必要がある。よって、次は注目すべき国を書いてみたい。

<つづく>

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