中国にかんして調達・購買担当者がいま知るべきこと(坂口孝則)

現在、中国企業と関連するひとたちが知っておくべきことがあります。それは、習近平が取り組む施策です。一般的には、汚職対策といわれるものの、もう一つ、環境対策があります。環境対策は自動車の排ガス規制だけではありません。工場に対する規制です。

日本企業が中国に工場を持っている際、当然ながら、この環境規制の対象となります。汚染を基準以上に排出している場合、工場閉鎖がありえます。その数は日本企業の中国工場で50社以上にいたります。これを日本企業イジメと考えてはいけません。なぜなら、どの国の企業もおなじく規制の対象となり摘発されているからです。

じっさいに、サムスン、ヒュンダイ、フォックスコンなども摘発を受けているのです。さらに全体では、習近平政権で、これまで6万社が工場閉鎖にいたりました。おそるべき数です。

この内容は、中国の「環境保護法」によります。排水や排気を調査し、基準以上の排気物を出していないかを見るもので、しかも抜き打ちで検査が行われます。さらに、これまでは中国では地方の行政に、なんとか賄賂(あるいはそれに近いもの)を提示すればよかった側面がありました。しかし習近平は、中央から、検査員を派遣して調べるといった徹底ぶりです。

そもそも中国では排ガスをはじめとして、さまざまな環境汚染が問題となっていました。とくに、山西省、河北省などです。これでは経済の健全な発展が阻害されると思ったためか、いよいよ当局が真剣に取締りをはじめたかっこうです。

日本企業は、基本的にクリーンな工場設営を心がけてきました。しかし、これまでのあまりに行政がずさんだったことから、「真面目に取り組むよりも、賄賂が早い」といった風潮を生んできました。問題は、習近平政権がやっていることに、日本企業がいまだに理解できていないことです。つまり、彼はガチで取り組もうとしているのです。

日本にある本社は、まだこの中国の環境対策を真剣に考えていません。「賄賂でもやっておけ」という態度が大半です。しかし、いまは賄賂の文化が消えつつあり、根本対策を考える必要があります。

さらにやっかいなのは、日本企業の中国工場は問題がなくても、サプライヤの問題があるケースです。地元の中国企業から調達している場合はよくあります。その原材料メーカー(たとえ地元資本であっても)が、摘発されたらどうなるか。それは、一気に、生産中断が待ち構えています。実際に、サプライヤが工場停止に追い込まれ、それがゆえに、生産を止めたケースや、あるいは何倍も払って代替材を調達したケースがあります。

もっとも環境対策を講じる機器類を販売している企業は好機のようです。ただ、あらたな中国リスクが生まれています。これは、中国調達を考えるうえで、一つの桎梏です。

<了>

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