調達・購買戦略入門(坂口孝則)

25のジャンルにわけて解説しています。

 

次に、ロジカルシンキング教育についてお話していきたいと思います。これは調達とか購買というよりも、ファンダメンタルスキルに近い話です。ロジカルシンキングとは文字通り、論理的思考のことです。驚くほど多い人が意外に論理的に話すことはできません。論理だけで話すことができれば、それだけでも一流の人といえるほどです。さてそこで帰納法的な考え方と演繹的な考え方について話しておきましょう。

まず帰納法的な考え方は「観察される複数事象に共通するポイントに注目し、無理なく言える結論を導き出す論理展開」といったものです。

例えば、A社がセミナーにたくさんの金を使っていたとします。そしてB社は集合研修などにたくさんお金を使っていたとします。そしてC社は社内のライブラリを充実しているとします。そして、A社、B社、C社、ともに極めて優良な会社とします。したがってその高収益、高利益の源泉を、教育費用の充実に見ることができます。したがって「高収益を作ろうと思えば、社員教育を徹底しなければならない」という主張ができるかもしれません。

数学的帰納法というのがありますが、あれは事象と事象のあいだに共通する内容を見出してそこから法則を見つけ出すものでした。

それに対して、演繹法というのは、「三段論法とも言われる。一般論や法則と、観察された複数事象の二つの情報を結び、そこから結論を必然的に導き出す思考法。前提となる事柄をもとに、そこから確実に言える結論を導き出す推論法」といったものです。これは順を追って説得していく場合に必要です。

この考え方は、AだからB、BだからC……と順を追うものです。例えば、次の「教育を受けたことがある調達担当者と、教育の欠如した担当者がいる」とします。そして「教育を受けた担当者の方が成績がいいのは明らかだ」とします。さらに、「教育を欠如したまま成長してきた担当者の比率が多くなってきた」。したがって「教育費を増額しなければいけない」。こう考えると、違いがわかるのではないでしょうか。

しかし、ここで極めて重大なこといわなければなりません。説明の順番はそれで良いのですが、発想方法としては(慣れてきたら)、まず主張から固め、それを証拠づける根拠を、帰納法でも演繹法でも作ればいいのです。これはかなり危険なこといっています。理論を悪用する方法だからです。

帰納法で考えるならば「社内の教育費を増大しなければいけない」という主張がまずあって、それに関連づけるかのように業績が好調だったりする企業を三社ほど見つけてくるわけです。また、演繹的にいえば、同じく教育費を増額しなければいけない、という主張がまず先にあって、それを補完できるように逆から考えていくわけです。

そこで、ロジックツリーやロジカルライティングに展開していきます。何か主張するときには、慣れるまで、下の3ボックスを作りましょう。

何を言うときにも「理由は三つあります」ということです。もちろん理由が三つに限られるはずはありません。実は四つかもしれませんし、五つかもしれません。しかしながら、これは練習で取り組むのです。なんでも三つで言うように訓練してください。それが言えるようになったら、二つでも、四つでも言うことできるでしょう。

例えば「ご飯が好きな理由は三つあります」とすれば。「炭水化物を効率的に摂れること、日本の農業に貢献できること、何よりも習慣だったこと」などといった感じです。さきの図で、上から下に行くのは「なぜ?」に答えるものです。そして下から上に行くのは、「だから何?」に答えるものです。

これはスピーチ時にも使います。何でも三つと言ってしまうわけですから、たまに話してるうちに二つしか見当たらない場合があります。そんなときも、あきらめてはいけません。例えば「調達部員に必要な素質は何ですか」と聞かれて、あなたはとっさに三つありますと答えます。しかしどう考えても「製品知識と情熱と……」と、二つしか探せないとします。その際は、ゆっくりと、「製品知識と情熱と……。そうです、情熱です」と、二つ目を繰り返して言えばいいのです。

では練習をやってみましょう。

まず、「小池百合子支持する理由を教えてください」。実際に指示していなくてもいいのです。これは練習と思ってやってください。そして例えば、「日本人が長時間労働するのはなぜか」これも三つあげてください。そして次に「猫はなぜ愛されるのか」。これも三つです。

私はラジオに、たまに出るのですが、そのとき投げ掛けられた質問を答えるまで、間隔は2秒しかありません。そのときに「そうですね」と、これで2秒です。この間に答えるのです。

なおライティングの場合は、先ほど申し上げた通り、三つでまとめると美しい表現になりますので、ぜひやってみましょう。それに対して、やや異なるのが会話の場合です。話をふられた時、例えば先ほどのラジオの例でいうと、なかなか三つの内容を語る時間がないかもしれません。そのときはどうすればいいでしょうか。私がお勧めしているのは二ついうことです。そして二つのうち、一つ目はできるだけ短めに言いましょう。一つ目を短く言うことによって、相手を油断させるためです。二番目に本当にいいたいことを、長めに語るのです。

たとえば、「なぜあなたは本を読むのですか」と聞かれたとき、「理由は二つあります。一つ目は、まとまった知識を得られるからです。そして二番目……」と言って、そこに本当にいいたいことを言いましょう。例えば「本に書かれている知識が、実は希少化している」といった内容です。すなわち、これまでは「情報は限られた人しか持っていなかった。しかし今はインターネットなどによってさまざまな情報が、多くの人からアクセスできる状態なっている。となると、逆説的に本離れが進み、本に書いてある内容が一番、希少的になっているからです」とかね。

参考になれば。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい