ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

バイヤーとして品質にどう関わってゆくか 3

前回まで2回にわたって、

● バイヤーにとってなぜ品質が今、重要なのか

● 品質に関心があるバイヤーとして周囲に印象づける

ことをお話しました。実はこのような取り組みだけでも、十分に普通のバイヤーと異なる印象を周囲に与えることができます。それだけバイヤーにとって品質とは遠い存在であることの裏返しなのです。かなり多く「QCD」と口にしているはずなんですけどね。

今回はバイヤーの典型的な2つの業務の中に、品質への取り組みをどのように取り込んでいくかについて述べることにします。典型的な二つの業務とは

1. 新規サプライヤーの採用

2. サプライヤーの(継続)評価

です。これらのプロセスの中に、これまでバイヤーとして品質に興味を示したことで、周囲とはちょっと違った存在となった自分の地位を、より一層確固なものとするためのアクションです。

まず新規サプライヤー採用時点での品質への具体的なからみ方です。

新規サプライヤーを採用する際、サプライヤーの品質に対する取り組みは、当然ながらフォローの対象となりますよね。品質管理システムの評価や、初回納入品の検査といった形で、否応なしに「品質」への取り組みを行な うことになります。売り手/買い手共に品質への関心が高いプロセスです 。バイヤーとしては監査や検査のアレンジャーとしての位置づけが強いかおしれません。しかし、せっかくその場にいるのですから、当事者としてより大きな付加価値を生む行動が求められます。それでは、バイヤーとしてどのように品質への関わりを行なう のか。

実際に監査や試作品・初回納入品の検査を行なう段階とは、品質以外の部分では「発注することが可能」であることを前提としているはずです。 会社としての信用力や、見積金額の評価を行なっているはずです。もしかすると、ここまでのプロセスは設計や技術部門といった要求部門が主導しているかもしれませんね。 その場合は、要求仕様への対応可能と担保されているはずです。ここでは、品質監査や検査を行なう迄のプロセスにフォーカスします。

新しいサプライヤーとのコンタクトを始めた段階。バイヤーとして発注することができるかどうかとの初期評価をおこないませんか。その初期評価に際してサプライヤーを訪問することもあるでしょう。その時にぜひサプライヤーの品質の責任者からも話を聞き いてみてください。もし、サプライヤーを訪問する機会がなければ、バイヤー企業へ品証担当者に訪問してもらえるように働きかけたり、品質に関する質問状へ回答してもらったりします。質問状であっても、面談の上での聴取であっても、深い内容は必要ありません。次のような内容で、サプライヤー候補の品質に関する情報を収集します。具体的な評価ポイントも合わせご覧下さい 。(次の内容は機械部品サプライヤーに関する初期評価の内容です)

(1) 品質方針

社方針に品質方針、品質目標が策定されているか?

→ 社内に品質目標の掲示があるかどうかを見てバイヤー自ら確認

(2) 品質方針の展開

品質方針が各作業者の実施内容に分割され、理解されているか?

→ 全社目標→部門目標→個人目標への落とし込みをおこなっているかどうかを聴取内容によって判断

(3) 品質に関する標準整備

品質に関して、必要な標準があるか?

→聴取による確認。できれば存在する文書のリストの有無を確認(詳細は求めなくても良い)

(4) 標準どおりの作業

社内標準どおりに作業が実施されているか?

→標準の有無を聴取によって確認

(5) 品質管理の能力

品質管理を組織的に実施し、不具合品の市場流失を食い止める仕組みがあるか?

→品質管理システム、具体的にはISO9000シリーズを取得していれば有りと判断する 。取得していない場合は、どのように品質確認をおこなっているかを確認する

(6) 図面、スペックの変更管理

図面、スペックの変更内容を現場へ伝える仕組みがあるか?

→聴取による確認。設計変更がどのように現場へと展開されるかといった質問

(7) 計量管理(校正)の実施

計量管理(校正)が実施されているか?

→これは単純に実施しているか否かを聴取で確認

(8) 品質に関する教育

品質に関する教育が、全従業員に行われているか?

→これも行なっているかどうかを聴取により確認。している、と確認が合った場合には、具体的にどんな教育を行なっているかとの質問をする

あくまでもバイヤーの、初期段階での確認です。繰り返し申し上げますが、あまり深く詳細を聴取する必要はありません。はい、いいえで回答がもらえれば成功です。 詳細の確認は、それこそ監査の段階で実施すれば良いのです。

時間を費やして入手した回答です。当然、利用します。利用方法は次の3つです。

① 上位者へ報告する

② 関連部門、特に要求部門と自社の品証部門があれば情報シェアする

③ 監査・試作品や初回品の検査に際して、サプライヤーへフィードバック

①は会社の業務としておこなった訳なので必要な情報シェアです。②は、多くのケースはこの段階では報告相手にとって不必要な情報かもしれません。 しかし、内容よりも調達購買部門として、バイヤーとして品質確認をこの通り行なっているぞ、と示す意味。そして、実際に評価するとなった段階では、有用な事前情報となるはずです。そして③。これ は、これほどの質問でも相手の弱い部分を浮き彫りにします。監査や検査の前にサプライヤーに対して「ここは重点的にみる」という事前情報に活用します。

上述のような動きは、社内外の関係者に品質へ興味を持っているとの印象を与えることができます。そしてなにより、このようなアクションを通じて、実際に問題のあるサプライヤーの採用を抑止することも可能です。監査や試作品の評価を行なって、結局採用できない場合、それまでに費やした時間と手間が無駄になります。営業や調達・購買部門の場合は、そういった有益 に無駄な時間とコストも一定の範囲であれば許容できます。ところが品質保証部門とは、そもそもそのような時間と手間を許容できません。このようなバイヤーの品質に関心を持つことで生まれるアクションは、社内関連部門の無駄な動きを抑制することに も繋がり、さらには全社的に効率的な動きへ貢献することになるのです。バイヤーが品質に関わってゆくことは、決してバイヤーのためだけではないのです

<つづく>

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