ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●決定版サプライヤーマネジメント 17

前回は、受注生産品の調達に関するサプライヤーのカテゴリー分けをお伝えしました。今回は、それぞれのステージでのサプライヤーとの関係の継続方法です。

これまで量産品と受注品の2つに分けて、サプライヤーのカテゴライズをおこないました。関係の継続方法は、次の通りです。

1. 非定期購買

現時点では、あまり時間を割いていないサプライヤーといえます。時間を割いていないために、実は双方の理解に食い違いが起こる可能性も高いカテゴリーともいえます。非定期に都度対応なので、やはり取引の都度、諸条件を確認します。取引に必要な要領書をその都度配布して、最低でもサプライヤーに確認します。必要であれば、前回の取引と比較して、納入関係の手続きに変更があった場合には、バイヤーから説明することも必要になります。(当然、そういったことはバイヤーとして理解しているとの前提です)

このカテゴリーに分類されるサプライヤーは、あまり時間をかけるべきではありません。したがって、伝えるべき内容を、漏らさずに伝え、理解させるための文書やツールが必要です。これからより深い関係を持つサプライヤーと、効率的にリレーションを構築するためにも、どのサプライヤーにも同じく必要となる、取引に必要な要領を明記した文書やツールを準備します。サプライヤーとの良好な取引の基礎的な条件となる最低限のリレーション構築を、まずこのカテゴリーのサプライヤーと実現できなければ、この先のより高度な関係は、望むべくも有りません。

また、このカテゴリーのサプライヤーの中には、将来的に関係の強化をしなければならないサプライヤーも含まれています。現時点では非定期購買であっても将来的にどのように推移するか。より関係を強化すべきポテンシャルを持つサプライヤーの存在があることも意識して対応する事が必要です。

2. 購入見通し(Forecast)の共有

非定期購買より少し提供する情報が増えます。基本的には、非定期購買のサプライヤーと変わりませんが、需要の発生の都度連絡をするのでなく、情報は定期的に提供するサプライヤーです。

ここでも、より上位に位置されるサプライヤーとの比較では、コミュニケーションの量は多くありません。したがって、限られた時間の中で需要見通しの情報を確実に伝えることが必要です。またあくまでも「見通し」ですので、その情報をサプライヤーが受けて後、どのように処理されるのかについては、あらかじめ確認が必要です。サプライヤーによっては、見通し・フォアキャストではバイヤー企業の希望する条件での納入は難しいといったケースも想定されます。重要なのは、「フォアキャスト/見通しでは条件を満たすことが難しい」とバイヤー企業側に伝えることです。そのためのフォアキャスト/見通しでもあるわけです。

また、フォアキャスト/見通しを信じて、サプライヤー側のリスクで手配をおこなったものの、需要側=バイヤー企業側の都合で、購入しなくなった事態への対処も想定する必要があります。一般的に考えれば、フォアキャスト/見通しです。バイヤー企業側に買い取り責任は発生しません。しかし、サプライヤーによっては、そのようなバイヤー企業の対応に納得しないケースも発生するでしょう。また、一度そのような事象が発生すれば、以降フォアキャスト/見通しでの手配着手は難しくなります。ルールはルールとして存在するとして、そのような難しい事態への対処としては、そのサプライヤーとの関係の将来性、これから述べるサプライヤーと比較して少ないであろう購入頻度であっても、今後どうなっていくのかを見極める事が必要になります。サプライヤーとの将来的な関係を見極めた上での費用対効果、具体的には発生した在庫費用の負担をするかどうかを判断することが必要です。

3. バイヤー企業向専用品の納入

このカテゴリーの場合、これまでの2つのカテゴリーと異なり、サプライヤー社内のリソースを使う割合が拡大しています。サプライヤーの技術・設計部門が、バイヤー企業側のニーズを踏まえた製品を「専用品」とするために、技術的な検討を要するためです。

ここで重要になってくるのは、そのようなサプライヤーの技術的な検討が、単発的なものなのか、それとも継続的に必要になるかどうかとの点です。また、これまで継続的であったといっても、今後も同じように継続的であるかどうかについて、検討が必要です。ここで「継続性」という言葉を使いました。サプライヤーとの関係の継続には、実際のビジネスでの継続性がベースになります。加えて、このカテゴリーに分類する場合は、バイヤーと営業パーソンだけではない、それぞれの関連部門との関係が成り立っている時期です。ここでは、各部門同士の関係の状態を掌握し、今後の事業の方向性を踏まえた上で、サプライヤーをどのようにマネジメントしてゆくかを決める段階です。

次回は、もっとも重要なサプライヤーとの関係についてです。

<つづく>

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