調達・購買担当者の意識改革~パート13「値上申請対抗フォーマット」(坂口孝則)

・値上げはすんなりと受け入れるべきか、拒否すべきか

解説:調達・購買担当者のイヤな仕事の一つは、サプライヤからの値上げ申請受理です。ここで、私たち調達・購買関係者は、ただただ値上げを受け入れるべきでしょうか。あるいは、ただただ拒否すべきでしょうか。または、理屈抜きに妥協点を見つけるべきでしょうか。答えは中間にあります。まずは、冷静に特定材料がほんとうに値上がりしているか確認すること。または生産数量が極端に少なくなったための値上げであれば、ほんとうに発注数量は激減しているか確認することです。そして、次にその上昇分はサプライヤ努力で吸収できないかを確認すること。さらに、契約条件等を確認したうえで、適切な処理を行いましょう。

意識改革のために:これまで牧野先生が値上げ対応について連載されていました。今回の私の連載では、それらを包括しつつ書いてみます。

まずは、このファイルをご覧ください。

http://goo.gl/qR2fRO

ファイルの上側がこうなっています。

<クリックすると拡大できます>

ファイルの下側はこんな感じです。

<クリックすると拡大できます>

これはサプライヤから材料市況上昇によるコストアップを依頼された場合に使うものです。記載しているとおり、黄色箇所を入力してください。まず、重要なところは、ここです。

「見積り基準年月 10年1月」
「改定基準年月 11年7月」

と書いているところがありますよね。ここは、いつの見積りに対して、いつの市況を当てはめたいと(サプライヤが)いっているかを明らかにします。当然ですけれども、「最近、材料が値上がりしているんですよね」と聞いただけで、対応しようとするひとがいます。でも、これはおかしい。いつを起点としているかで、いまの市況との差異が違うはずです。この場合であれば、2011年7月と、2010年1月では、ほんとうに市況に差異があるのかを問わねばなりません。

次に、

「単価 100.00 /円」
「うち材料価格 30.00 /円」

とあります。ここでは、材料費がいくらくらいかを見ます。これまた当然ですけれど、材料費がもともといくらだったか不明なら(ほんとうに値上げするにしても)値上げ幅がわかりません。

ここまでやったあとに、その期間のデータベースにアクセスして、材料の上下幅を見てみましょう。そこで、まずは冷静に特定材料が値上っているかを確認します。もっとも便利なのは、日本銀行が発行している物価(PR)です。ここを見れば、多くの材料市況推移がわかりますので重宝できます。

http://goo.gl/pz3EvF

いろいろとトライしてみてください。すると、時系列データをダウンロードできます。それを、さきほどのエクセルの下に貼り付けます。そうすると、グラフが自動的に完成します。

さて、こう見ると、値上申請を受けた材料は実際に値上がっているでしょうか? あるいは見積り基準年月と比べると、あまり上昇していないでしょうか?

・市況は上昇しても、ただし、それが単純に値上がり幅ではない

ただし、この調査によって市況がやっぱり値上がっていても、それを単純にコストアップして良いはずはありません。ここでは、サプライヤの努力分を問うべきです。なぜか? サプライヤとバイヤー企業は、基本取引契約書を締結しているはずです。そこには、多くの場合、調達品の安定を掲げています。通常、調達品の安定といえば、納期の安定と思うでしょうが、拡大解釈すれば価格の安定と捉えられなくもありません。

さらに拡大解釈すれば、もし材料価格の値上があったとしても、サプライヤの努力で基本的にカバーすべきなのです。とまあ、そこまで強い表現ではなくても、サプライヤがカバーすべきと強調すべきでしょう。次にご紹介するのは、「バイヤー企業からの発注数量が少なくなったので、値上げさせてください」といった場合の例です。もちろん、これは発注数量減だけではなく、材料費による値上げにも共通するものです。

そこで作成しているのが、次の表です。サプライヤ努力での吸収を促す領域を明らかにしてほしい、と迫りましょう。

http://goo.gl/B6gv8b

<クリックすると拡大できます>

これは、さきほど書いた通り、サプライヤ努力を促すものです。項目でいうと、次の通りです。

[値上げ要因]
材料投入段取り
設備段取り
作業段取り
金型段取り
物流

[値下げ要因]
材料投入段取り改善効果
設備段取り時間改善効果
作業段取り時間改善効果
サイクルタイム改善効果
金型段取り時間改善効果
工程自動化効果
省人化効果
検査工程等省力化効果
複数台持ち化効果
仕損費低減効果
積載効率向上効果
外注費低減効果
積載効率向上効果

つまり、値上げ要因は(たとえばこの場合でいいますと、受注数減少により)、「材料投入段取り」「設備段取り」「作業段取り」「金型段取り」「物流」など、さまざまコストアップ要因はあるでしょうけれど、「材料投入段取り改善効果」「設備段取り時間改善効果」「作業段取り時間改善効果」があって、むしろコストを下げる要素もあるのだというわけです。

市況が値上がっているというけれど、それに対してどれだけ努力しているんだ、ということです。これは問うべき点です。なお、私は現在、各企業の調達・購買担当者に販売する立場でもありますけれど、簡単に値上げはしません。自社努力で外部要因の値上げを吸収すべきと考えるからです。だって、仕事をとるときには安く見積もりを出して、仕事をとったら値上申請するなんてムシが良すぎますよね?

・その他チェックシート

また、その他の値上申請を厳密に考えるチェックシートを掲載しておきます。

http://goo.gl/lG2ocP

1~5の観点をあげていますが、重要なものだけピックアップします。

1.契約観点
. 基本契約書等で価格安定性を謳っていないか
. 基本契約書等に外部要因を価格に反映させない旨の条件を謳っていないか
. そもそも見積り有効期限内ではないか

2.事実観点
. サプライヤの値上申請項目コスト上昇を示す具体的な資料はあるか
. 実際にサプライヤ経営指標は悪化しているか、コスト上昇分を内部努力で吸収できていない証拠はあるか

3.採用時討議観点
. 採用時点で材料市況が価格に影響を与えない旨、討議(確約)していないか

4.取引履歴観点
. 過去の値上ルールはどうなっているか
. 材料が下落基調のときには逆に値下げしてくれているか

5.交換条件観点
. 他製品が競合中など、値上阻止に有利な情報はないか

このうち、1.「そもそも見積り有効期限内ではないか」と、4.「材料が下落基調のときには逆に値下げしてくれているか」は特に注意しておきましょう。有効期限なのに値上申請は許されず、また、値上げだけ申請してくるなんてご法度ですよね。

・それでも妥当なときに

さて、ここまで値上申請の受け止め方についてお話ししてきました。そして、それでもなお、値上げ幅が妥当だったときにどうするか……。

これは議論がわかれるはずです。ただ、ここで私の意見を述べておくなら、「適正な値上げをするべき」となります。これはコスト削減を宿命とする調達・購買部員にとっては受け入れがたいはずです。ただ、妥当・適正な価格査定を信条とする以上は、やむなきことです。

私たち調達・購買機能の役割は、「適切に買う」ことです。サプライヤに赤字のまま販売してほしいとは思いません。であれば、彼らが市況値下がりのときに、価格を下げてもらうのであれば、逆に市況上昇の際には、値上げも(繰り返し、厳密な査定のうえで)認めるべきでしょう。

価格査定とは「メッセージ」です。おそらく、値上げであっても、厳密を求める行為は、それだけ真摯な態度を表明することであり、中長期的にはコスト低減に寄与するはずです。少なくとも、私はそう考えるべきだと思うのです。

(了) 

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