過去に鞭を入れられる今の自分とバイヤーの発信力(牧野直哉)

私は、あるきっかけにより「調達マンに必要なスペック」をまとめたことがあります。スペックとは、やり方の順序を記した文書だったり、建築・機械などで、注文品の内容や図を記した文書だったりしますね。バイヤーに求められるものを示したわけです。原文は次の通りです。

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1. 調達マンに必要なスペック(スキル・経歴)

(1) 経歴

・ 経歴としては、どこのセクションを経験しても、プラスになる部分はある。要は、不足するスキルを認識して、補うことができる人間。不足をどう判断するかは、迷った時にほかならない。その時に、自分で苦しんでも、周囲に助けを求めるでもいいので、活路を見いだすことができればOK

(2) コミュニケーションスキル

・ 人の話を聞くことができる

・ 自分の考えを言葉で相手に伝えることができる

(3) ITスキル

・ パソコンが使える能力(ワード、エクセル、パワーポイント、アクセスは、エクセルの処理能力が上がっているので、個人的には必要ないと考える)

・ ネットを活用した情報検索能力

・ 検索情報の処理能力(情報の精度及び本質を見抜く能力)

・ IT万能と思わず、ITのデメリットを理解できる。パソコンを使用することが、目的になってはダメ(意志決定は人間)

(4) 問題形成能力

・ 私の経験で言えば、今のマネジメントは問題提起ができていない。なので、実務レベルで、何がどのように問題なのか、を明らかにできるかできないかが、後の問題解決に通じる意思決定に大きく影響する

・ なぜなぜ分析とか、今の状況を箇条書きで、5W1Hをキーにまとめる、といった「切り口」を自分で持つことが必要

・ 以上2つの「自分の問題解決」は、勤務先の上司からの指示に答えながら行なう。アホでも、上司には人事権等権力を有しており、後に自ら形成した問題を提起する際に、取り上げてもらえる環境整備になる。

(5) 意志決定能力

・ 選択肢を見いだすことができる

・ 選択肢の中から、自分で選択し、決定を下すことができる(意思決定権の有無は別問題。意思決定を得たからといって、決定できない。平社員は係長の決定を、係長は課長の、といった一つ上の職責の意思決定を行なうことが重要)

2. 優秀な調達マンを一言で言うと?

・ バランス感覚がある

・ 公私のけじめがつく人間

・ 仮説立証と検証スキルを持つ人間

・ 適度に世の中に身をおける人間(他人との交わり)

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上記の文章は、正直可もなく不可もない内容ですね。今から6年ほど前に書いたモノだが「今のマネジメントは問題提起ができていない」なんて、随分と生意気な事を言っています。しかし今、マネジメントを実際に行なう立場で、過去の自分から鞭を入れられた気がしています。そして今の自分に痛かった過去の自分の発言は、上記理想に対して、同じく現状を語っていた以下の部分である。恥ずかしながら、またも当時のままの原文でお伝えする。

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→ただし上記は相当な理想論で、実際に自社で実践できている内容は、残念ながら皆無に等しい。理想が現実にならない理由は、

① 社内的な資材部門の地位の低さ(たたき上げを極端に尊重する雰囲気と、マネジメント層との認識の乖離、ロジカルマネジメント志向と浪花節志向のその場その場での使い分け)

② 資材=買いたたくとの短絡的思考による部門内人事評価の問題。他部門からの期待も、要はどれだけ安く買いたたけるか。ロジカルな購買を知らない社内関連部門

③ バイヤー自身のお客さん意識による、責任感の欠如

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上記の現実を要約すると、

● 社内地位

● バイヤーの意識

であろう。バイヤーに必要なスペックをまとめて6年もの月日が経過し、社内的な地位は未だ同じようなポジションを彷徨っています。そして、バイヤーの意識はどうでしょう。私の会社外での主な活動の場となっている購買ネットワーク会では、意識の高いバイヤーと話をすることができます。しかし、日本に存在するであろう40万人のバイヤー(当社調べ)を母数とするとき、購買ネットワーク会のメーリングリストでも未だ数百人。パレートの法則で考えてみても、40万人×20%=8万人。う~ん、まだまだ足りないですね。未だ道半ばといったところです。

その購買ネットワーク会。今度関東、関西、中部に続いて、中四国での開催が決まりました。昔、社会科の授業で習った日本の工業地帯を表す、太平洋ベルト地帯にそっての拡大が非常に興味深いですね。これで、確実に日本のバイヤーの過半数以上が日帰りで参加できる場所に、購買ネットワーク会が存在することになるのです。

私は関東を中心に、一回/月以上の割合で、バイヤーが集まるイベントを開催しています。数多くやれば良いというわけではないけれど、ほぼすべてのイベントで参加した皆さんからの情報発信を心待ちにしています。形はいろいろです。実際に人前で話をしたり、アンケートの形式であったり。今回、皆さんにお伝えした「調達マンに必要なスペック」で、もっとも不足していたのは、発信力への言及です。この「発信力」とは、コミュニケーションの相手へ自分の意思を伝えることではありません。いうなれば、バイヤーとしての自分を、私を含めたバイヤーに対して行なうことなのです。最近のイベントで、ご参加の皆さんから寄せられるご希望に「双方向」をキーワードとした内容が多くなっています。それは、双方向を実現させるだけの発信力があるとの主張に他ならないわけです。各地域で行なわれている購買ネットワーク会では、発信力のお持ちのバイヤーに、いつでも発信できる場所を提供できるわけです。

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