会社を設立してからの地獄の日々~連載③(坂口孝則)

会社を作ってから1ヶ月目に、私は、それまで継続していた業務に、一斉に「値上げのお願い」をしました。いま思えば、恐るべきことです。仕事がなくなる覚悟でした。ただ、それでも、仕事の効率を上げるためには、正しい選択だったと思います。

たとえば、ある月刊誌は、一回の連載で1万5000円でした。それを私は、当時のメールによると、3万円にしてください、と申し入れたようです(笑) しかし、効果はあり、次から2万円になりました。もちろん仕事を増やすのも大事ですが、既存の業務量でアウトプットを最大化するのが重要です。

その他、あまりにも焦っていたのか、さまざまな会社に企画書を勝手に送りつけているようです。ただ、それでもやらないよりも、やったほうがよいのは間違いなく、一つ長期連載が決まっています。これはビジネス雑誌に記事を寄稿するというもので、なんと私は、当時に購読していた雑誌の奥付から住所を知って、そのまま企画書を送付したようです。動けばいろいろと打開策が出るものですね。

ここで、一つ、思い出深い事件がありました。会社を設立してから、すぐ、引き合いのあった会社に講演に出向いたときのことです。請求書をもってきてください、といわれたので、もっていきました。そうすると、「やっぱり、値引きの交渉をしたいので、受け取れない」といわれました。驚きました。講演を依頼した人間がやってきて、そして、講演をする前にそんなことをいうのです。すごい精神構造だと思います。

このときは、さすがに帰ったほうがいいだろうか、と考えました。しかし、仕事を一つでも多く取りたい時期です。私は、いろいろ考えながら、その場にとどまり、講演をしました。私の気持ちが収まらなかったのか、講演の際に「さきほど、異常な交渉を受けました。講演前の私に価格交渉をしたいというのです」と暴露し、笑いを誘いました。ただ、そのときに、担当者は、ずっと嫌な顔をしていた記憶があります。

そして、次に、妙な団体から講演依頼を受けました。あまり細部を語れません。ただ、「ここで講演をすると、PR効果があるから、安くしてくれ」というものでした。これまた考え、しぶしぶ、合意しました。

しかし、その後のPR効果はほとんどありませんでした。私はこれ以降、「ここで講演をすると、PR効果があるから、安くしてくれ」という発言をほとんど信じていません。できれば「効果も、お金もありません。でも、あなたの話を聴きたいんです」といってほしいですよね。

(つづく)

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