連載「調達・購買戦略入門」(坂口孝則)

25回にわたる連載です。調達・購買戦略の肝要を順に説明しています。

・OEM/EMS/BPO戦略

次に調達・購買部門の設定を考えていきたいと思います。

ここでは大きな問題として、調達・購買部門業務を、自分たちの組織内だけでやってしまうのか、あるいは外部に委託するかといった分岐があります。たとえば生産自体を外部に任せれば調達機能は不要になります(もちろん自社が調達してあげて支給するケースも考えられなくはありませんが)。

ただ、生産を自社でやるとしてたら、調達機能のみを外部に任せるといったこともありうるでしょう。また、任せるといっても、完全に任せてしまう場合もあるでしょうし、あるいは付加価値の低い業務だけを任せるという方法もあります。この際に、よく使われる概念は、「コア業務」「ノンコア業務」といった分類です。コア業務は、いわば「自社でやらねばならない、あるいは付加価値の高い業務」と定義できます。いっぽうの「ノンコア業務」とは、逆ですから「自社でやる必要はかならずしもない、あるいは付加価値の低い業務」と定義できます。

・SSCとBPO

外部委託先ですが、よく見られるのはSSC(シェアードサービスセンター)とBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)と呼ばれるものです。

SSCは図で示した通り、グループ内で共通している業務を効率化するために子会社などを作り、そこで統括した業務を実施することです。それに対して、BPOは、グループ外の会社に業務を投げます。

さらに細かい話をすると、SSCは自社グループの業務だけを行うのか、あるいはグループ外にも積極的に外販しようとするかでもわかれます。SSCが外販をするのですから、内部から見たらSSC ですが、外部から見たらBPOになります。

・SSCの効果はあるか

SSCは各グループ会社の業務を統一して行います。したがって効率化が図られるわけですから、トータルの人員は減ってしかるべきです。しかしながら、日本の特有の問題として、従業員の数をなかなか容易に減らすことができません。SSCを活用している企業も全体の人員構成が変わるというよりも、その人が減らないことを前提としています。新たな仕事を獲得する、そしてその仕事により新たな付加価値を産もうと注力しています。

実際に、いくつかの企業をヒアリングしました。人員削減効果を謳う企業はほとんどなく、やはり業務を広げることによってコスト削減の効果を創出するようです。あるいは間接材などの取り組みを始めるといった企業が大半でした。

そうなるとSSCだけで見たときの削減効果はないのかいうと、面白い意見がありました。各調達部門が同じ場所(SSC)で働くわけですから、不動産賃料等の削減は効果があった、というのです。

・BPOの導入ステップ

次にBPOです。

BPOを導入するときに忘れてはならないプロセスがあります。それは「自分たちがやっていることを標準化したり、あるいは文章に落としたりして、他で代替できるようにすること」です。いわば属人的な業務から、非属人化を目指す必要があるわけです。

なぜならば、そうしないと、外部に委託しようとしても委託することができません(多くの日本組織がここでつまずいています)。そして、そののちに、自分たちがやっている業務のどれか価値を生むのか、そして外部に委託しても構わないのかを見極める手順となります。

考えにくいことですが、理論上は、調達・購買業務はすべてBPOへの委託対象となります。すべての業務が付加価値を生まないのだとしたら委託することは可能となります。

BPOの価格決定には三つのモデルがあるとされ、固定方式、ターゲットコスト、バリューベース契約方式というものがあります。

この細かな契約スキームは覚える必要まではありません。繰り返すと重要なのは、自社組織が何に取り組むべきかという戦略と、その基礎となる分析です。

 <つづく>

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