バイヤー現場論(牧野直哉)

●社内関連部門と調達・購買部門の関係

調達・購買部門と、社内関連部門はどのような業務をすすめているでしょうか。次の図では、調達・購買部門を中心にした関係を図式化しました。社内の代表的な部門を、大きく3つに分類します。

① 前工程=購入要求部門

購入要求部門は、購入にまつわる「要求」を調達・購買部門へおこないます。営業/サービス部門と、設計・技術部門は、お客さまのニーズを根拠にした要求。生産管理は、製品の数量をベースにした、サプライヤからの購入数と時期の要求。その他、部門内で必要な購入品は、社内すべての部門がニーズと数量、必要な時期を要求します。調達・購買部門では、各部門からの要求を、円滑に実現する責任を負っています。その一方で、要求内容が厳しかったり、実現が難しい内容だったりする場合、要求内容の改善や見直しをおこなわないと、責任がまっとうできなくなります。したがって、購入要求部門には、なにか問題がある場合に「言い返せる」関係が必要です。

② 後工程=ユーザー部門

ユーザー部門は、調達・購買部門の実行内容の結果によって、自部門の責任をまっとうします。製造部門は、サプライヤからの購入品によって、自社の製品を生産します。物流部門は、サプライヤから受け取った購入品や半製品を社内の適正な場所へ運んだり、完成した製品をお客さまに届けたりします。購入品や半製品、完成品の在庫を管理する場合もあります。そして、購入品や完成品の品質を確保するのが品質保証部門です。その他、①と同じく、購入品を使用するユーザー部門も含まれます。もし購入品に、QCDにまつわるトラブルがあった場合、後工程における業務に支障を来します。調達・購買部門では、ユーザー部門に使い勝手の確認や、問題点のフィードバックを受ける仕組みを作って、サプライヤとおこなう改善活動のネタを収集します。

③ 管理(サポート)部門

調達・購買部門のみならず、社内各部門が円滑に業務を進められる環境整備をおこなう総務部門、各部門における人材を確保し管理する人事部門、そして、社内全体の予算と発生コストを管理する経理部門です。これら部門は、社内の各部門と、さまざまな形で関わりをもっています。調達・購買部門へコスト削減の期待が大きな場合は、経理部門と緊密に連携しつつ業務を進めなければなりません。また、調達・購買部門が最大のアウトプットを生みだすためのサポートを求めます。

企業における調達・購買行為は、購入に必要な3つの意志決定を、それぞれの部門で分担しておこないます。

購入品やサービスの仕様・機能・内容を決定する:設計・技術/購入要求部門
購入数量や時期を決定する:生産管理部門/購入要求部門
発注するサプライヤと価格を決定する:調達・購買部門

調達・購買部門は、みずからの責任はもちろん、社内関連部門で発生する調達・購買関連業務をサポートしなければなりません。まず、各部門業務内容を理解し、活用できる業務やアウトプットを探します。調達・購買部門の成果を最大化するために、各部門からのサポートを得るためにも他部門の業務内容の理解は必要です。調達・購買部門の業務遂行に有効なテイク(Take)を得るために、各部門に対して、どんなギブ(Give)を提供するかを学びます。

1.営業/サービス部門との関係

営業は、顧客に対して自社の製品を「販売」します。一方、調達・購買部門は、サプライヤから「購入」します。「販売」と「購入」で、社内でも対極に位置すると思われる部門です。しかし、調達・購買部門の共通点である市場との接点部門の立場を生かして、営業部門が握る情報を調達・購買業務に活用するために、積極的に良好な関係を構築します。

また、サプライチェーンのプロセスでは、前工程のさらに前工程の位置付けです。営業から入手した情報は、そのまま調達・購買部門の業務に活用できません。活用には、情報の内容を分解し、調達・購買部門に役立つ部分を分析し抽出します。

① 営業部門との共通点

営業部門は、自社製品の顧客がいる市場で販売しています。一方、調達・購買部門は、サプライヤが販売活動をおこなっている市場で購入しています。両社は、同じく直接市場に接しています。これは、他の部門にはない重要な共通点です。

表面的には、異なる市場かもしれません。しかし景気動向や市場動向に関する情報が、それぞれに関連性を持つ場合があります。関連性の有無は、お互いの持っている情報を交換しなければ判断できません。

営業部門は、定期的に売上げや商談状況をフォローする場をもっているはずです。そういった場に調達・購買部門も参加し、違った側面から市場動向を理解して、業務に役立てます。

② サプライヤが知りたい情報とは

営業部門がもっている調達・購買部門に役立つ情報は、自社の売上げが拡大するのか、維持なのか、あるいは減少するのかといった、見通しに関する内容です。調達・購買部門がサプライヤにする話は、どうしてもコストや納期、品質の話になります。サプライヤがもっとも興味を持っているのは、将来どれくらい発注してもらえるのかです。

近い将来の見通しなら、定期的にサプライヤへ提供し、生産準備に活用してもらいます。サプライヤが知りたがるのは、少し先の未来です。購入品のリードタイムにもよりますが、年度の前半であれば後半。年度の後半であれば、翌年の見通しです。どんな製品がどんな顧客に、どういった魅力で売れる可能性があるのかを、営業から入手した情報を伝えます。そんな情報を聞いているサプライヤの目の色の変わり様に驚くはずです。

③ ノウハウの補完性

営業部門は、どうやって高く売るかを日々考えています。一方、調達・購買部門は、どうやって安く買うかを考えています。売ると買うは異なり、考える内容もまるで逆です。しかし、本質は、自分に有利な価格を相からどうやって引き出すかがテーマです。調達・購買部門が、シングルソースのサプライヤに手を焼いているなら、なぜ困っているのか手を焼いている相手の優位性は、営業部門に参考になり、優勢構築のヒントになる可能性をもっています。また、営業しやすい顧客の特徴をヒアリングすれば、バイヤーの反面教師になります。対極に位置するからこそ、お互いにアドバイスが可能です。自社の営業部門から購入する可能性はゼロです。お互いの本音をぶつけてノウハウを蓄積し、スキルアップを目指します。

(つづく)

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