ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
●決定版!サプライヤーマネジメント論
バイヤーの仕事とはなんでしょうか。私の定義は「事業活動に必要なリソースで、社内に存在しないものを外部から入手すること」です。この定義でいう「外部」とはもちろんサプライヤーのことです。外部から事業に必要なリソースを確保する一連の活動の中で、サプライヤーをどのように遇してゆくかは、もっとも重要なバイヤーの仕事です。
この「ほんとうの調達・購買・資材理論」では、サプライヤーマネジメントについてこれまでも論じてきました。今回は、これまで論じたサプライヤーマネジメントに関する内容を踏まえて、いったいバイヤーはどのようにしてサプライヤーをマネジメントすれば良いのかを整理します。
これまでと同様に、まず「サプライヤーマネジメント」について、定義します。
「独自の判断基準によってサプライヤーを評価し、評価結果によってサプライヤーを区別して扱うこと」
バイヤーにとってサプライヤーは非常に重要です。したがい、今回はこの定義について論じることにします。
1. 独自の判断基準
サプライヤーを評価する際の「判断基準」は大きく分けて2つ存在します。基準が変化するか、しないかの違いです。まず、変化しない部分について述べます。
最新のISO9001に、次のような記載があります。
7.4 購買
7.4.1 購買プロセス
組織は、規定された購買要求事項に、購買製品が適合することを確実にしなければならない。供給者および、購買した製品に対する管理の方式及び程度は、購買製品が、その後の製品実現のプロセス又は最終製品に及ぼす影響に応じて定めなければならない。
組織は、供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力を判断の根拠として、供給者を評価し、選定しなければならない。選定、評価及び再評価の規準を定めなければならない。(以下省略)
私が普段お話をさせて頂いているバイヤーの勤務先はISO9001の取得率が非常に高いのです。同じように、本メルマガの読者の皆さんの勤務先でもISOを取得していると仮定して話を進めます。
上記の通り、ISO9001を取得していれば「供給者を評価し、選定しなければならない」わけです。ということは、内容はともかくなんらかの評価項目によって供給者=サプライヤーを評価していることになります。サプライヤーマネジメントで最終的に「区別して扱う」ための第一歩は、評価を行なうことです。ここで「独自の」について考えてみます。
ISO9001を取得している限り、一定の判断基準を既に持っているはずですね。独自といっても、今の評価基準を変更したり、改善したりする必要はありません。現在の評価基準でかまいません。ここでの「独自」とは、あとに話をします。
それでも、自社のサプライヤー評価基準に妥当性の不安のある方、もしくは自社でISO9001を取得していない場合は、インターネットで次の通り検索してみてください。
取引先評価規準 filetype:×××
これは、キーワード「取引先評価基準」で、ウェブ上に存在する×××のファイルを検索する(Google)というものです。ワード、エクセル、PDFをそれぞれ次の通り、そのまま使用できる形(「 」内)で以下に記します。
ワード 「取引先評価規準 filetype:doc」
エクセル 「取引先評価規準 filetype:xls」
PDF 「取引先評価規準 filetype:pdf」
取引先評価基準とfiletype:×××の間はスペースです。サンプルとして上記の3つのスタイルで検索をおこなってみてください。とてもたくさんの、見切れないほどのサンプルが手に入るはずです。妥当性の検証や、自社でサプライヤー評価基準をもっていない場合は、検索結果を参考にしてください。
次に「変化する」部分についてです。
以下は、私が実務で使用するサプライヤー初期評価用のフォームです。私は機械部品のバイヤーを一貫しておこなっています。バイヤーとなって以来、数回内容の一部変更を行なっていますが、基本的な項目は変化させていません。まさに先に記した「変化させない」を十数年実践しています。一方、変化させる部分は評価内容の「重みづけ」です。以下のフォームを例に説明します。
この例では、項目を次の大項目で管理しています。大項目とは次の4つです。
1. 経営
2. 生産管理工程
3. 品質管理
4. 設備加工技術
この4つの項目を
(1) 重みづけを変えて総合的に
(2) 大項目単独で個別項目で
の二つのやり方を、状況に応じて適用して運用します。それでは、重みづけはどのように変化させるのでしょう。これは、前回お話しした「購買戦略」によって変化します。
自社で設定した購買戦略は、どのような内容でしょうか。最近のトレンドでは、グローバル競争を意識したコスト面での優位性確保がもっとも重要になるはずです。サンプルで提示したフォームでは、「1.経営」の部分で、コスト面での評価をおこなっています。コストと同列に戦略的に重要と判断する部分はどれでしょうか。品質や納期といった部分で、どこに重きを置くべきかは、購買戦略によって導かれるはずです。
もちろん、究極的には「どれも重要だよ」ということになります。しかし、自社製品の納期遵守率の向上を経営戦略で謳った場合、サプライヤーを「納期」という切り口で再評価し、実際のサプライヤー選定に反映させなければならないのです。