短期連載・坂口孝則の大企業脱藩日記(坂口孝則)
世間一般で“流通コンサルタント”という印象が強い私。みなさんはご存知のとおり、調達・購買の専門家として多方面で働いています。しかし、自動車メーカーを辞めてから、さまざまな模索時期がありました。当時の話は、さまざまなところで紹介しましたが、あまりホンネをまじえて述べたことはありません。そこで『大企業脱藩日記』と題し、現在までを短期連載としてメルマガに掲載することにしました。
【第11回】
連載も佳境に入るので、キワドイものを書いておこうと思う。それは、私が見聞きした、「独立成功者の愛人事情」だ。私は大企業で働いていた。そうすると、あの課長と受付嬢があやしい、とか、あるいは主任とアシスタントの女性が不倫している、くらいは聞いたことがあっても、それは珍しい数例の一つだったように思う。これらは統計がないので、なんともいえないのだが、会社員と独立しているひとでは、愛人保有比率が5倍ほど異なるように思う。
私は大企業を辞めてから、小企業に入った話は以前に書いた。そのとき、某公共団体から講演に呼ばれた。会社の女性(30代)を連れて行ったことがある。理由はたしか私が講演した内容を書き取ってもらい、何回かのメルマガのネタにしようとしていたからだった。講演が終わって、その女性を含めて主催者側と歓談する機会があった。そのとき、女性がトイレに立った。すると、主催者側の男性(50代)が、「あれは、先生のこれですか」と小指を立ててきたことがあった。驚いた。昭和どころか明治大正の感覚なのか。
しかし、これもそれなりの理由がある。少し成功したら、外車を購入するひとが多い。そして、さらに儲かったら愛人を雇う(雇う、のだ)。たとえば月に30万円か40万円でも払えば、求人でたくさん集まってくる。あるいは、以前から知り合いだった女性を、なんらかのきっかけで愛人にしてしまう……などで、実際に愛人を有するひとが多い。だから、公共団体職員も、おつきの女性を見るたびに愛人と思うのだろうし、実際にそういうケースが多かったに違いない。
私は残念ながら、その小企業のときから現在にいたるまで、会社の女性と肉体関係をもったことがない。と、そう書いて思い出すが、大企業で働いていたときも同じだった。同じ職場内での機会がなかった。しかし、職場外の面白い例でいえば、いまのような仕事に就いてから、キスされそうになった女性が二人いて、一人は取引先の女性、もう一人は講演だったか(シンポジウム)を聴きにきた女性だった。こういう女性とねんごろになって、「いまの会社の条件並には出すから、こっちで働け」と伝えれば愛人化するのかもしれない。
これは私の例ではないが、某コンサルタントは、秘書が愛人で銀座で飲んだときには「独立して近寄ってくる女性と30人は寝たと思う」と豪語なさっていた。また違う某司法書士は、おなじく司法書士(女性)とタッグを組んでいるが、愛人関係にある。もともとその女性司法書士がまったく食えず、彼女に仕事を紹介していった過程で……そういうことになったらしい。オフィス内での出来事を聞くと、昼ドラか官能小説家と思った。さすがにここでは詳細は書かないが。
また中小企業向けの展示会など、かつては行く機会がなかったが、この数年は行く機会が多い。すると、初老(初老とは40歳くらいを指す)の男性と若い秘書らしき女性が、手はつながずに、だけどかなり親密そうに散策する様子をよく見る。愛人関係がすべてではないだろう。しかし、そのうち多くが愛人関係にあるのではないか、と穿ってしまう。
愛人というと派手な感じがある。しかし、これを会社の経費と考えるとだいぶ違う。会計では費用で売上からマイナスする損金と呼ぶ。法人税等で40%が課税されると考えると(ほんとうはこの比率よりも低い)、税金で納めるよりも、愛人を雇ったほうが良い取引というわけだ。だから見た目は50万円を支払っているように思えても、社長からすると、50万円の40%ぶんの20万円は納税が軽減されたと考えれば、30万円で好きにできる愛人ができたようなものだ。
税金を引かれたあとに遊ぶサラリーマンと、税金の計算する前に費用を計上できる企業オーナーとは、だいぶ違いがあったのである。ところで、少し成功して愛人をもったひとと、もたないひと。10年後はどうなっているのか。私は追跡調査するつもりだ。
<つづく>