バイヤー現場論(牧野直哉)
2.上司と話すとき
④NGフレーズ
「メールで送ってあります」
一般的に上司は人数が少なくなります。もし、あなたの上司には、部下が5名いるとしましょう。上司には、あなたの5倍ものメールが送られている可能性があります。したがって、メールは送信されていても、同じように理解しているかどうかはわかりません。過去のメールのやり取りの結果、結論があるわけです。上司であれば、結論と同時に、なぜ、そのように至った理由が気になります。私の経験では、すべてのメールを読まずに仕事をしている人もたくさんいます。
理由を尋ねられたときに「メールで送ってあります」と答えるのは絶対に避けましょう。多くの場合、上司にもメールが送付されています。しかし、上司とあなたでは、経緯の理解度が異なります。多くのメールの中から、理由が明記された一通を探しだすよりも、分かる人に聞くのは当然です。理由を聞かれた時点で、あなたの過去の説明は上司によって不十分な内容であったと考えるべきです。企業内で、立場が違えば、読むメールの内容と、主体的に対応する仕事が異なって当然です。「メールを送ってあります」と答えないで済む先回りした対応を心掛けます。具体的には、結論の根拠を3つ程度の理由にまとめ、箇条書きで付けくわえます。
「前と言っていることと違います」
これも、上司への不満で頻出するフレーズです。実際にこういった局面で、前言と違う指示に途方に暮れる場合もあるでしょう。しかし、よく考えてみます。前と言っている内容が違うから不満に感じるのでしょうか。企業の経営環境は、刻々と変化しています。何らかの変化によって、前言を撤回しなければならない状況は、上司のみならず、バイヤーがサプライヤーに対しても十分に想定できます。この事例は、なぜ変化したのか、その理由がないときに発生します。したがって、前回と今回の言っている内容が違う「理由」を質問します。
思いつき発言
実情を知らずに思いつきで発言をする上司も多いですね。しかし、アイデアは「思いつき」以外の何ものでもありません。思いつきに拒絶反応を起こしたら、それは、あなたの想定外だった内容を、上司が気づかせてくれたのです。とてもラッキーな瞬間です。
しかし、思いつきなので、実態と大きく乖離(かいり)しているケースもあるでしょう。しかし、思いつきを採用できないのかといった分析と検証をおこなえば、リスクが減ったり、より大きな効果が生まれたり場合もあります。したがって、思いつき発言は、立ち止まる瞬間と考え、できるだけ短い時間で思いつきを具体化するかどうかを見極めます。
3.同僚・部下と話すとき
同じ職場や会社の同僚と話をする場面、どんな場面があるでしょうか。少し堅苦しいかもしれませんが、さまざま場面における会話に「目的」を考えてみると、適切な話し方が導きだされます。
①自分から話しかける
なぜ、同僚に話しかけるのか。もちろん、話をしたいからです。では、なぜ話をしたいのか。報告や連絡、相談でしょうか。これら三つを「報連相」とひとくくりにします。しかし、報告や連絡、相談は、随分内容が異なります。したがって、話しかけ方も、その内容によって変化させます。こういった対応は、人間関係のなかでは相手への「配慮」です。
一言で終わってしまう場合、例えばデータ送付を頼まれてメールで送った場合は、相手からの依頼に応え、かつ「送った」が伝われば良いので、さほど気遣いは必要ありません。
相手にぜひ理解して欲しい、とても重要な場合は、時間的猶予との兼ね合いで、まず話をする「場」を設定します。急いでいる場合には、思いたった瞬間に話しかける場合もあります。話しかけわけですから、自分が理解している、重要と思っている内容は、的確に伝えられる状態、できればメモやサマリーを作成して話しかけます。時間的猶予がある場合は、メモやメールで、内容をあらかじめ伝えた上で、場の設定を依頼します。
②話しかけられる
そのときは、突然やってきます。集中力を高めているときでも、なにか業務処理をおこなっているときでも「牧野さん」と呼ばれてしまいます。同僚や部下から話しかけられたとき、どのように対応すべきでしょうか。
まず、基本的には「聞く」姿勢を持つべきです。これは、話しかけた相手が、あなたに聞いて欲しくて、準備もおこない、自分なりにタイミングを計って話しかけたと前提した対応です。もちろん、あなたの周囲には、あなたの都合などおかまいなしに、無遠慮に話しかけてくる人もいるでしょう。そういった人よりも、しっかりあなたへの配慮をおこなってくれる人を、まず考えます。
聞くとき、話は長いのか、それとも短時間で終わるのかを判断して、話す場所をその場で決めます。問題は、後に予定があって、かつ話が長くなりそうなときや、話しかけられた瞬間にやっていた仕事を中断させたくないときです。
この場合、ただ「後にしてくれ」ではなく、具体的な時間を設定します。必要であれば、場所も合わせて設定し、必ず相手の話しかけてくれたアクションへ答えます。
これは、あなたの都合を考えずに話しかけてくる人にも適応する対応です。こういった対応を経て、話をしてみて、まだ話ができる段階ではないと判断した場合は、話のポイントをまとめた上で話をしようと提案します。いま、どのような状況に置かれているのか、何が問題なのか、解決するためにはどうすれば良いのか。この三点をメモにして持参して、話をする。あるいは、メールであらかじめ送信をアドバイスします。
話しかけられるのは、とても貴重なチャンスです。思いもよらぬ情報がもたらされる場合もあるし、会話の中から、有効なアイデアが生まれるかもしれません。そういった可能性を失わないために、適切な対応を心掛けます。
③立ち話(職場、廊下、エレベーター内)
立ち話といっても、限りなく挨拶に近い内容から、立ち話に済ませられない話のきっかけまでさまざまです。立ち話は、なにかのきっかけです。明確でなかった内容も、この人に聞いてみよう、アドバイスをもらおうといった形で、つながりを持つきっかけです。同時に、立ち話を目的にするケースもないので、偶然性が高くなります。
この場合は、少しでも話をするきっかけを得るために、まず軽い挨拶を交わします。会釈でも「おはよう」「こんにちは」のひとことでも、まず立ち話のきっかけですね。その上で、なにか話が始まれば、時間をとったり、場所を決めたりします。自分が仕事をしている瞬間に話しかけられるよりも、はるかに話しやすい環境なので、ささいなきっかけを見逃さないようにします。
<つづく>