調達・購買に必要な業界分析 #2(牧野直哉)

今回から、具体的な業界分析の方法について述べます。まず、分析対象である「業界」の定義です。

1.業界の見極め方

①「業界」の決め方

そもそも自社が、あるいはサプライヤがどんな業界に属する企業なのか。実はよくわかっていないケースが多いはずです。そして、そもそも日本にはどのくらいの業界があるのでしょうか。

ここで総務省のホームページにある「日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)」を参照します。最新の分類では1460業種に分類されています。業種とは「事業や営業の種類」であり、業界とは「同じ産業にたずさわる人々の社会」です(広辞苑から)。したがって、業界とは分類された業種によって同じ作業かどうかを決めていると判断します。

②どの業界に属するのか「見分け方」

次に、自社やサプライヤはどんな業界に属しているのでしょうか。我々がふだんおこなっている売買は、具体的なモノやサービスが対象です。必ずしも、業種と購入対象が合致しない場合もあります。しかし業界分析には、何らかの「切り口」が必要です。①で御紹介した日本産業分類標準にある1460業種をすべて理解して、サプライヤの業務内容を判断するのは無理です。一方、就活でおこなう業界分析は、産業全体を「金融、商社、流通、サービス、情報通信」の6つに分けています。1460の分類は多すぎるし、6つはあまりにも大ざっぱですよね。だから、こんなサイトを活用して、企業ごとの所属する業界を調べます。

TDB企業リサーチ
https://www.tdb.co.jp/service/u/1000.jsp

このページで会社名をキーワードにして検索すると「業種」が示されます。取りあえずは、このページで掲載された名称で「あーこういう業種なんだ」とします。会社名で検索すると、対象企業が複数表示される場合があります。その際は、同じページで会社名の下に表示される本社の所在地(住所)を参考に業種を確定させます。


<クリックすると、別画面で表示されます>

加えて、現在同じモノやサービスを購入している複数のサプライヤを検索してみます。以下の図は、実際に筆者が担当した業界で、所属するサプライヤを調査した例です。



<クリックすると、別画面で表示されます>

A社:自動車部分品製造
B社:油圧・空圧機器製造
C社:自動車部分品製造
D社:化学機械同装置製造

M社で製品xxxxxを購入しているサプライヤ4社の業種です。このデータを入手して、かなり驚きました。まったく同じ機能の製品を購入しているのに業種が3種類もある事実です。もちろん、各社とも購入していた製品だけを生産しているわけではありません。主力事業の違いなのか?なんて考えつつ、同じ機能を有する製品を作っているんだから、各社のリソースには共通点があるはずと仮説を立て、調査を進めました。ます、3つの業界に共通するキーワードを探してみました。

A,C社は、自動車部品メーカーでした。自動車のどの部分で使用されている部品なのかを確認すると、エンジンに使用される燃料や、オイル(潤滑油)に使用されている部品であるとわかりました。B社も同じ潤滑油(オイル)は使用しているでしょうし、D社の「化学機械」でも、潤滑や稼働部の冷却といった目的で潤滑油(オイル)を使用しているであろうと容易に推測可能でした。

消費財を製造・販売している企業であれば、商品名で検索できます。しかし、直接消費者を顧客にしていない企業である多くのサプライヤの場合、商品名より一歩踏み込んだ機能、生産設備に代表されるリソースによって、購入可否の判断をしなければなりません。

図にはM社の競合企業としてY社の存在を示しています。業界分析をおこなう場合は、Y社はどこから購入しているのかも重要なポイントです。どうやって調べればいいでしょうか。最初はサプライヤに聞いてみましょう。「Y社と取り引きしてる?」と、調査、ヒアリングではなく、あくまでも雑談の延長で話をすれば、回答が得られるはずです。各サプライヤの主要顧客を確認すれば、顧客と自社の違いでも、発注している業界の概要をうかがい知る情報が入手できます。 また、サプライヤの営業を複数の部門に分割している場合は、分割の基準を聞いて、サプライヤがどんな顧客と付き合っているか分かる場合もあります。自社とサプライヤを軸にして業界分析をおこなうわけですから、まず関係性のある企業の情報から入手を試みます。


<つづく>

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