はじめの一歩!調達・購買業務改革手法3(牧野直哉)

今回も調達・購買部門における業務改革手法の切り口です。改革に際して、まず現状を正しく理解し、正しくあるべき方向を導く最初のプロセスです。

・社内各種戦略(調達・購買戦略は機能戦略)との関係性理解
戦略の重要性は、今更疑う余地もありません。市場全体が等しく成長する時代であれば、他社と同じ、昨年と同じでも一定の効果を上げる取り組みが可能です。しかし現在の日本は人口が減少する時代です。企業であり人が、従来以上にお金を使わないと市場の拡大はありません。企業や人の財布をどのように開かせるかは、企業戦略に基づいた市場へのアプローチが欠かせません。

・「戦略」とは何か


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戦略の重要性が語られながらも、そもそも「戦略」をどのように扱えばいいのかがわからないといった声を耳にします。「戦略」を正面から捕らえるために、そもそも戦略とは何か?について社内で議論し、結論が出ずに結局戦略をよくわからないまま立案したり、従来と同じ戦略を継続したりして何とか対応している調達・購買部門が多いのです。

「戦略とは?」の問いに対しては、さまざまな方がその解に取り組んでいます。私の解釈では、まず戦略の前提条件として事業運営の結果、到達すべき「目標」が設定。この「目標」を実現するために、調達・購買部門がどのような姿になるべきなのか「あるべき姿」を設定します。その上で現在の姿と比較してあるべき姿との「ギャップ」を明確化。ギャップが明確になれば、あるべき姿と現在の姿のギャップをどのように埋めるか、あるべき姿を実現する「ストーリー」を考え導けるのです。


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戦略とは「あるべき姿」と「あるべき姿を実現するストーリー」の2つ、上図の赤い点線の枠内です。このような前提条件で、調達・購買戦略の側面から業務改革をどのように行うのかを述べます。

・調達購買戦略は「機能戦略」である


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戦略を立案するとき、誰もが創造性やビジネスのアイデアが重要!と考えています。しかし調達・購買戦略とは上図の通り、企業全社や事業レベルの戦略と対比すると、機能上それらの下位に存在。この調達・購買戦略の位置づけ=機能戦略が、調達・購買戦略の立案と実行を難しくしているのです。

機能戦略とは、部門ごとに立案・実行され、それらは相互に影響をおよぼします。目指すべきは相乗効果(シナジー)ですが、他の機能戦略が調達・購買戦略へプラスマイナスは別にして影響を及ぼす事態も十分に想定する必要があります。たとえばこんな事例です。

●昨今の人手不足を背景に、自社のコアコンピテンス(中核技術)の絞り込みを行った結果、製造部門の再構築が必要になった。具体的には現在の工程の約30%をアウトソーシングする方針が企画・製造両部門から提案された。

こういった情報が、戦略を策定する前に調達・購買部門へもたらされていれば、この情報を元にして、次のような対処が必要です。

○アウトソーシングする30%の工程の作業内容は、付加価値の低い比較的労働集約的な作業であり、従来内製だったので調達・購買部門にもサプライヤ情報が蓄積できていない。現時点ではアウトソーシング先が確保できるかどうかは不透明なので、市場調査・分析を経てから意志決定できないか

○調達範囲がより拡大するので、調達・購買部門の負荷は増加する。必要な人的リソースの確保をどうするか

人手不足は、製造部門だけに影響するのではなく、調達・購買部門やサプライヤにも等しく影響を及ぼします。調達・購買部門の人手不足対策として、サプライヤの集約・集中化を検討していた場合、製造部門のアウトソーシングの方針は、真逆の方針になってしまいます。

各部門は、まず自部門における最適化を志向して戦略を立案すべきです。新たな取り組みには、自部門の機能を最大限効率的に発揮する戦略を、意識して独善的な検討も必要です。しかし独善的なまま社内で承認・実行されてしまうのは問題。製造部門と調達・購買部門の機能戦略が真逆の方向性を示していれば、いずれも中途半端になるか、どちらかが形骸化します。そういった事態を避けるためにも、機能戦略の策定段階、それも早い段階で「戦略のコミュニケーション/横通し」が必要です。


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戦略そのものが勝手にコミュニケーションするわけもないので、戦略立案の当事者同士が、情報交換や討議を、早い段階から行います。

調達・購買戦略立案から実行プロセスを改革するには、まず戦略立案初期段階で双方のアイデアを以下に風通し良く交換できるかがポイントです。「勝手なこと言って」なんて言葉が飛び交う場合は、そもそも戦略立案プロセスに、部門間調整のプロセスがないかもしれません。

戦略立案~実行を正しく行っている企業は、立案初期の段階から「縦の整合(企業戦略と事業、機能戦略の整合)」と「横の整合(機能戦略どうしの整合)」を、時間を費やして行っている。取り組みしている企業の管理職の言葉を借りれば、時間も取られるし、かなり面倒くさい作業です。しかし「そんな話、聞いていない」と、企業内の不整合を正さないままにすれば、戦略実行できません。

戦略立案~実行では、戦略の「縦の整合」と「横の整合」を達成するための戦略のコミュニケーションを正しく行う必要があるのです。

(つづく)

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