前回に引き続き、調達・購買部門における業務改革手法の切り口。改革に際して、まず現状を正しく理解し、正しくあるべき方向を導く最初のプロセスです。
・サプライヤ
調達・購買部門は、外部からモノやサービスを購入するのが任務。購入するモノやサービスを提供するのがサプライヤであり、この部分はどんな調達・購買部門でもある程度掌握しているはずです。
サプライヤを理解するとき、大きく2つの視点があります。1つ目はまさに目の前のサプライヤについての理解です。この分は程度の差こそあれ、多くの調達・購買部門である程度できているはずです。できていない場合、そもそも発注できません。
問題はもう1つの視点。サプライヤを業界・業種といったカテゴライズされた括りの視点です。近年「カテゴリ戦略」なんて言葉も一般化しています。個別のサプライヤをカテゴライズして、集団として見たときにどう感じるかの視点です。
まずサプライヤ数が適性かどうかを判断します。はじめてカテゴライズする場合、大抵サプライヤ数が多すぎないかといった仮説が生まれます。逆にシングルソースサプライヤの場合は、製品やサービスでカテゴライズして最終的に1社です。多すぎから1社の間で、果たしてどれくらいのサプライヤ数が適切なのかを考えるためには、まず購入品やサービスごとに分類し、購入しているサプライヤの社数を掌握しなければなりません。
カテゴリ分類を行ったら、各カテゴリのサプライヤ数を確認します。1社から何社くらいまで、同じカテゴリにサプライヤが存在するでしょうか?2社がよいとか、3社以上は多すぎるとか、さまざまなアイデアが浮かぶでしょう。しかし単純に社数でよしあしは決められません。
「何社がベストか?」を見極めるためには、次の2つポイントまで含めて掌握してはじめて検討できます。とくに同一カテゴリで複数社のサプライヤへ発注している場合は、そのそれぞれに「発注に足る明確な根拠」が存在するかどうかです。この点を、バイヤが説明できない場合は、理由がない、もしくは薄い可能性が高いかもしれないと、さらなる検証を行います。
①複数社に発注している区別はバイヤ企業主導か、サプライヤ主導か
→購入依頼を入手した段階で、複数のサプライヤが存在したとしても発注先が限定される場合は、複数のサプライヤの間で「すみ分け」が発生している可能性があります。
②発注しているサプライヤ以外に、発注可能性のあるサプライヤが存在するか
→現時点で発注していなくても構いません。サプライヤの存在を掌握しているかどうか。存在しない場合は、複数のサプライヤであっても寡占状態であり、シングルソースと同じ対処が必要なケースです。
カテゴリ戦略やサプライヤ戦略の基本は「変化」です。発注先をできるだけ固定せずに流動的にすれば、バイヤ企業との間に一定の緊張感を保つことができます。この前提条件を踏まえた上で、バイヤ企業の意志で集中する、あるいは分散をコントロールできる状態が、もっとも好ましいサプライヤ戦略の姿です。
「変化」を基軸としたサプライヤ政策をベースにして、1社のサプライヤへ発注を集中させる場合、集中によってサプライヤが安住しない緊張感の維持が大きな課題です。サプライヤの安住は、バイヤも楽ができる負のメリット=何もしなくてもいい、も存在します。この点を忘れてしまうと、自社のメリットの最大化をもくろんで行った集中購買のメリットが薄れ、気がつけばサプライヤのメリットだけが残っていたなんて笑えない話につながってしまうのです。
またそれぞれのサプライヤからの購入規模と購入件数(頻度)も必ず押さえておきます。購入規模は「××万円」くらいまでのレベルで、まず購入実績を集計して掌握しておきます。このレベルであれば、ほぼすべてのバイヤ企業で行っているはずですね。加えてその数値がサプライヤにとってどれほどのレベルかも理解します。
サプライヤの法人として、販売窓口として、発注規模がどの程度のレベルかも掌握しておきます。法人レベルであれば購入割合もなかなか整数で表現できないケースが多いでしょう。その場合は、営業担当者の売上に占める割合を確認しましょう。少なくとも、営業担当者の売上に占める割合を10%以上、できれば30%を超えると、営業担当者は注意して対処せざるをえなくなるはずです。
・業務範囲
業務範囲は、次の図の通りです。企業の業務分担によって、この範囲に違いはあるでしょう。自分たちの業務範囲が、形式的に、そして実質的にどの範囲を網羅しているでしょうか?まずこの基本的な考えた方に照らして、自分たちの業務範囲がどうなっているのか、まず掌握します。
<クリックすると別画面で表示します>
まず形式的にどうでしょうか。社内の業務分担で、サプライヤ選定が調達・購買部門の職掌になっているかどうか。そして実質的にはどうでしょう。ルールに反して、実質的には、他部門で決定されていないでしょうか。このルールと実態の隔たりは、まずなぜそうなってしまうのかを考えてみます。
また調達・購買の前後工程も注目です。このように図示すれば、上流工程へのアプローチが必要とされる開発購買の位置づけが理解しやすくなります。開発購買とは、サプライヤへ要求する仕様決定プロセスに調達・購買部門が関与します。また後工程は、サプライヤ評価の観点で重要なプロセスです。納期や品質といった部分の結果が出るため、調達・購買部門に独善的でないサプライヤ選定を行うためには、他部門の業務の成果を踏まえる取り組みが欠かせなくなります。
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まず形式的にどうでしょうか。社内の業務分担で、サプライヤ選定が調達・購買部門の職掌になっているかどうか。そして実質的にはどうでしょう。ルールに反して、実質的には、他部門で決定されていないでしょうか。このルールと実態の隔たりは、まずなぜそうなってしまうのかを考えてみます。
また調達・購買の前後工程も注目です。このように図示すれば、上流工程へのアプローチが必要とされる開発購買の位置づけが理解しやすくなります。開発購買とは、サプライヤへ要求する仕様決定プロセスに調達・購買部門が関与します。また後工程は、サプライヤ評価の観点で重要なプロセスです。納期や品質といった部分の結果が出るため、調達・購買部門に独善的でないサプライヤ選定を行うためには、他部門の業務の成果を踏まえる取り組みが欠かせなくなります。
(つづく)
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