ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
5-8 発注に適したサプライヤがいなかったらどうする
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サプライヤから提示された見積内容と購入条件を検討した結果、最終的に対応できない条件が残る場合があります。条件をクリアしようとサプライヤが頑張って、最終的に発注できれば問題ありません。しかし、発注を辞退されたらどうするか。調達購買部門では、そういった最悪の事態を避けるために、あらかじめ適合していない条件を明確にして、個々に対策を講じなければなりません。対策をサプライヤにのみ求めるのでなく、クリティカルな発注条件を見直し、緩和を社内の要求部門に働き掛けるのも調達購買部門の重要な役割です。
☆購入条件と見積内容の適合度の見極め
見積依頼内容(購入条件)と、サプライヤから入手した見積内容を照らし合わせて確認の結果、購入条件に対応できないと調達購買部門で判断する場合があります。複数のサプライヤに見積依頼をおこない、複数の見積で、見積条件に適合する割合に差がある場合は、より適合度の高いサプライヤへ発注すれば解決すべき内容は少なくなります。しかし、複数のサプライヤから入手した見積が、同じく適合度が低い場合や、少数のサプライヤからしか見積入手できず、かつ見積条件への適合度が低い場合、適合しない部分をそのままにして発注してしまうと、大きなリスクを抱えたまま購入しなければなりません。適合性が低い=ミスマッチ部分はリスクになります。調達購買部門は、積極的に対策を講じてリスク最小化に取り組みます。
具体的な対策方法は2つあります。リスクが掌握できた段階で、以下の2つを同時並行的に行い、リスクの最小化に取り組みます。「同時並行」とは、サプライヤにおいてのみの解決でなく、バイヤ企業も一緒におこないます。
①サプライヤに見積内容の見直しを求める
見積に含まれていない理由を具体的に確認します。サプライヤが所有するリソースにもかかわらず、納期や、キャパシティといった優先順位の問題で見積にミスマッチが存在する場合、優先順位の見直しをサプライヤへ申し入れます。そして、購入条件を満たすリソースを所有していない場合は、購入側で対応し見積条件から除外、もしくはリソースを持つ新たなサプライヤの採用を検討します。バイヤ企業とサプライヤの双方で検討します。
②購入条件の見直しを、購入要求部門へ打診する
①の対応と同時並行で、購入条件を見直しの可能性を模索します。購入要求部門は、調達購買部門ほどサプライヤの能力情報を持っていません。サプライヤの能力よりも、バイヤ企業としてのニーズをベースに条件設定を行っています。条件の重要度判断よっては、条件を除外できる場合もあります。
調達購買部門では、納期的に余裕のない段階でのミスマッチの顕在化を避けるため、事前の準備を確実に実行します。実際にミスマッチが顕在化した場合、サプライヤのリードタイムと希望納期を考えると、待ったなしの対応を迫られるケースがほとんどです。想定される可能性をすべて試して、一刻も早い事態の収束に取り組まなければなりません。
☆継続発注していても適合度を確認する
購入を継続する場合も、発注している条件とサプライヤ能力の適合性の確認を定期的に行います。発注を決定した段階で一度は購入条件への適合性を確認したはずです。しかしサプライヤのリソースが変更されている場合があります。社長や所在地、仕様材料といった大きな変更は、サプライヤの側から連絡があるかもしれません。しかし設備や担当する作業員といった比較的小さな要素の変更でも、購入品に何らかの影響を及ぼす可能性もあります。変更があった場合、サプライヤからバイヤ企業への連絡を購入条件にもできます。連絡をもらったタイミングで、適合性が継続しているかどうかを確認します。また、長期的に発注が続く場合は、想定される発注期間を通じてリソースの確保が可能かどうかの視点でもサプライヤに確認を行います。適合性が確認されても、サプライヤへ依頼して、継続性の確保を申し入れます。
(つづく)