ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

5-7 入札のセオリーを学ぶ ~一発勝負での競わせ方~

入札のメリットは、競争原理を利用して、低価格で発注できる面に加え、サプライヤーの選定が公平に行われる点にあります。近年では、電子入札、調達購買部門ではリバースオークションといった形で実施される入札のセオリーを学んでおきましょう。

☆入札実施プロセスから学ぶこと

入札は、バイヤがサプライヤーを決定できません。発注先はサプライヤーの価格を含めた提案内容の優劣によって決定されます。入札の反対の意味で「随意契約」があり、これは発注先を最終的にはバイヤの意志で決定します。民間企業におけるサプライヤ決定は、バイヤの意志によって「随意=自分の心のままで、束縛や制限を受けないこと。心まかせ」に決定されています。しかし、だからといって、バイヤが勤務先への悪影響をおよぼすようなサプライヤの選定をおこなってはなりません。調達購買部門では、サプライヤの選定プロセスを透明化し、恣意(しい)的な発注を抑止し、不正行為を防止する役割を担っているのです。

この有料マガジンの読者の多くが勤務している民間企業では、実際にサプライヤに入札してもらって、その結果に基づいてサプライヤを決定する機会は少ない、あるいはほぼ無いかもしれません。これは、入札実施の前提条件として、入札条件を明確にして事前に提示するプロセスの存在に起因しています。また、サプライヤのリソースを活用する前提で、サプライヤからの提案を受けるような、バイヤ企業の要求事項自体が確定していない場合は、入札が実施できません。実際、多くの購買案件に入札条件を首尾良く設定する時間がないのが実情でしょう。しかし、本来調達購買部門からサプライヤへ見積依頼や、RFP/RFQを提示する場合は、入札が実施できるほどに事細かな条件が設定されている方が、バイヤ企業に有利な調達購買が実現できる可能性が高まります。バイヤ企業に有利な見積依頼~見積入手プロセスの設定や、サプライヤ選定プロセスの透明化には、入札実施のプロセスが参考になるのです。

☆入札の種類

①一般競争入札

どんな企業でも応札できる、もっとも制約が少ない自由競争によって発注先を決定する入札方法です。しかし、好況時は入札に応じるサプライヤが少なかったり、低価格を求めるあまり、品質面に不安が生じる可能性があったりといった問題があります。また、どんな企業でも入札に参加できるため、調達購買部門で入札内容を実現できるかどうか、サプライヤーを確認する手間は増大します。しかし、サプライヤへの確認が比較的少ないアイテムで、かつ発注内容が多くのサプライヤにとって魅力的であれば、活用の路は広がる手段です。

②指名競争入札

自由競争のメリットは維持しつつ、入札できるサプライヤーを事前審査によって選定し、指名して入札を行う方法です。民間企業における入札では、もっとも実現性が高い入札方法です。入札結果で決定されたサプライヤでの実現性に関するリスクは減少します。その一方で、指名されたサプライヤーどうしが談合を行う可能性が生まれます。過去に官公庁の入札で問題となった「談合」は、ほぼこの入札形式の元で発生しています。読者の皆様が,使命競争入札をおこなう場合は「談合」の可能性も想定しなければなりません。対応策としては、指名企業の入れ替えです。定期/不定期に関わらず、新しいサプライヤの探索を継続して、指名企業の固定化を防ぎます。

☆入札前の準備

発注条件をすべて決定した後、入札を実施します。入札前段階での準備は、仕様や、数量、納期といった基本的な条件だけでなく、品質の管理基準や保証条件、アフターサービスに関する条件も必要に応じて盛り込んでおきます。また、価格の提示方法も、金額提示を行うフォームを指定して、詳細の比較と金額確認をおこないやすくします。

☆入札後の交渉はしない

入札結果によってサプライヤーを選定した後は、金額の交渉はおこないません。サプライヤが入札する金額が最終の金額との意志を示して、もっとも安価な金額で入札してもらうためにも必要です。入札後に交渉の機会はないとの前提条件が、サプライヤにはプレッシャーになります。もちろん、入札結果でサプライヤーを選定した後に、発注条件の変更があった場合はこの限りではありません。交渉を行う場合でも、交渉相手は入札の結果でもっとも好条件を提示したサプライヤーに限定します。入札に参加した複数のサプライヤーに交渉してしまうと、そもそも入札を行った意味が無くなってしまいます。入札結果でサプライヤーを絞り込んだ事実が、次の入札にも影響し、入札の重みも増すのです。

(つづく)

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