シングルソースサプライヤに対処する方法(牧野直哉)

【まとめ】買えない/売ってもらえない場合の対処方法

前々回、前回と、販売しているサプライヤが存在するにも関わらず購入できずに結果的にシングルソースになってしまっている事例を、対処法とともにお伝えしました。買いたいのに買えない状況は、バイヤーにとってもっとも厳しい状況です。一般的に、売り込みを受ける事態は容易に想像できます。しかしバイヤーの「買いたい」要望がかなわない事態は想像できませんね。そういった結果に直面した場合は、感情的にサプライヤを責めてはいけません。売らないと判断したのは、サプライヤの営業部門における意志決定です。しかし、販路をこじ開けるのが最終目的の場合は、意志決定に至った理由を理解しなければなりません。そして売れない理由を覆す顧客としての魅力を高める取り組みが必要です。

まず、売ってくれない相手とは、そういった意志が感じられた時点で、一度手を引きます。間違っても、大騒ぎをしたり、サプライヤの営業パーソンとけんかをしてはいけません。そういった対処は将来に禍根を残し、新規サプライヤ開拓の可能性を減少させるだけです。多くの場合、売れない原因は、売り手に有利と売り手自身が考えている業界の慣習・明文化されていないルール・商権です。過去から積み重ねられた結果です。こういった事例を売り手から見ると「販売流通ルートの系列化・組織化」であるケースもあります。メーカーの販売戦略の根幹と戦って勝てる可能性は、極めて小さいのです。

そういった売り手の姿勢を突き崩すには、まず会社の方針と、営業パーソンの意志の間に溝を作らなければなりません。会社の方針はあるけど「売ってほしい」と明言する顧客を前に「売れたらな」と思わない営業パーソンはいないでしょう。会社方針と、自分の置かれた状況にジレンマを感じてくれたら占めたものです。

また、生産~購入までのサプライチェーンを調査して、売ってほしい企業の顧客に、自社のサプライヤがいないかも、典型的な抜け道です。もちろん1社余計に経由するので、費用が加算されるデメリットはあります。しかし間接的であっても取引関係を構築できれば、売ってもらえない状況からはかなりの前進です。

通常、営業パーソンは「どうやって売るか」を考えていると言われています。本当でしょうか。この言葉には、大きな欠落がありますね。どうやって「高く」売るかを考えるのが営業パーソンの責務です。顧客満足の向上を第一に考えるとか言ってますけどね、実際はどうやって高く売るか、どうやったら従来レベルの売り上げや利益率を維持するかを一生懸命考えているはずです。営業パーソンとして当たり前の創意工夫した結果の発露です。

そういった営業パーソンに相対する調達・購買部門、バイヤーは、どのように対処すべきでしょうか?売り込みにやってきたサプライヤは、当然バイヤーの意向に従順でしょう。でも、そういった対処だったら、誰でもできますよね。従順な営業パーソンだって、果たして心の中でどう思っているのかわかったもんじゃありません。そして、もし営業パーソンから提示された条件が、自社にとって魅力的だったら、より魅力を高めるにはどうすれば良いかを考えるべきです。そういった考えや行動が「どうやったら上手に買えるか」です。上手な購入の実現には正攻法だけではなく、側面からも、時には相手を背後へ回るといった手段も、置かれた状況によっては選択しなければなりません。

いろいろ考える~業界によっては、系列化や組織化が進み、購入できるサプライヤが限定される事態に直面するバイヤーもたくさんいるでしょう。そういった可能性が制限された場面で、思考のフィールドをどれだけ広く確保できるか。シングルソースサプライヤの打破には、バイヤーの創意工夫が不可欠なのです。

 <つづく>

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい