バイヤー現場論(牧野直哉)
3.サプライヤへのおわびするとき
ビジネスにミスはつきものです。ミスを防止し、発生させないような業務の実行を実現させなければなりません。しかし、残念ながらミスをゼロにはできません。今回はやむを得ず自社の責任でサプライヤへ迷惑をかける事態を想定して対応を考えます。
①自社のミスによるサプライヤの対応によってわかること
自社のミスで、サプライヤへサポートを申し入れたとき、サプライヤの対応は十分に満足のいくものでしょうか。基本的に自社のミスですから、サプライヤにはおわびとともに、ミスによって引き起こされた事態の解消に協力してもらわなければなりません。そんなときに適切なサポートをサプライヤが提供してくれるかどうかは、ふだんの自社がサプライヤに対しておこなっている対応の裏返しと理解しましょう。サプライヤの自社に対する重要度や認識が直接的に反映されます。したがってミスの解消を急ぐのはもちろん、2つのポイントでサプライヤの対応を注視します。
(1)最善・最速の対処がおこなわれているか
自社に起因するトラブルの対処でも、最終的に被害を受けるのはバイヤー企業の顧客です。サプライヤが自社顧客へ配慮してくれるかどうかの観点で、そもそもの原因や責任を越え、事態の収束へ向けた対応がおこなわれているかどうかをチェックします。
(2)サプライヤ担当者の姿勢はどうか
サプライヤにとっては、自らに責任のないトラブル処理です。しかし、対応しなければなりません。サプライヤの担当者が、適切なサプライヤ内調整をおこなっているかどうかを確認します。
もしスムースな対応がおこなわれていないと感じる場合は、日常的な業務で潜在的に自社に対する不満を感じている可能性が高くなります。もしかすると、こういった姿勢は、日常的な業務にも影響を及ぼす可能性もあります。トラブルの処理が完了した時点で、サプライヤへ改めておわびとともにヒアリングして、自社の発注方法や仕事の依頼方法に問題があるかどうかを確認します。バイヤー企業からの依頼は、どんな理由でも対応すべきといった高圧的な姿勢は慎まなければなりません。そういったバイヤーや自社の関連部門の姿勢が、トラブル対応で発露し、スムースに処理できない事態を招いているかもしれません。
②真摯にわびる覚悟をもつ
自社に起因するトラブルによる対応ですから、依頼に際してはまず「おわび」から入ります。これは、バイヤーと営業パーソンの関係より前に、人と人との関係を重視する結果です。しかし、調達・購買の現場ではこういった当たり前がおこなわれず、対処するサプライヤが、なにか気持ちに引っかかりを感じながらおこなうケースが多く見られます。顧客へ迷惑をかけないとの観点では、自社の問題であっても、その解消にサプライヤのリソースが必要であれば対処すべきです。しかし、自社がわびなければならない事態は、サプライヤでも通常とは異なる特別な対処を必要とする事態でもあります。そういった日常と異なる対応を強いる相手に、できるだけ前向きに対処を促すためにも、依頼に際しては「おわび」から入ります。
③真の協力姿勢をうちだす
トラブル処理をサプライヤへ依頼した結果によって、サプライヤのもつ本心が明らかになり、自社への対応姿勢として表れました。サプライヤが前向きに対処をおこなって、顧客への迷惑度合いも、特別対応による発生費用も最小限に抑えられたら、対応への感謝の気持ちと、同様の対処の継続をうながします。サプライヤと良好な関係が構築できているあかしが確認できたともいえます。サプライヤの姿勢に甘えずに、ミスの再発防止を必ずおこなって、改善内容をサプライヤへ報告して良好な関係の盤石化を目指します。
また、サプライヤから積極的な対応が得られずに、混乱の終息に時間を要した場合は、関係性の再構築を検討します。積極的な対応が得られなかった原因が、サプライヤでなく、自社や担当バイヤー、関連部門にある場合も想定して、自社内すべてのサプライヤへの対応を調査した上で、再構築の方針を決定します。また、もし代替サプライヤが存在する場合で、より良好な関係性を築いている場合は、サプライヤ集約の可能性を模索するきっかけにも活用します。
(つづく)