ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
バイヤーに必要な「情報力」
ビジネスに必要な基本的なリソースには次の4点が挙げられます。
1. 人
2. モノ
3. 金
4. 情報
今回はこのうち「情報」について述べることにします。
東日本大震災で調達購買担当者がどんな困難に見舞われ、どのように乗り越えていったのかをまとめた「大震災のとき!企業の調達・購買部門はこう動いた( http://amzn.to/t5etgF )」でも、バイヤーたちが情報にどのように対峙したかを描きました。そこには、ある一部分に注力しすぎているバイヤーの姿がありました。今回のシリーズでは、震災後にバイヤーへ行ったアンケートの結果を参照しつつ、バイヤーとして一人のビジネスパーソンとして必要な情報力を考えてみます。
「情報」といえば「収集」でしょうか。確かにその後に控える共有、分析、活用のプロセスを考えても、その対象である「情報」がないとなにもできないのは事実です。故に情報収集を一生懸命にやってしまうバイヤーの姿をみることができます。東日本大震災発生後のバイヤーのアンケート結果は次の通りでした。
◇震災後のバイヤーアンケート結果
コメント総数 307
情報に関するコメント 80 26.1%
情報収集のコメント 60 19.5%
(「情報」関する回答に占める割合は75%)
このアンケート結果は、情報に関するバイヤーの意識の高さ、情報収集を非常に重要視している意識を表しています。事実、アンケートの結果の詳細を見ても、震災発生後の情報収集の動きは非常に迅速かつ的確でした。度重なって発生する地震に対しての「初動」が定着していることを証明する結果です。そして多くのバイヤーが震災の翌稼働日である3月14日には多くのサプライヤーから第一報を入手しています。迅速なのはバイヤーだけでなく、営業パーソンの対応にもあてはまります。バイヤーとしては、的確に回答を返してくれた営業パーソンに心から感謝の意を伝えるべきですね。(今からでも遅くないので、やっていらっしゃらない方はぜひお礼を!)
「情報力」には次の4つの要素が必要です。
(1) 情報収集力
(2) 情報共有力
(3) 情報分析力
(4) 情報活用力
そして、「4つの要素」をサイクル(回転)させることで「情報力」を確立されます。次が、この考え方の概念図です。
繰り返し、先に提示したアンケート結果は、的確にそして迅速に動いたことを示しています。一方、「情報収集」に偏った回答が寄せられた。バイヤーの皆さんが実際の業務対応の中での動きを回答したにもかかわらず、情報収集以降に何をしたか、どんな問題があったかがほとんど語られていないのです。情報を取り扱う力を総合的に情報力とするとき、情報収集以降の要素にも同じように取り組む必要があります。同じように取り組むためには、それぞれの情報を取り扱う要素に考慮すべき点があります。
●情報収集と情報共有には時間をかけてはならない
現在、マスコミだけでなく個人も含めると非常にたくさんの情報が世の中に存在しています。皆様が必要とする情報の多くはこの世に存在するのです。様々なホームページ、企業や個人が運営するブログ、もちろん多すぎて処理できない皆様のメールボックスにも有用な情報は存在するはずです。それらの中から重要と判断する情報をTwitterやメールマガジンで伝える「キュレーション」という手法を活用して情報を受け取ることもできます。これらの情報に対しては、アクセス方法さえ知っていれば瞬時にアクセスすることができます。
一方、世の中に広く存在しない情報、バイヤーが欲するサプライヤーの情報などはこれにあたります。普段はサプライヤーとのコミュニケーションのなかで情報収集をおこないます。そして震災後のような事態では、バイヤーの欲しい情報は決まっていますね。バイヤー企業への納入は継続するのかどうか、停止するのであればどのくらいの期間停止するのか。欲しい情報が同じであれば、その投げかけは個別に電話等で行うよりも、ツールを使って一括して行うべきです。バイヤーが情報収集への取り組みが高いのと同時に、サプライヤー側の営業パーソンも情報を提供する意識はあるのです。できるだけ営業パーソンの時間を占有しないことが、効率的=時間を費やすことのない情報収集活動への近道なのです。そして別の情報力の要素への取り組みを行うのです。情報力とは、情報への取り組みを「収集」のみで終わらせない、次につながるアクションなののです。
●収集した情報は断片的である
情報への取り組みを「収集」で終わらせてはならない理由。それは、この世に存在する情報が情報を欲する人にとっては断片的であることです。欲しい情報の答えがそのまま存在することはほとんどありません。したがい、できるだけ広範囲から多くの情報を収集する必要があります。個人で行う場合も、震災後のような事態で組織的に行う場合も同じです。特に組織的に情報収集を行う場合は、組織を構成する人それぞれの持つ情報レベルをできるだけ同じくすることが重要です。自分の情報と同僚の持つ情報を合わせるだけで「なるほど~」となる場合もあります。さらなる情報収集を行う場合、より真相に踏み込むことができる質問を構築する力の厳選にもなります。そして既に組織として持っている情報へ再びアプローチすることを抑止することにもつながります。
●シングルソースでなく、デュアル・トリプルソースを求める
収集した情報は、その時点では性格かどうかわかりません。これは震災後の混乱した状況ではなおさらです。情報を提供している側にすれば、情報を求めている側の正確性への確認には答えようがないですね。これも断片化した情報の一側面です。したがい、類似情報はできるだけ集めて情報を受けた側でも事実確認をおこなう、そのためにシングルソースで無く、複数のソースからの情報提供を求めることが必要なのです。
次回は「情報共有」です。