調達購買部門の新たな役割(牧野直哉)

調達購買部門の新たな役割、それは社内で進めてきた話を最終的に調達購買部門の権限でストップさせたり、方向を大幅に転換したり、内容を修正したりといった内容です。私にこの話をしてくださった方は

「調達購買部門が話を進める上での障害になるケースが多いんですよね」

とおっしゃっていました。

ほんとか?

私は、率直にそう思って口に出して相手に伝えました。すると確かな話です、との回答。そして、私は「すごいな」と感心してしまいました。調達購買部門にそんな権限がある!これは喜ぶべき話です。このお話は、大企業によりその傾向が強いそうですので、日本の大企業も調達購買部門の意志決定を尊重して、会社全体の意志決定に大きな影響を及ぼすようになったわけです。

しかし、少し気になったのが、調達購買部門が強く主張する場面が、社内的に進んできた話を止めたり、縮小したりといった部分である点です。新しくなにかを起し、進めるのと、止める、もしくは縮小するのでは、止める方が、十分に内容を吟味していない場合は、決めやすい。リスクを取るか取らないか。これはもちろん、リスクがあるからやらないと判断すれば、目に見えた失敗をする可能性が極めて少なくなります。

確かに、サプライチェーン全体を見据え、管理する上で、調達購買部門の企業内での重要性は高まっています。実務を進める上で、調達購買部門が求められる業務も増えています。やるべき業務が増えれば、これまでの調達購買部門のリソースで対応可能かどうかとの問題が必ず登場するはずです。仕事が増えたから、見合ったリソースがそのまま増やせるかといえば、そんな時代ではありません。

しかし、実際どうなのでしょう。現有リソースで対処できる仕事量なのかどうか。リソース量を変えずに仕事が増えた場合、対応するためのリソースをどう確保するかとの点を置き去りにしたら、当然一つ一つの仕事への投入するリソースの量は減ります。いままで1時間費やせた仕事に、30分しか使えなくなったら、品質維持には苦労するはずです。例えば、まず内容の検討にリソースを重点的に配分したり、段階的に使う時間を減らしたりといった対処が必要です。

調達購買部門の社内的なポジションが上がり発言力も高まった結果、企業としての妥当性を持った「ストップ」「縮小」の判断であれば、本当に素晴らしい。しかし、いきなり課せられた多くの責任によって、十分な検討が行えないために「ストップ」「縮小」は本末転倒です。もし、新たにやるべき仕事の量が多ければ、相応の体制整備も同時並行で進めなければ、それこそ調達購買部門の存在意義が問われてしまうのです。

調達購買部門が「ストップ屋」「縮小屋」と揶揄されないことを祈ります。

(了)

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