指標はこれをみろ!番外編(牧野直哉)
●サッカーワールドカップブラジル大会 日本代表敗因分析
この原稿を書いている6月27日時点で、1次リーグすべての戦いが終了しました。日本を含めたアジア勢4チームは、すべて予選リーグ敗退でした。現在進行形で日本代表の敗因が部外者から盛んに発信されています。機に乗じて、私も敗因分析に試みました。ただ、サッカーの戦術的な部分は語れません。今回の出場国のデータを横並びで比較してみました。
実際にデータの収集をおこなって途方に暮れました。今回出場の32カ国すべてに同じレベルで入手可能なデータがきわめて少ないのです。日本であればネットを通じてすぐに手に入れられるデータでさえも入手できないのです。確かにこういった調査にもコストが発生しますのでやむを得ません。それほど、さまざまな国の代表が一堂に会している大会と実感しました。
入手した情報によって「こういう理由は違うな」と考えるに至った理由があります。豊かになりすぎた日本の「ハングリー精神が足りない」との主張です。このページにはこんなデータが並んでいました。
1位 クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル代表) 約74億2000万円
2位 リオネル・メッシ(アルゼンチン代表) 約66億1000万円
3位 ネイマール(ブラジル代表) 約28億5000万円
4位 ウェイン・ルーニー(イングランド代表) 約22億4000万円
5位 セルヒオ・アグエロ(アルゼンチン代表) 約21億4000万円
5位 ヤヤ・トゥーレ(コートジボワール代表) 約21億4000万円
7位 フェルナンド・トーレス(スペイン代表) 約20億3000万円
8位 ロビン・ファン・ペルシー(オランダ代表) 約19億3000万円
9位 フランク・リベリー(フランス代表) 約18億3000万円
10位 スティーヴン・ジェラード(イングランド代表) 約17億3000万円
これはワールドカップに出場している選手の年俸トップ10です。世界各国の有名選手が名前を連ねています。日本選手のトップは香川選手の約8億4000万円です。ハングリー精神が、貧困層の子供たちがサッカーで身を立てお金持ちになりたいといった形で国民に作用しても、代表選手達に当てはまりません。もう十分お金持ちであり、なにか別な部分で強く求める何かを求めているとすれば、そもそも日本選手に不足しているのはそういった「価値観」かもしれません。今回の結果は単純にハングリー精神のあるなしでは語れないのです。
そして出場国選手の所属チームにおける時価総額合計金額のランキングが以下のグラフです(元データはこのページ)。各選手の時価は、年俸、各チームでの成績、年齢と最近のパフィーマンスを元に計算されています。上記の選手年俸の合計金額ではありません。
<クリックすると、別画面で表示されます>
世界第三位の経済大国の日本も、サッカーの世界ではまだ「中の下」の時価総額とマーケットから評価されています。ただこの数値も各チームの実力を反映していないのは、予選突破状況からご理解いただけますね。例えば、時価総額最下位のホンジュラスでは、代表選手の多くが国内リーグに所属しているため、このような結果になっています。
グループリーグは、参加した32カ国中半分の16カ国しか進めません。時価総額上位の16チーム中、決勝トーナメントに進んだチームは9チーム。一方、時価総額下位の16チームからは6チーム。確かに時価総額の高いスター選手を抱える国の代表チームが予選突破する確率は高いと言えます。しかし、時価総額2位のスペインが予選で敗退している事実から、なかなか一筋縄ではいかない要素が予選突破には必要なのでしょう。
そして1つおもしろいデータを見つけました。開催国と自国との「時差」です。
今回決勝トーナメントに進んだ国の、ブラジルとの時差の平均は1.93時間。そして敗戦した国は3.06時間です(1国で複数の時間帯を持つ国では、中心値を採用しました)。日本をはじめ、韓国やオーストラリア、ロシアは、比較的時差が大きな国です。一般的に時差は1週間程度で解消されるとされています。また、これはあくまでも開催国と自国の時差であり、例えば開催国ブラジルの代表メンバー中、自国リーグからの選出はわずか4名なので、実際に関連があるかといえば、かなり怪しいデータです…。
日本代表チームがワールドカップの予選を突破できなかった理由は、残念ながら私が入手したデータからは判明しませんでした。お疲れさま、そして厳しい苦言の両方の振り返りがおこなわれるでしょう。前回南アフリカ大会で、私がもっとも印象に残っているのは、帰国後の選手、監督とスタッフによる記者会見でした。ベスト16で敗退したにも関わらず和やかで笑いに満ちあふれた記者会見。今回は帰国後の合同での記者会見はありませんでした。この悔しさを、自分で次の大会にぶつけたり、後進に伝えたりして、次の大会につなげて欲しいと思います。
最後に、ボールの動きや、クロスの上がり方、ペナルティエリア内へのボールの入り方をデータとして分析した「まっとうな」記事はこちらをご参照ください。
(了)