番外編!ほんとうの調達・購買・資材理論「為替のゆくえ」(坂口孝則)
さっそくですがビッグマックインデックスを紹介します。これはマクドナルドのビッグマックを使って、「あるべき為替水準」を試算しようとするものです。海外調達などで、為替を予想する際にも使えます。
たとえば、現在の為替が1ドル=100円だったとします。そのときに、1ドル=120円になるのでしたら逡巡する海外調達も、1ドル=80円になると見込みが立てば海外調達を進めるかもしれません。もちろん、絶対的に為替を当てられるひとなどいません(いたら大金持ちになっているはずです)。もしあったとしても、誰にもその手法を語りはしないでしょう。
ただし、理屈で求めることができる。これがビッグマックの思想です。難しくは購買力平価といいます。これは、各国の消費者が同一のものにお金を出せる価格が、そのまま各国間の競争力比較に使えるというものです。似たものにスターバックスラテ指数などがあり、そのなかで有名なのがビッグマックインデックスです。具体的には、その各国間の価格絶対値を割り算します。
たとえばこのような計算をしてみましょう。ビッグマックがアメリカで1ドルで売られていたとします。日本で100円だとすれば、100÷1=100です。だから、この場合は、1ドル=100円がふさわしい為替レートであるわけです。少なくとも、購買力平価から見ると(もちろんビッグマックだけではありますが)、妥当な為替レートというわけです。
では、実際の価格を見てみましょう。Excelファイルを用意しました。どうも、会社のセキュリティの関係でダウンロードできない方もいらっしゃいます。その場合は、個人パソコンなどからダウンロードお願いします。
http://www.future-procurement.com/BigMac.xlsx
<クリックすると拡大しますが、それよりExcelをダウンロードなさってください>
ここで、大きく三つのブロックにわけています。
「基礎データ」:中国とヨーロッパとアメリカと日本、それぞれのビッグマックの価格です(消費者物価)。本来は同一国のなかでも価格は微妙に異なります。が、ここでは代表価格と思ってください。それを2000年から2014年までまとめました。
「試算」:これはビッグマックインデックスを計算したものです。各国通貨で円価格を割りました。
「実際」:これはその時期の為替レートです。ここでは三菱東京UFJが出しているTTMレートを使いました。TTMとは為替売買の中間値ですが、ここでは覚える必要はありません。
<クリックすると拡大しますが、それよりExcelをダウンロードなさってください>
そこで見てみましょう。
実際のドル為替レートは2006年ころから上昇をはじめ、それと同時にビッグマックインデックスも横ばいに転じています。為替レートはリーマンショックなどを機に下落(円高)になりますが、安倍政権発足の少し前から上昇(円安)に転じています。
しかし、安倍政権以降、為替レートは上昇(円安)しているのに、ビッグマックインデックスは下落傾向にあり、相反しています。これをどう解釈するか。何人かの経済学者は、ビッグマックインデックスが正しいといいます。これまでアメリカはインフレを続けていますから、それと日本の物価水準が同じなはずがない。よって1ドル=70円くらいまで補正されるのがふさわしい、と。
実際に、1ドル=80円くらいまで行きましたが、アベノミクス(あるいは黒田バズーカ)が円安に誘導していきました。実は私もふたたび円高に行くのではないか、と予想するものです。かなり長期的には円安になるでしょうけれど、短中期的には円高に揺れ戻すはずです。では結果はどうか、継続的にウォッチしていきましょう。
ビッグマックインデックスを知るだけで面白い経済予想ができることをお話しました。
<了>