バイヤー現場論(牧野直哉)

6.出張先で休日を過ごすとき

出張先で休日を過ごす場合、どのように過ごすべきでしょうか。ふだんと変わらず、翌週に備えて英気を養ったり、めったに来ない場所だからと観光を楽む場合もあるでしょう。出張先では、休日であっても会社の費用を使っている点です。日常と異なる「出張中」のベストな休日のすごし方を考えます。

①週末を出張先で過ごさないスケジュールを設定する

バイヤーが出張する目的は、サプライヤの監査や取引条件の交渉、トラブルの処理と多岐にわたります。調達・購買部門は、サプライヤからすれば顧客です。スケジュールの決定権はバイヤーにあります。まずは効率性の観点から、週末に出張先で過ごさないスケジュールを設定しましょう。一般的な企業の旅費規則では、宿泊費だけではなく日当といった費用も発生します。そういった休日滞在によって発生する費用を抑制するためにも、スケジュールを立てて予定通り消化し、週末には帰国するといった日程を設定します。サプライヤとのコミュニケーションの精度を上げれば、効率的な事前のスケジュール設定と、予定通りの消化は実現可能です

②出張によって遅れている作業を撲滅する

出張中でオフィスを不在にしているのは関係なく、業務は進行しています。もし、出張によって止まる業務があったら、出張が難しくなります。したがって事前の準備として、出張中であっても日常業務を止めない仕組みや体制の構築が必要です。ノートパソコンとメールが参照できるスマートフォンがあれば、移動中の小間切れ時間を活用して業務処理が可能です。メールで解決できる内容は、オフィスで働いている日と同じく、スピード感を意識した処理を進めます。

先週、こんな記事が話題になりました。

「つながらない権利」社内メール、休日自粛の動き」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160906-00010000-yomonline-life

出張先では、慣れない食生活や環境によって、疲労度も一般的には増加します。したがって、出張先で休日を過ごす場合、疲労回復がもっとも重要な目的です。出張先で日常と同じくメールを参照する場合、内容の優先順位がキーです。ほんの数分メールを読んで返信する、あるいは電話して、日本側での業務を進めれば、出張中に対応しなかったために、問題が大きく深刻になって、帰国後に対応するよりも効率的です。何もかもすべてオフィスと同じにする必要はありません。

優先順位の見極めは、出張先だけで必要な能力ではありません。ふだんのオフィスの対応が重要です。出張がなくても多忙なはずです。そんな中で、容赦なくやってくる仕事の優先順位を判断し、自分がやる仕事、他人に依頼する仕事を分類して、具体的な対処に要する時間を判断し、今すべきか、後でおこなうかを決定します。こういった日常的な取り組みの真価を発揮する瞬間が、出張先でより重い意味を持つのです。

③出張に関連する業務を持ち帰らない

出張先で見たこと、聞いたことは、帰国後に出張報告書にまとめていませんか。一週間のスケジュールの出張の場合、月曜日の実施内容を、金曜日に詳細に記憶しているでしょうか。翌週の帰国後には、不在のためにできなかった仕事があるでしょう。そんな中、つい出張報告書の作成が遅れ、細かい内容が網羅されない事態は避けなければなりません。

パソコンを持参する場合、毎日「日報」の形で出張報告を、直属の上司や同僚にメールで送信します。メールでは文章だけではなく、画像や動画も送信できますし、サプライヤから入手した資料も、デジタルカメラで撮影して送信できます。ノートパソコンを持参して出張する場合、海外出張報告を帰国後に作成する理由がありません。可能であれば、打ち合わせの最中もノートパソコンを明け、メモはパソコンに入力。一日が終了したら、記憶が鮮明なうちに文章にして関係者に送付します。日報の内容に関する質問やアドバイスがあれば返信もあるでしょうし、そういったスピード感をもったコミュニケーションが出張の意議を高めます。

企業によっては、出張報告書の体裁が決まっている場合もあるでしょう。しかし、帰国後に改めて作成するとしても、それは日々の業務の積み重ねであるはずです。こういった取り組みは、ふだんのオフィスで「小間切れ時間」をどのように使っているかが表れます。仕事が一段落して、打ち合わせまで5分あるときに、受信メールを確認して、一通でも返信しておくか。それとも、別な時間にまとめて処理するか。出張中は、業務の目的が限定されているので、短い待ち時間が多くなります。そういった時間を活用し慣れておけば、出張先でもさほど時間をかけずに、報告書の作成が可能なのです。

日本企業の海外進出は、円安局面にあっても減速せずに拡大の一途(いっと)をたどりました。企業の海外進出は、サプライチェーンの広がりを意味します。調達・購買部門にとっては、管理すべきサプライヤが、より広く海外に広がります。国内の場合、サプライヤを訪問頻度によって評価する考え方が、いまだ根強く残っています。筆者が「どんなサプライヤが魅力的か」を社内でヒアリングすると、「ちょくちょく打ち合わせができる」といった条件が多く見られるのです。

しかし「ちょくちょく打ちあわせできる」サプライヤは、日本国内の近隣地域に限られます。海外サプライヤには期待できませんし、海外のサプライヤは多頻度の訪問を重視していません。以前、筆者の同僚が「年二回しか来訪しない」とサプライヤにコメントしていました。しかし、サプライヤの立場からは「年に二回も訪問しているのに」と回答されました。この「しか」と「も」の違いはとても大きな隔たりです。しかし、海外のサプライヤとのビジネスでは「二回も」と考えるべきです。そうなった場合、一回の出張の意味が非常に大きくなります。あれもこれも、何もかもやって来る意気込みと、実行が伴わなければなりません。機会の限られた出張の効果の最大化が今、調達・購買部門に求められているのです。

最後に、興味深いレポートを御紹介します。

オフショアリング、関係特殊性及び国内ネットワークの分析
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/15e122.html

リンク先のページには、サマリーが日本語で掲載されています。レポートのポイントは次の3点です。

1.遠方にある取引先企業は、近隣にある取引企業よりも概ね生産性の高い
2.生産性の高い企業は、より広範な地域のより多くのサプライヤから調達
3.生産性の高い企業ほど海外から調達する傾向がある

なお、論文では海外サプライヤからの調達の拡大が、国内サプライヤからの調達の減少にはつながっておらず、事業拡大で国内サプライヤへの発注額は維持される傾向にあると報告しています。これは、企業の海外進出が、国内の雇用を減少させるのではなく、事業全体の拡大によって国内雇用を増加させる傾向がある、とされた平成24年度の中小企業白書の内容(http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H24/H24/html/k600000.html)と相通じる点があります。今の生活を維持する、あるいはもっとより良い生活をおくるための生活の糧を得る方法としては調達・購買部門で働き続けるためには、今後海外を含めた出張は増加傾向にならざるをえません。一方、たかが出張とは言えないほどに、出張による環境変化で大きなダメージを受けた同僚を見てきました。どうせなら、楽しく、面白おかしく出張できたら良いですよね。

 <つづく>

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