自分を知りたい(牧野直哉)

40歳代半ばを過ぎ、昔は問題なくできていた徹夜が、もう無理になったとか、若いときと比較した「衰え」を意識する機会が多くなりました。仕事でも家庭でも、まだまだやりたいことはたくさんあるし、私はできる限り働き続けたいと思ってます。現在の仕事を続けられれば幸せだし、今の仕事でなくとも、なにか社会へ貢献できる役割を持ち続けたいと思ってます。こういった考えを実行するには、何よりも心身両方の健康が大事ですよね。

体は人間ドックや健康診断で定期的なチェックが可能です。問題は「心」。何もしたくないときもありますし、やらなければいけないことを目の前にしてもやる気が起きない瞬間もあります。これまで、自分のどんな行動が、行動後や行動の翌日の自分に影響を与えるのかをいろいろ探ってきました。誰にも同じく与えられた1日24時間を、どうしたらより高いパフォーマンスを発揮できるのかがテーマです。

例えば、朝食。1日の活動の源になるとか、朝食を食べていない児童は、授業中の集中力が散漫にある傾向があるとか、比較的朝食の摂取は重要とされています。私は今、果実や果汁を使っていない野菜ジュースに、いくつかブレンドしたオリジナルドリンクを飲んでいます。昼食はスープを勤務先へ持参しています。これが今のところもっとも集中力が発揮できるメニューです。そして昼休みに2.5キロのウォーキングです。これで、午前も午後も集中力を保って仕事ができます。

こんな取り組みをおこなっていますが、これまで根拠(エビデンス)がありませんでした。経験則で、よかったと思える行動を繰り返します。しかし、なにか体の情報を測定して、自分の行動に生かせないかと考えていました。そして先日、リスト型の活動量計を購入しました。購入のきっかけは、日立製作所中央研究所の矢野和男さんが書かれた「データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 」です。ウェアラブル端末が測定したデータを解析して「パピネス」と呼ばれる人間の幸せセンサーで測定可能であると書かれています。それだけではなく、さまざまデータから「人間行動の方程式」を最適経験から導く画期的な取り組みを世に知らしめた本です。

私も「ハピネス」を測定したかったのですが、本に登場する温度データを測定するガジェットはまだ発売されていません。なにか似たようなデータが測定できるガジェットはないかなと探して、最終的にこの商品を買いました。

EPSON PULSENSE 脈拍計測機能付活動量計バンド PS-100BL
http://www.epson.jp/products/pulsense/ps100/

活動量計といっても、歩数はスマートフォンでトレース可能です。加えてどんなデータの測定が必要でしょうか。健康管理の面では、血圧を測定できるといいなと思いました。しかし腕時計や血圧を常時監視できる機種はまだありません。多くの製品で採用されているのは脈拍測定です。そしてこの機種には「こころバランス」と名付けられた機能をもっています。運動量と脈拍数をクロスチェックして、運動量が少ない(加速度センサーで、体の動きを測定)にも関わらず、脈拍数が高い場合を「エキサイト」、低い場合を「リラックス」として表示してくれます。この2つの状態は、スマートフォンの位置情報機能と連動して、どの場所でエキサイト/リラックスだったかが分かる仕組みです。

購入して約2ヶ月が経過しました。淡々と生活する1週間も、脈拍で示される体調は実に変化に富んでいると分かりました。ふだんオフィスに出勤するだけでも、リラックスして出勤している日と、なぜかエキサイトしている日もありました。驚かされた結果は、なぜかリラックスできているはずの休日、それも自宅で過ごしているときにエキサイトしている時間が長いのです。もしかして殺伐とした家庭環境なのか?なんて思いました。しかし、家庭で過ごすときは、体の動き=加速度センサーがほとんど反応しません。より、心の移ろいが大きく表れる可能性が高いと判断しています。

ここまで脈拍の記録(ログ)を参照した結果、私は次の2つの学びがありました。

1.朝のすごし方
朝をどのように過ごすか。「一年の計は元旦にあり」ではなく、1日の計は朝にありだと思います。例えば、朝起きて数分でも深呼吸する時間があれば、1日のリラックス度合いに大きな影響があります。逆に、寝坊した場合は、もう朝からストレスフルな状態で、まさに悶悶と1日を過ごさなければなりません。また通勤ラッシュで感じる「不快さ」は、1日を非効率にする要因だと実感しました。通勤時間をどのように快適に、少なくとも不快に感じないすごし方を身に付けるのは、1日を楽しく過ごす上で大きな影響力があるのです。

でも、今の日本の働き方を考えると、やっぱり会社に行かなければ仕事はできませんね。企業や職場によっては、朝早くに出勤しても、雰囲気や上司の目によって自由に退勤時間を決められない場合もあるでしょう。自宅勤務やフレックスタイムの有効活用といった制度の改善も期待したいところです。そういった制度の改善がなくても、ゆったりとした気持ちで、笑顔で出勤するにはどうすれば良いかは、ビジネスパーソンの共通した課題だと強く感じています。

2.リカバリー方法
快適に過ごす行動をすべてルーティンにしても、ささいな想定外の出来事は起こります。恥ずかしながら私の場合、次のようなエキサイトしている場面がありました。

・マンションのエレベータがなかなか来なかった
・ゴミ捨て場に持って行く途中でゴミ袋が破れた
・踏切がなかなか開かなかった
・電車が遅れた
・車で移動中に渋滞にはまった
・朝、家族とけんかした

こうやって書き出してみても、本当にささいな出来事です。1つひとつは僅かな問題でも、重なったりすると、よりストレスが増します。こういった場面に遭遇したときに、悪影響をなるべく残さない取り組みが必要です。これまでのリカバリー方法で効果的と感じているのは次の3つの方法です。

(1)目を閉じて深呼吸
1分でも効果があります。吸うよりも吐くときを意識しておこなうと効果的だなと感じています。目を閉じて深呼吸をおこなうと、いろいろ頭をよぎるでしょう。私は「空気を吸ってる、吸ってる、吸ってる、吸ってる…」「空気を吐いてる、吐いてる、吐いてる、吐いてる…」と繰り返して、仕事に集中する前に、呼吸に集中するようにしています。

(2)休憩
私のオフィスには、屋上があります。そこで5分程度空を見あげてノビをします。イメージは、自分の体に溜まってしまった鬱積を、呼吸で吐きだすイメージです。何か「リセット」できるルーティンを見つけます。

(3)ツールの活用
なにか精神的なバランスを崩しているなと思ったら、iPhoneアプリの「Mindwave」で「Simple Relax 単純なリラックス」の音(周波数)を聞きます。胸のポケットにiPhoneを入れて、小さめの音で流しても効果があると感じています。

活動量計に代表されるフェアラブル端末は今、エクササイズ時の体調測定がメインの機能になっています。これは、体の状態がふだんと大きく異なるので、測定しやすい面もあるでしょう。運動が好きな人は、もちろん活用して、体調に合わせたトレーニングメニューの選定に活用すべきです。しかし、センサーの進化やコストダウンによって、体調や気分の可視化は、近い将来必ず実現されるでしょう。人間はモノではありませんが、自分の気分が分かりやすくなれば、日々の生活がもっと楽しくなると思いませんか?

<了>

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