新シリーズ!中堅社員が走りながらやるべき10のポイント(牧野直哉)

「未来調達研究所」のホームページでダウンロード販売している電子書籍「新人バイヤーが最初にやるべき10のポイント 」の続編として、今回から中堅社員版となる「中堅社員が走りながらやるべき10のポイント」をお伝えします。

●前提条件

このシリーズは、次の通り設定した人物イメージに必要となる10のポイントを述べています。

1.20代後半~30代のビジネスパーソン
2.現在の勤務先に6年以上継続して勤務
3.生き残りたいと願っている
4.ステップアップしたいと切望している

上記の1,2は、企業内で継続した勤務の経験を指します。自社の業務フローは理解しているとの前提です。続いて3,4は、なんらかの危機感を持っているかどうか。今回は、危機感を持っている方を対象にしました。危機感がなければ、改善や成長を志向して行動する必要がありません。危機感は、明確に意識するか、何か漠然としたものかの差は当然あるはずです。なんとなく漫然とした不安感をもっているのであれば、今回分だけでもお読みいただければと思います。

また題名にあえて入れた「走りながら」とは、新入社員ほどには、周囲から面倒を見てもらえず、自分の仕事は増える一方の中で、加えて後輩社員の面倒を見る立場になっている状態を表しています。そして、変化の激しい時代は、立ち止まることは、変化への対応を放棄したに等しく、避けなければなりません。実際に走るわけではありませんが、気持ちはまさに「走りながら」なのです。

●第一回「市場を意識して、対処する」

調達購買部門に勤務されるバイヤーの皆さんは、3つの市場を意識しなければなりません。これは、どんな企業でも同様に存在する市場です。下記の①~③で説明します。①のほうが意識しやすくて、③はなかなか意識しづらい市場です。

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① サプライヤーとの間に存在する「市場」
これは、日常的に意識し、実際に様々な取り組みによって、購買活動を行っている市場です。日常的な仕事を通じて、もっとも接点を持っています。

この市場の特徴は、購入する対象に依存します。広く世間に「市場価格」として情報が流通しているモノを扱う「市場」もあれば、サプライヤーとの間にだけ形成される「市場」もあります。調達購買部門のバイヤーとして、より有利な購買環境の実現を目指すのであれば、現在、どのような状態なのかを掌握しなければなりません。

② 顧客との間に存在する「市場」
この市場は、調達購買部門からは少し遠くなります。基本的な市場としての特性は、①と同じです。営業が接している市場に、直接バイヤーとして何らかのアクションを起こす機会は無いでしょう。しかし、この市場の動きは、確実に調達購買部門に影響します。営業部門を通じて、また独自の視点でも理解をします。

③ 自分の労働力としての価値を持っている「市場」
3つめの市場は、労働力として、自分の身を置いている「市場」です。自分自身の価値が決まる「市場」です。これは、①、②とは少し毛色が異なります。その価値は、自分の能力によって測られます。これは、現在の勤務先からの給与の金額ではありません。労働市場に出たときに、自分の労働する能力に対して付けられる値段です。

日本の場合、卒業した大学名によって、歴然と就職できる会社とできない会社が区別されます。大企業と中小企業では、同業種であっても給与に大きな差が生じています。このような傾向も減少しつつありますが、本人の能力に関わらず、入社した会社によって給与レベルは大きく異なるのです。したがって、今の勤務先からの給与ではなく、市場での価値を意識しなければならないのです。

続いて、市場への「対処」とは、変化への対応です。好むと好まざるとに関係なく、市場とは変化します。以下の図では、その変化をイメージしています。

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左側は、丸いグレーの市場に対し、より濃いグレーで、かつ同じように丸く存在していた自社あるいは自分です。対して、右側はなんらかの要因で市場が四角に変化しました。かつ色も白へと変わりました。果たして、そのような変化の中で濃いグレーで、丸いままで存在し続けられるのかどうか。市場の変化だけでなく、市場に存在する他の企業なり、労働者からの影響も受けます。そのような複数の変化を生む要因の中にあって、自社あるいは自分がどのように対処すべきなのかを決め、変わるのか変わらなくて良いのかを判断しなければなりません。

そして、もう一歩話を進めます。市場が変化した後に、どのように対応するのかも重要です。しかし、どのように変化するのかをあらかじめ予測して、準備しておけば、より積極的な変化への対処となります。これは、市場における企業同士、また労働市場において我々労働者が競争しているとの事実を踏まえれば、競争を優位に進めるために、必要となる対処です。

20歳代後半から30歳代とは、もっとも充実した仕事ができる、人生を季節に準えれば春から夏です。若さだけではなく、ノウハウも持ち、気力と体力も充実しているそんな貴重な時間です。この先、どのような人生が待っているか。素晴らしくするのも、少し残念になってしまうのも、この時期の働き方如何で決まります。40歳代になって、重要な仕事は責任のともなった意志決定です。40歳代に正しい、少なくとも間違いではない意志決定を、しっかりした根拠を持っておこなうためにも、今は準備段階です。3つの市場がどのような状態にあって、今後どんな風に動いていくのかについて、自分の判断基準を持っているのは大きな武器になります。

そのためには、「ほんとうの調達・購買・資材理論」でもお伝えした「情報力」のスキルを持たなければなりません。(有料会員の方は、バックナンバー55号をご参照ください)「情報力」では、情報とは収集するだけでなく、関係者と共有し、分析し、活用するまでを1つのサイクルとして扱うことの重要性をお伝えしました。

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これまでも「情報」は意識して収集し、日常業務に役立てられていたことでしょう。そのような取り組みは継続的に行ってください。そして、すこし違った視点で、情報の「質」を意識した取り組みを次回、お伝えします。

<つづく>

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