サプライヤー分析 8(牧野直哉)

☆情報サイクルの「回転速度」と活用の方向性


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情報分析全般について、必要な情報サイクルの「回転速度」と活用の方向性に関する3回目です。初回は、極めて短時間で情報に関する一連のサイクルを回すケース、2回目は日常業務である1日、1週間、1か月の間に回すサイクルを御紹介しました。前回に引き続き全体像は次の図を御参照ください。今回は、前回よりも更に長い「四半期、1年間(年次)、5年」です。

まず、「四半期、1年間(年次)、5年」でサイクルを回す場合、1つ短いサイクルの「1日、1週間、1か月」で収集と分析をおこなった情報によって「四半期、1年間(年次)、5年」に必要な分析をおこなって意志決定に役立てます。「1日、1週間、1か月」のアウトプットが「四半期、1年間(年次)、5年」のインプットになります。それでは、「1日、1週間、1か月」では、どのような情報がアウトプットされるかを復習します。

「1日、1週間、1か月」では、自社の発注によって日々サプライヤーから購入をおこないます。その購入が円滑に行われているかどうか。日々の購入が、自社の事業活動に貢献しているのか、それとも何らかの阻害要因があるのかどうかによって「1日、1週間、1か月」において改善活動もおこなっているでしょう。そういった日々の業務の結果を「1日、1週間、1か月」のスパンで積みあげて、より長期的な視点で「今後どうしていくのか」を決定します。そして「四半期、1年間(年次)、5年」では、もう一つ、重要なファクターが存在します。

続いて、年間計画や、戦略がもう一つのインプットとアウトプットです。例えば、日々の業務の結果から、当該年度に立案された計画の達成見通しを四半期のサイクルで見極めます。もし達成が難しい場合は、新たな計画を立案したり、これまでの計画の見直ししたりします。また今の時期では、4月からの新年度計画を立案しているでしょう。その場合は、調達・購買部門における今年度の業績や、関連部門の来年度の計画、特に営業部門の販売計画や、人員計画といった内容をふまえて、来年度の計画を立案しなければなりません。

「四半期、1年間(年次)、5年」の情報サイクル回転では、より短い時間でおこなわれる実務の実態をどのように利用・反映させるかがポイントです。余りにも現実に引きずられてしまうと、大きな成長や改善が見込めない計画や戦略が立案されてしまいます。逆に、実態を無視した壮大な計画や戦略によって、実態とのギャップが大きすぎすると、企業の将来を占う計画や戦略が正に絵に描いた餅になってしまいます。この2つのバランスは非常に重要です。それでは、どのようにバランスさせるべきでしょうか。


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この図は、企業における戦略を階層に分割し、それぞれの戦略間では「コミュニケーション/横通し」の必要性を伝えるイメージです。情報サイクルの「1日、1週間、1か月」と「四半期、1年間(年次)、5年」の間にも、それぞれがインプットとアウトプットになる関係、コミュニケーションが必要です。例えば、年間計画を考えてみます。

調達・購買部門における年間計画は、多くの企業の場合、コスト削減の額や率、納期順守率や良品率、クレームの発生件数といった数値で目標が設定されます。そういった数値を、四半期で実行するためにはどうすれば良いのか、そして当該年度の進行によって、到達度をどのように判定すればいいのかを判断するために、年間の数値目標を四半期に分割して考えます。分割して考える場合、単純に「割る4」するのではなく、各四半期における傾向をふまえて割り付けます。例えば、4月始まりの会計年度の場合、9月末と3月末が含まれる第二、第四四半期に売上げが多くなる傾向があります。こういった傾向は、これまでの実績や業界の傾向をふまえて作成します。

また、調達・購買部門に複数のバイヤーがいる場合は、バイヤーごとの割り付けも必要です。バイヤーごとの達成度を判断するためにも、更に四半期ごとに分割して、バイヤーが自分でおこなう業績管理と、調達・購買部門全体でおこなう業績管理をリンクさせます。この「リンクさせる」のが、情報の「コミュニケーション」になります。

企業において対比される2つの傾向として、トップダウンかボトムアップかといった議論があります。あの会社はどっちだとか、うちはどっちだといった具合に言われる内容です。大きな傾向としてトップダウンかボトムアップのどちらなのかはあると思います。しかし、事業運営のすべてにおいて、トップダウンかボトムアップだと言い切るのは不可能です。なぜなら、トップダウンで落とした目標が、余りにも実態とかけ離れた内容であれば、できない見通しとその理由をボトムアップしなければなりません。このボトムアップ=コミュニケーションがない状態が、従業員へ無限責任を負わせるブラック企業の実態です。

2005年のサラリーマン川柳で、こんな詩が読まれました。「成果主義 全員成果 社は赤字」。1990年代の中盤に各企業で導入が進んだ成果主義。当時の調査では、対象企業の6割で「成果」による業績評価を導入していました。しかし成果主義を進めた結果、達成しやすい、そこそこの目標設定で超過達成を目指す従業員が増える弊害が生まれました。一方的なボトムアップには問題がある証です。戦略や情報サイクルに必要なコミュニケーションの実践は、従業員と管理者、社内関連部門同士の人と人のコミュニケーションによって実現します。

次回は、具体的なコミュニケーションに必要な各サイクルのアウトプットについて述べます。

 <つづく>

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